1年単位変形労働時間制導入条例整備 超勤解消策こそ優先を 道高教組・道教組が抗議声明(関係団体 2020-11-20付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は16日、1年単位の変形労働時間制を可能とする給特法条例改正案の道議会への提案に抗議する声明を発表した。制度について「1日8時間労働という大原則を壊す」とするとともに、条例提案に至る手続きについても「現場の声を無視」と批判。道教委に対し、条例整備ではなく、「教育職員の長時間で過重な勤務を解消する対策を講じるべき」と訴えた。声明の概要はつぎのとおり。
道教委は、1年単位の変形労働時間制導入を可能とするための条例整備について、少なくとも先送りするべきだという道高教組・道教組の要求を拒否し、道議会への条例提案を強行した。
【当事者である教職員を無視した意向調査に基づく条例提案の強行は許されない】
今回の条例提案について、道教委は、道高教組・道教組との交渉で「このたび行った意向調査結果も踏まえ、条例整備を行うこととした」と説明している。
文部科学省は、各都道府県・政令市での条例制定を求めるに当たり、「まず、各学校で検討の上、市町村教委と相談し、市町村教委の意向を踏まえた都道府県教委において、省令や指針等を踏まえて条例等を整備する」としている。
道教委の意向調査は、これを踏まえて、各道立学校と市町村教委に対し実施されたものである。
しかし、道高教組・道教組が実施した緊急アンケートでは、1年単位の変形労働時間制について96%もの教員が制度導入について意見を聞かれていないとの回答を得ている。
曲がりなりにも「働き方改革の選択肢の一つ」とうたうのであれば、当事者である教職員に丁寧な説明を行い、その上で検討されるよう十分な時間をかけるべきであり、道教委の意向調査は全く現場の声を無視したやり方である。
他都府県で、12月議会への条例提案を表明したという話は全く聞こえてこない。全国に先駆けて、当事者である教職員を無視した意向調査を根拠に道議会への条例提案を強行する道教委の手続きの性急さは突出して際立っている。
1日8時間労働という大原則を壊す制度導入のための手続きをこのように性急に進めることは、許されるものではなく、断固抗議する。
【性急な条例整備ではなく、深刻な長時間労働を解消する抜本的改善の対応に集中するべき】
1年単位の変形労働時間制の導入には、在校等時間(時間外勤務)の上限順守などの厳しい前提条件が示されており、時間外勤務の上限時間を多くの教職員が超えている現状では導入できない制度である。
まずやるべきことは、遅々として進まない業務の削減や部活動の負担軽減、教職員定数の増員など、やりかけている取組に集中すべきであり、しかも、真に働き方改革が必要な過重労働を強いられている教職員ほど適用されないという矛盾した制度である。
今、現場では新型コロナウイルス感染症が再び増加傾向になってきており、必死の対応を続けている状況である。
感染症対応に当たる教職員は、長時間労働による身体的な負担が大きいだけでなく、この過酷な業務がいつまで続くのかという展望がもてないことへの精神的な負担が非常に深刻である。
道教委は、交渉での我々の指摘に対し「アクション・プランに掲げる各種施策を着実に進め…日々の教員の業務や勤務時間の縮減に努める」と回答しているが、現場の教職員の勤務は、もはやこの程度の対策で解決できるような状況ではない。
道教委は、性急に条例整備をするのではなく、深刻な長時間労働を解消し、教職員の命を守る抜本的改善の対応に集中するべきである。少なくとも、新型コロナ感染症が収束するまでは条例整備を行うべきではない。
【指針等の規定が曖昧で、制度の乱用に対する歯止めがない】
そもそも、1年単位の変形労働時間制導入は、1日8時間労働という大原則を壊すものであり、私たちはこれまで一貫して反対してきた。
制度導入について、現場教職員には「長時間労働を固定化し、助長することになるのでは」と不安視する声が広がっている。
昨年の国会審議で、萩生田文科大臣は「かえって勤務時間が増加するのではないかと心配されている皆さんに対して、その歯止めをきちんとつくっていきたい」「制度の中でも目に見える形で指針を示していきたい」と答弁している。
しかし、労働者保護のための歯止めを目に見える形で示すとした指針等の内容は、「図る」「留意」「配慮」「できる限り」「くみ取る」など極めて曖昧であり、歯止めとしての役割を果たすものではない。
歯止めとしての措置である指針等の運用について、制度を設計する者とその運用をする者、運用を監視する者が同じであるということも問題である。
制度について、文科省が「5日間程度の休日を確保することが限度」と再三にわたって説明してきたことについても、今回の交渉で、まとめ取りを行うことができる休日の日数の上限が法令等では定められていないことも明らかになった。
1年単位の変形労働時間制は、民間であれば労使協定の締結が条件とされている。それを教育職員に対して適用できるよう、勤務条件条例主義を踏まえ、条例によって定めることと読み替えたものである。
労働者側に裁量がないこの仕組みは大いに問題である。労使協定によって確認すべき内容を条例によって定めるとするのであれば、少なくとも歯止めとしての措置も、条例提案とともに明確に示されるべきである。
それが示せないのであれば、条例提案をもち出すべきではない。
【条例提案を強行した道教委に厳しく抗議し、導入反対の世論を大きく広げる】
今回の交渉では、今後、規則の整備や服務監督する教育委員会としての導入の判断についても話し合うことが確認された。
制度の導入に当たっては、昨年の国会審議において萩生田文科大臣が「職員団体との交渉を踏まえつつ検討」と答弁しており、加えて、「地方公務員法においては…法令等に抵触しない限りにおいて書面による協定を結ぶことができる旨が規定されており」とも言及している。
今後の話し合いについては、書面による協定も含めて、私たちと誠実に話し合うべきである。
道教委は、「働き方改革を進めるための一つの選択肢」と前のめりだが、今回の交渉の対応では、教職員のリフレッシュになるとは全く思えない。介護や育児がある教職員には配慮する制度としているが、そもそも介護や育児をしながら働く職員がまともに働くことができない制度を取り入れることが、魅力ある職場なのか甚だ疑問である。
そもそも、時間外勤務を強いられていることそのものが違法であり、本来、道教委は、緊急に、教職員の長時間で過重な勤務を解消するための対策を講じるべきである。
道高教組・道教組は、道教委が、ますます深刻化する教職員の勤務の実態を顧みることなく、条例整備先送りの要求も拒否し、道議会への条例提案を強行したことに厳しく抗議するとともに、制度の問題を明らかにし、各学校への導入に反対する世論を大きく広げていく決意である。
(関係団体 2020-11-20付)
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