全国学力調査報告書に対し声明 点数競争が差別・選別に 教育条件整備・拡充を 北教組(関係団体 2019-11-14付)
北教組(信岡聡中央執行委員長)は、2019年度道教委『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』に対する声明を発表した。“学力向上”による点数競争が児童生徒の差別・選別、教職員の超勤・多忙化へとつながっていると批判。子どもの多様性を生かした少人数学級の実現、教職員の超勤・多忙化解消など、教育条件の整備・拡充の推進を求めた。声明の概要はつぎのとおり。
道教委は11月6日、2019年度『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』(以下、報告書)を公表した。
今回の報告では、178市町村(昨年比3町村増)が結果公表に同意し、平均正答率の実数公表も24市町と昨年より増加した。こうした状況は、道教委が各市町村教委に対して執拗に公表を求め続けてきた結果であり、子どもはもとより学校間・地域間を競争・序列化させる姿勢は断じて容認できない。
道教委は、「習熟度別指導などによって、正答数の少ない子どもの割合が減少するなど改善の傾向がみられる一方、すべての教科で全国平均に届いていない」とし、「結果は学力の特定の一部」としているにもかかわらず、報告書では点数に特化して全国との比較に終始した。
また、「考えたり話し合ったりする知識を活用する授業の改善が十分とはいえない」「授業以外で勉強する時間が全国と比べ短い」など、一方的に課題を挙げ、「“主体的・対話的で深い学び”の実現に向けた授業改善や、家庭や地域と連携した望ましい学習習慣・生活習慣の定着に向けた取組を一層充実させる必要がある」と、子どもや学校・家庭の実態を顧みずにさらなる努力を求めている。
全道の状況についても、本年度の調査は「知識と活用を一体的に問う」としてA・B問題の構成を見直して実施したが、依然として「平均正答率の推移」「各教科領域の平均正答率」「正答数の状況」について全国との数値比較にとどまっており、何ら変わっていない。
また、質問紙調査と教科結果をクロス分析し、「学校のきまり“規則”を守っているか」「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいたと思うか」などの項目で、肯定的な回答をしている児童生徒や学校の方が教科の平均正答率が高いとして、恣意的に学習・生活習慣や規範意識を強要している。
さらに、管内および各市町村の状況についても、14管内の平均正答率の順位分布や各市町村の結果分析など、例年と全く違わず全国平均との差異を意識させつつ列挙されている。
また、本年度報告書では、冒頭に「学力向上の取組に関する改善の方向性」として、①授業改善②検証改善サイクルの確立③小学校と中学校が連携した取組の充実④望ましい学習習慣の確立―の4点を掲げ、詳細にわたって点数向上に特化した改善の方向性を示している。これらは、本来学校にある教育課程の編成権に不当介入し、子ども一人ひとりや各学校の実態をないがしろにした画一的な点数学力向上策に一層拍車がかかるものである。
子どもたちは、いじめ、不登校、自殺が過去最多になるなど苦しみを表出させている。この苦しみの一端は、豊かな学びが保障されるべき学校において、“学力向上”の名のもとに常に点数競争にあおられ、差別・選別されるとともに、多様性や自分らしさが認められないことにある。
教職員もまた、超勤・多忙化に歯止めがかからず、子どもに寄り添う時間が生み出せずにいるとともに、管理強化・点数主義によって自主的・創造的な授業づくりが阻害され、子どもたちに学ぶ楽しさを伝えられず苦悩を重ねている。
今、道教委がすべきことは、地域や子どもの実態に即し、豊かな教育を保障するため、押し付けの学力向上策を直ちに止め、「子どもの多様性を生かした“学び合い”を可能とする少人数学級を実現すること」「教育課程の弾力化や学校の裁量権を保障すること」「教職員定数を改善し教職員がゆとりをもって子どもと接することができるようにすること」など、教職員の超勤・多忙化解消と教育条件の整備・拡充を進めることである。
以上のことから、北教組は、学力調査・結果公表に断固反対し、子どもたちの学びを矮小化する点数学力偏重の教育施策の撤回を強く求める。
私たちは今後も、憲法、47教育基本法、子どもの権利条約の理念に基づくゆたかな教育実現のため、一人ひとりの子どもに寄り添う教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへ取り戻すための広範な道民運動を進めていくことを表明する。
(関係団体 2019-11-14付)
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