少年の主張後志地区大会 10年後の私へ 喜茂別中3年・堀さん
(道・道教委 2019-09-06付)

 【小樽発】後志総合振興局は7月下旬、倶知安町公民館で少年の主張後志地区大会を開いた。最優秀賞には、「10年後の私へ」を発表した喜茂別町立喜茂別中学校3年生の堀来羽さんが輝いた。

 自分が将来何をしたいのか分からなかった堀さんは、修学旅行で東京と神奈川県の鎌倉を訪問。訪れた数多くの店や満員電車のすべてが、誰かの“仕事”であることに気付いた。世の中には知らない事柄がたくさんあることから、「自分の可能性や選択肢となる“引き出し”を増やしながら将来を決めたい」と結んだ。

 堀さんの発表内容はつぎのとおり。

 「10年後の私へ。25歳となったあなたは今、どこで何をしているのでしょうか」。

 皆さんは、夢はもつべきだと思いますか。私は、夢はもたなくても良いと思います。

 中学校生活はあっという間で、気が付けば3年生になっていました。私もついに受験生です。先生方も親も、口を開けば受験、受験と言うようになります。しかし、私は進学する高校を決めかねていました。私の行きたい高校は、美術部のある管外の学校。それくらいでした。

 そんな私の将来の夢は?小学生のころは「パティシエになりたい!画家になりたい!」と真っ直ぐに語っていましたが、最近は…分からないのです。影響されやすい性格で、テレビや授業で知った職業に興味をもっていくうちに、自分が将来何をしたいのか分からなくなってしまうからです。

 そんな中、私は修学旅行で東京・鎌倉へ行きました。東京はどこを見ても建物がびっしり並んでいて、そこら中を埋めつくすように人と物があふれていました。

 最終日、2日間泊まったホテルでの退館式での出来事です。ホテルの人のあいさつで、こんな言葉がありました。

 「このホテルに泊まったことをきっかけに、ホテル業界に少しでも興味をもっていただければと思います」。

 これを聞いて「そうか、ホテルも仕事なんだ」と思いました。ホテル業界。田舎育ちの私にはなじみのない、考えたこともなかった仕事でした。けれど、この仕事がないと、私たち旅行者はたいへん困ります。

 それから私は、東京・鎌倉で過ごした3日間を思い出していました。浅草のにぎやかな仲見世や両国国技館で見た大相撲、たくさん巡った食べ物のお店、満員電車。そのすべては、「仕事」なのだと気付きました。

 初めて目にする物は珍しく見え、旅行で訪れるのは一度きりの特別な場所かもしれません。しかし、それらはすべて誰かの仕事です。私は、この狭い東京だけでも目が回るほどたくさんの仕事があるのだから、全国、世界には一体どれほどの仕事があるのだろうと思うと、胸がわくわくしてきました。

 世の中には、私がまだ知らない場所、仕事が山ほどある。世界には、いや日本にも、見たことのない文化がたくさんある。そのことに気付いた途端、私はそれらにふれたい、みてみたいと強く思いました。そうやって、自分の可能性や選択肢となる「引き出し」を増やしながら、将来を決めていきたいと思いました。

 このことから、私は夢はもたなくても良いと考えるようになりました。もちろん夢に向かって努力することは素晴らしいことです。でも、夢は無理やりつくるものではないし、なくて焦る必要もありません。

 なぜなら、まだ私たちは世の中を知らなすぎるからです。知らないものを知らないままにしておいて、少ない引き出しの中から将来を決めてしまうのはもったいないことだと思いませんか。

 だから私は、これからめいっぱい学び、見て聞いて感じて、自分の引き出しを増やすことを大切にしたいと思います。そうすれば、その中から自然と進むべき道は見つかるでしょう。

 「10年後の私へ。私からあなたへ贈り物をします。それは、様々な物や人、場所、感情がつまった引き出しです。15歳の今はまだ数が少ないけれど、きっとあなたのもとに届くころには、もっともっと増えているはずです。ぜひ、存分に活用してください。そしてこれからも増やしていってくださいね。それでは、お元気で」。

(道・道教委 2019-09-06付)

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