北道研教育研究札幌大会開く いじめの本質に向き合う 道徳が担う役割強調 鈴木会長(関係団体 2019-11-15付)
道道徳教育研究会(=北道研、鈴木康裕会長)は8日から2日間、第54回道道徳教育研究大会札幌大会を開いた。初日、札幌市立栄南小学校(荒井亮子校長)、札幌市立あやめ野中学校(鈴木康裕校長)を会場に、開会行事、授業公開、研究協議を展開。日ごろの研究成果を全道に向けて発信した。このうち、中学校部会の開会行事で鈴木会長があいさつ。道徳教育の担う重要な役割として「いじめの本質的な問題に向き合うこと」「正解のない予測困難な時代を生きること」に必要な力を育むことを強調。大会の成果に期待した。
札幌市道徳教育研究会が主管。道教委、札幌市教委などが後援。大会主題を「主体的に学び合う児童・生徒の育成」、副主題を「問いと対話で深める特別の教科道徳」と設定した。
初日は、栄南小とあやめ野中で小・中学校の授業を公開。
2日目は、ホテルライフォート札幌で文部科学省初等中等教育局教育課程課の浅見哲也教科調査官が「今、求められる道徳教育の展開」と題し講演した。
◆心情メーター活用 栄南小4年1組公開授業
栄南小会場には全道から約400人が参加した。
開会行事では、荒島晋大会運営委員長と全国小学校道徳教育研究会の針谷玲子会長があいさつ。大会の成功や北海道の道徳教育発展などを期待した。
小学校研究部では、①子どもが問う状況をつくり出す②対話を組織し、学びを深める③子どもとよりよい生き方のつながりを確かにする―を視点に研究を進めている。
公開した授業のうち、栄南小4年1組の「スーパーモンスターカード」(石丸里沙教諭、児童数32人)では、本時のねらいを「もっと早く止めればよかったと後悔する“ぼく”の姿を通して、正しいと判断したことを進んで行おうとする態度と実践意欲を育てる」と設定した。
冒頭、石丸教諭は「友達や上級生が悪いことをしているのを見たことがあるかな」と尋ねた。
ほとんどの児童が「ある」と回答。そこで「そのとき注意できたか」と質問し、児童は「上級生だと言いづらい」「友達でも注意できなかったことがある」などと回答。過去の経験を尋ねることで教材内容に共感できるよう意識付けた。
万引きをほのめかしている友人に主人公が注意することをちゅうちょしている場面を取り上げ「このとき、主人公はどのくらい注意しなければと思っているか」と質問。
石丸教諭は視点①から、画用紙を活用して作成した「心情メーター」を場面ごとに児童に示すことで主人公の心の弱さを視覚的に表現し共感させた。
また、「冗談で言っているだけかもしれない」「嫌われるかもしれないから言いにくいかも」など、児童の発言を心情メーターの隣に板書した上で、次場面の友人が万引きをしようとしているところに主人公が立ち会う場面について再度主人公の心情を考えさせた。
また、再度心情メーターを活用し、同場面の主人公の心情を可視化させた。
友人の万引きを防いだものの、主人公の表情が曇っている最終場面について、その理由を考えさせた。児童は「(主人公が)もっと早く止めていればよかったと思っている」などと回答。児童たちの後悔の心情について焦点を当て、視点②から「なぜすぐに止められなかったのか」と再び考えさせることで、行動に移すことができない主人公の弱さを児童に根拠を引き出させながら考えさせた。
授業のまとめでは、視点③から授業内容を踏まえた上で、冒頭に尋ねた児童たちの経験について再度質問。「もし友達や上級生が間違った行いをしていたら、今度からどうするか」と問うと、「先生に相談する」「いつも正しい行いをするために注意する」などの声が上がった。
勇気ある行動とは何かを振り返り、今後あるべき姿について考えさせた。
◆心の弱さと向き合う あやめ野中3年1組公開授業
あやめ野中を会場とした中学校部会には約200人が参加した。
1~3年生の7授業を公開。中学校部会では、①問いに向き合う②対話を生かす―の2点を視点に据え、研究を進めている。
公開授業のうち同校では、3年1組(生徒数29人)の近野秀樹教諭が「足袋の季節」を指導した。
本時のねらいを「釣銭を多く取ったことを悔やみ、苦しみ続けた筆者を通して、人間であれば誰もがもち得る心の弱さと向き合い、それを克服し、よりよく生きようとする道徳的実践意欲と態度を育む」と設定した。
近野教諭は大正時代の実話の教材を、生徒に身近に感じてもらえるよう工夫し、当時の庶民の暮らしや草履を写真で紹介した。また、生徒たちが貨幣価値を実感しやすいよう、当時の50銭を現在の5000円に置き換えて考えさせた。
視点①から、体験的な学習として、2人1組でおばあさん役と筆者役に分かれ釣りを受け取る場面を再現。演じることで、多く釣りを受け取ったときの筆者の気持ちについて、生徒たちに深く向き合わせた。
また、おばあさんが亡くなったことを知らされたときの筆者の気持ちを問いかけた。
視点②から、生徒全員に等しく意見を発表させるため、全生徒に小型のホワイトボードに意見を記入させた。教室前方に学級全員のホワイトボードを掲示することで、「書く」「話す」ことが苦手な生徒の交流の手助けとし、学び合いを深め本時のねらいに迫る対話を行った。
ホワイトボードの特徴を活用し、共感する意見には緑、詳しく説明を聞きたい意見には青の磁石を置かせた。
意見交流では、「おばあさんに謝りたかった」「あのとき、だましたりしなければこんなことにならなかったのに」といった罪悪感や後悔の念が多く発表された。
(関係団体 2019-11-15付)
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