札幌市養護教員会 元年度研究紀要 はぐくみ 危機感を学校全体で共有 第5回 西ブロック 緊急時の対応
(札幌市 2021-03-29付)

【キーワード】

体制づくり 緊急時対応のマニュアル 教職員の連携

【研究の内容】

▼緊急時対応マニュアルの作成

 前年度のアンケート調査では、すべての学校において緊急連絡体制マニュアルを作成していた。

 しかし、いざというときに活用されず、他の教職員に救急体制の流れそのものが理解されていない学校もあった。そこで学校内にいるすべての教職員が正しい救急処置の方法と校内の救急体制を把握できるような、分かりやすい緊急時対応マニュアルの作成を行うこととした。

▽緊急時対応マニュアルの内容

・緊急時持ち出しファイル

・アクションカード(緊急体制図、記録用紙含む)

・持ち出し物品の準備

・教職員への配布資料

▼ロールプレイングの実施

 作成したアクションカードが正しく機能するかを確かめるため、ブロック研修会でロールプレイングを行った。

 実際に中学校を会場とし、給食で食べたものが原因でアナフィラキシーショックを起こした生徒、第一発見者、養護教諭、管理職、担任などの役割分担を決め、アクションカードを使用した緊急時の動き方について、2つのグループを作って確認した。

 ロールプレイングを行ったあと、ブロック研究会で再度振り返りを行った。

▽全体を振り返って

「今回は全員養護教諭だったのでロールプレイングもスムーズだったが、実際に一般の教員が行うとなるとスムーズにはいかないのではないか」などの反省点が出たため、救急体制図の見直しとアクションカードの内容の簡素化を行った。

また、誰でも第一発見者になる可能性があることから、アクションカードの「第一発見者」のカードを小さくした携帯版を作成し、名札に入れるなどしていつでも持ち歩き、いざというときにすぐ活用できるようにした。

▼救急体制について、職員会議で提案

 緊急時対応のマニュアルを説明する際、教職員の協力を得るにはどのような説明が必要かなど、校種によって職員会議での提案方法や校務部会の内容にも違いがあることも踏まえた上で、各校の職員会議での提案方法について、シミュレーションしてもらった。

 ブロック研修会では、幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校から数校選び、職員会議での提案と同じように原稿を読んでもらった。 

 他の先生方には一般の教職員のように提案を聞いてもらい、提案を聞く側として大切に思ったことなど、マニュアルに対してどう感じたかを考えてもらった。

▽提案を聞いて、感じたこと

・“自分がやるんだ”と先生方に思ってもらう提案の方法は難しい

・提案後に“それで?このアクションカードをどうやって使うの?”と聞かれると困りそう

・幼稚園では役割分担(本部は園長、現場のリーダー、119番通報は主任、手当ては養護教諭など)がはっきりしていて分かりやすかった

・特別支援学校の緊急時はまず校内放送で集合を呼びかけるとあり、校内放送の活用法を検討したい

▽提案する側

・自分が何を伝えたいのか、優先順位をしっかりつけることができた

・アクションカードを使うことで、緊急時の対応がより簡潔にわかりやすくなることのメリットを伝えたかった

 職員会議を想定しての提案原稿を作成したが、学校によっては研修会など説明しやすい場面設定をしている養護教諭もいた。校種によっては緊急時に集まる人数が少ないと予想されたため、いかに多くの教職員を集めることが大切かを丁寧に説明している養護教諭もいた。

 養護教諭は各校にほぼ一人であり、新卒採用の養護教諭は年度当初の4月の職員会議から様々な提案をしなくてはならない。他校の養護教諭の提案を聞く機会はなかなかないため、職員会議の提案文書を交流したことはよい機会となった。

▼救急体制図の修正

 ロールプレイングの実施と職員会議を想定した提案、それぞれの反省点を活かし、再度救急体制図の見直しを行った。

 緊急時に使用するものは、誰でも見やすく、分かりやすいものが求められる。現場に駆けつけた教職員がどのアクションカードを優先し、誰に配布したらよいのかを明確にする必要があったため、救急体制図にアクションカードの写真を取り入れることにした。

 アクションカードを配布する人がどれを誰に配ったらよいのかという迷いを少なくするために、赤↓黄↓青と色と番号で優先順位を示した。さらに、アクションカードの下に、役割を担当するのが望ましい教職員の代表を「教頭」のように入れ、カードを渡すときの参考とした。

 また、救急体制図は教職員へ配布する資料の表紙とし、常に見て、覚えてもらえるように工夫した。

【まとめ】

 緊急時対応における他の教職員との温度差を、多くの養護教諭が感じており、どのようにすれば円滑に機能するのかを検討してきた。

 まず、学校で何か緊急の事故などが発生したときに、それぞれが自分の役割を理解し、適切に動くための手段として救急体制の中にアクションカードを導入した。

 学校での使用例はまだ少ないため、管理職の協力や事前の話し合いが不可欠だが、緊急時にアクションカードを見て行動できる、養護教諭が不在の時でも教職員が役割を与えられれば行動することができる、という安心感をもつことができた。

 また、教職員へ緊急時対応の周知の手段として、職員会議での提案内容を検討した。校種によっての違いはあったものの、丁寧な説明と資料によって、教職員に正しい理解をしてもらうことができると感じた。

 校内でのアクションカードを使った研修会の必要性や、緊急時の校内体制の管理職や教職員とのすり合わせなど、まだまだ課題は多い。

 しかし、今回の研究で、養護教諭のもつ緊急時における学校体制への不安を少しでも解消できたのではないだろうか。

 また、いつ何が起こるかわからない危機感を学校全体で共有したいという養護教諭の思いは、やはり大切であることも再確認できたと感じる。

 教職員との連携がスムーズにいけば、何かあったときでも養護教諭は安心して救急処置に集中し、専門性を発揮することができる。そのためにも、今後も緊急時の校内体制やマニュアルの内容をより精選していきたいと考える。(連載終わり)

(札幌市 2021-03-29付)

その他の記事( 札幌市)

本年度閉校の札幌市立学校 心豊かに学ぶ子 常盤小

さよなら我が母校常盤小  札幌市立常盤小学校と石山東小学校が統合し、次年度から芸術の森小学校として生まれ変わる。惜しまれながら閉校となる2校を、きょうから2回にわたり連載で紹介する。  札幌市立常盤小学校(神坂淳...

(2021-03-30)  全て読む

札幌市教委 新札幌わかば小で調査 「友達できた」8割 子どもの学習意欲にも変化

 札幌市教委は、昨年12月に市立新札幌わかば小学校(栃尾美加子校長)に対し実施した「新しい小学校になったことについてのアンケート調査」の結果を公表した。児童用アンケートでは8割の児童が「新し...

(2021-03-30)  全て読む

教育活動活性化目指す 札幌市教委・道教育大が協定

市教委道教育大学  札幌市教委と道教育大学は25日、STV北2条ビルで連携に関する協定締結式を執り行った。市教委の長谷川雅英教育長と道教育大の蛇穴治夫学長が協定書に署名。今後、両者が協力して市の教育および同大...

(2021-03-30)  全て読む

札幌市教委が社会教育委員会議 地域リーダー発掘を 報告書案に提言明記へ

第10回社会教育委員会議  札幌市教委は25日、STV北2条ビルで第10回社会教育委員会議を開いた。今期の協議テーマ「地域課題に対する社会教育の在り方について~災害の経験から考える」に基づく報告書案について最終協議。...

(2021-03-30)  全て読む

札幌市 医療的ケア児支援を一般事業化 私立保育所に看護師配置 3年度から 3施設程度想定

 札幌市子ども未来局は、令和元年度からモデル事業として実施している国の医療的ケア児保育支援事業について、3年度から一般事業化し、医療的ケア児の支援を一層充実させる。新たに看護師を配置し、医療...

(2021-03-30)  全て読む

利用者情報に関する問題発覚受け LINE相談など休止 札幌市 電話等で通常対応

 札幌市は、無料通話アプリLINEの利用者情報に国外の技術者などがアクセスできる問題の発覚を受け、子どもアシストセンター事業のLINE相談など3事業を休止することを決定した。休止期間は26日...

(2021-03-29)  全て読む

サッポロサタデースクールプログラム 実施回数下限見直し 3年度 札幌市教委

 札幌市教委は、令和3年度サッポロサタデースクール事業の実施方針をまとめた。従来、原則3回以上としていたプログラムの実施回数の下限を見直し、1回から取り組めるように変更。運営協議会の希望に応...

(2021-03-29)  全て読む

児童生徒の作品85点を 札幌市 雪と暮らすおはなし発表会

雪と暮らすおはなし発表会  札幌市は11日から4日間、札幌駅前通地下歩行空間チ・カ・ホ「憩いの空間」で、第15回雪と暮らすおはなし発表会を開いた。児童生徒が冬や雪などを題材に作成した写真・絵画作品や市の雪対策事業の取...

(2021-03-26)  全て読む

札幌市養護教員会 元年度研究紀要はぐくみ 日常執務の交流に焦点 第4回 清田ブロック 働き方改革

【キーワード】 体制づくり 緊急時対応のマニュアル 教職員の連携 【研究内容】 ▼医療機関の情報交流  それぞれがもっている病院の情報「お勧めポイント」などを事前アンケートで出しても...

(2021-03-26)  全て読む

強い心もち成長を 札幌市立小・中 一斉に修了式

札幌市立小中学校修了式  札幌市立小・中学校は25日、一斉に修了式を挙行した。ひばりが丘小学校(池田哲也校長)では、児童296人が式に臨み、1年間を締めくくった。池田校長はコロナ禍の1年を振り返り、「新型コロナウイ...

(2021-03-26)  全て読む