札幌市内 国研2年度 指定校の研究概要〈上〉 主体的に課題みつける 二条小 思考を深める単元構成
(札幌市 2021-04-06付)

 札幌市立二条小学校と札幌市立北野平小学校は、令和元年度から2年度の2ヵ年で国立教育政策研究所が実施した教育課程研究指定校事業における研究内容をまとめた。二条小は体育について、生涯にわたって運動に親しむ素地を養えるよう、運動領域と保健領域の2領域を研究。北野平小では、指導資料を基本とした学級活動の充実を図るなど、特別活動における主体的・対話的で深い学びが実現できるよう、研究を推進。2校の研究概要について連載で紹介する。

▼研究課題

 学習指導要領の趣旨を実現するための学習・指導方法および評価方法の工夫改善に関する実践研究

▼研究主題

 思考力、判断力、表現力等を高める主体的・対話的で深い学びの在り方

▼研究の視点

①児童が自ら思考を深め、目標達成する姿を明らかにした教材化と単元構成

②児童自ら課題を見付け、学び続けるための指導方法や評価方法の工夫

▼具体的な研究活動

▽視点①

 指導と評価の計画を作成し、育成を目指す資質・能力と評価規準を明らかにして教材化や単元構成を図ることで、運動が苦手な児童や健康に関する学習になかなか関心がもてないなどの児童も、課題探究の学習過程を構築することができるようにするとともに、主に思考力、判断力、表現力等を育成する指導と評価の場面を精選し具体化した。

 第2学年「ゲーム~お宝運びシュートゲーム」の学習では、守りに邪魔をされずにパスを通すドキドキ感をたっぷり味わうことで、「守りがいてもボールをつなぎたい」という目標を児童が設定できるようにした。

 4時間目には、コートの横幅を狭くする手立てを講じた。狭くなったコートでも、今までの作戦や工夫したことが使えるかを試す活動をたっぷりと行うことで、本時では、どの子も前時までに身に付けた知識・技能を生かして課題探究を進められるようにした。

 また、指導と評価の計画において、育成する思考力、判断力、表現力等を具体的に明記し、ボールをつなぐための工夫に関する課題の解決に向かうための指導と評価の充実を図った。技能の状況や意識調査による実態把握に基づき、使用するボールなどにも工夫を図った。

▽視点②

 課題探究的な学習場面においては、児童が自ら課題をみつけることができるよう、課題を見いだすための手立てを教師が明確に学習場面に位置付けるとともに、視点①において具体化した思考力、判断力、表現力等を見取ることができる評価方法を工夫した。

 第5学年「心の健康」の学習では、悩みを抱えている児童のモデルや、6年生に実施した悩みや不安のアンケートを提示し、不安や悩みが身近なものであることや、今後これらと向き合い、対処するためにはどのような方法があるのかという課題をみつけられるようにした。

 グループワークを取り入れ、不安や悩みを一つ選んで対処方法を考える場を設定し、対処が適切かを吟味するため交流した。また、教師は児童が適切な方法を選んでいる様子を価値付けたり、なぜ適切と考えたのかを問うことで、学習したことや生活経験と関連付けて考えたり選んだりできているかが浮き彫りとなり、全員が「対処方法を選んだ理由を書く」という評価規準を達成できるようにした。 さらに、不安や悩みの程度や状況によって対処方法を複数考えたり、人を傷つけることや周りに迷惑をかけることは、対処方法として適していないことを話し合ったりすることで、自分に合った適切な対処方法とする児童の思考の根拠を見取り、より具体的な評価へとつなげることができた。

▼研究の成果と課題

▽視点①

〈成果〉

 指導と評価の計画では、児童に育成するべき思考力、判断力、表現力等を明確化し、実態に応じた教具や場の構成など、運動やスポーツの楽しさや喜びを味わえるようにしたこと、健康に関する原則や概念に着目できるようにしたことによって、思考力、判断力、表現力を高める学びを実現することができた。

 児童が自らの思考を深め、運動の楽しさや喜びを味わう授業を実現することで、体育の学習意欲が高まった。

〈課題〉

 児童が、思考・判断・表現している姿を、より多様な場面で見取るとともに、十分満足できる姿の見取り方を明確にするなど、評価方法をさらに工夫改善していく必要がある。

 保健領域においては、児童が思考、判断したことを表現した際、即時的な価値付けや発問等によって、さらなる思考へと導くなど、より深い学びへとつなげていく指導と評価の充実が必要である。

▽視点②

〈成果〉

 試合得点のデータや児童の運動場面の映像を提示したり、児童に身近な事例の活用などを位置付けたりすることで、児童が主体的に課題をみつける姿を引き出すことができた。

 指導と評価の計画に基づいて、児童が思考、判断、表現している姿を明確にすることで、その姿を発揮できる活動場面を設定するとともに、評価方法の具体化を図ることができ、児童が自分の成長を実感できることにつながった。

 記述以外にも、印を付ける、記号で表すなど、児童が思考・判断した内容の表出方法をより精選することで、児童の思考の変容を見取ることができた。

〈課題〉

 運動領域においては、運動の特性に応じた楽しさや喜びを味わわせる、児童にとって必然性の伴った思考力、判断力、表現力等を育成することができる指導と評価を、一層充実させていく必要がある。

(札幌市 2021-04-06付)

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