【Pick UP2019】すべての子が守られる環境へ LGBT 教育現場の取組(道・道教委 2019-12-17付)
◆多くは深刻な悩み
LGBT―。Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字を組み合わせた言葉で、性的少数者を表す。
札幌市の電話相談事業「LGBTホットライン」担当者によると、悩みの多くは性的指向や性別違和感に関するもの。
相談で最も多いのが「同性が好きな自分が不安」との悩みで、カミングアウトに関するものがそれに続く。「家族に迷惑をかけるのではないか」「周囲に理解してもらえるか不安」など、深刻さを増している。
LGBTの一人に話を聞くと、「人々の中にはLGBTへの嫌悪による差別がある。家族や友人へのカミングアウトの困難さ、自己肯定感が低下する現状がある」と指摘する。LGBTであることを理由に、自殺を考える人さえいるという。
◆性の多様性身近に
平成27年、文部科学省は、通知「性同一性障害にかかる児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を発出。適切な対応を求めた。本道においては、道教委や札幌市教委が令和2年度高校入学者選抜から、LGBTの受験生に配慮し、入学願書の性別記入欄を廃止することとした。
「学校でも、性の多様性の問題は身近になってきた」という声が聞かれる。あるスクールカウンセラーは、学童期から性別違和感をもつ子どもの存在を指摘。小学生からは「一生、自分の気持ちを隠そう」「自分がどんな存在なのか分からない」、中学生からは「男らしくするよう先生に言われた」「声変わりが嫌で人前で話さなくなった」などの悩みが寄せられていることを挙げ、「いろいろな性があることを“そのままでいいんだよ”というメッセージを教師が発信することが大事」と訴える。
高校受験時、制服がセーラー服であることを理由に、私服の高校へと進路変更したというLGBTの生徒は「制服だけで進路が狭まってしまうのは悲しい」と語る。
性別違和感をもつ子どもに配慮し、北海道トンボ㈱は、平成29年度からフリースラックスの製造を開始。従来のものに比べ、ウエストからヒップにかけての曲線が気にならないローライズ仕様の製品だ。フリースラックスに関する同社への問い合わせは、昨年夏ごろから増加。中学校の制服に関する問い合わせが多いという。
◆教員の意識改革を
石狩管内には、本年度初めて校内研修でLGBTを取り上げた道立高校がある。研修を受けた参加者は「“男らしくない”“女とはこういうものだ”などの教員のふとした言葉が生徒を傷付けてしまう」と教員の意識改革の必要性を再認識した。
学級活動で「性の多様性」を題材に取り上げた中学校では、事前生徒アンケートで、「LGBT」「性自認」「性的マイノリティ」などの言葉の認知度を調査。中学3年生のクラスでは、約6~7割がLGBTという言葉を認識していた。
活動後、「今まで知る機会がなかったのでいい機会となった」などの感想が聞かれ、担当教諭は「子どもたちは、(LGBTに対し)柔軟に対応している」と実感した。
あるLGBTの一人は、「LGBTの問題は外見だけでは分からず、本人からカミングアウトされなければ周囲は分からない」と語り、「(カミングアウトを受けていないからといって)“わが校にLGBTはいない”ということはあり得ない」と強調。LGBTの児童生徒がいることを想定すべきと訴える。そうすることで、カミングアウトを受けた際の学校側の対応も円滑になると話す。
「LGBTであることを言ってもいいし、言わなくても守ってもらえる環境づくりが、LGBTの子どもたちが安心して学校に通うために必要」。
この声にどう応えていくか。教育現場の取組は緒に就いたばかりだ。
(道・道教委 2019-12-17付)
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