道町村教委連文教要望に対する道教委回答・下 地元意見参考に適切な高校配置 地域と学校 協働体制構築
(関係団体 2021-09-09付)

 道町村教育委員会連合会の令和4年度文教施策に対する要望書に対する道教委回答の概要はつぎのとおり。

◆学校教育の改善・充実

▼就学援助費補助金の拡充

 要保護児童生徒に対する就学援助費の補助率の引き上げ等を図るよう、国に強く要望していただきたい。

〈回答〉

 道教委では、市町村が必要な就学援助を行えるよう、補助金や地方交付税による財源措置拡充についてこれまで国に要望しているが、市町村の認定要件や援助項目に違いがあることから、国においてガイドラインを策定することを含めて引き続き要望していく。

▼特別支援教育の充実

▽公立小・中学校に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒への支援の充実に向け、特別支援教育支援員の配置に当たり、特別支援学校教諭免許状の所有者も確保できるよう、交付税措置の増額を図るとともに、特別支援教育支援員の人数に応じた算定基準に改めるよう国に要望していただきたい

〈回答〉

 道教委では、特別支援教育支援員の配置の充実が図られるよう、全国都道府県教育委員会連合会(〓全国都道府県教委連)と連携し、毎年度、国に対して地方財政措置の拡充を要望しており、一定程度増額が図られてきているが、市町村によっては、必要とする学校すべてに配置がなされていない状況がみられる。

 また、道教委が実施している通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に関する調査においては、支援を必要とする児童生徒等の割合は増加傾向にあり、各市町村では、財政事情や人材確保が困難な状況にある中、特別支援教育支援員を独自に配置するなど、支援を必要とする児童生徒等の教育的ニーズに応えるため、様々な取組を行っているものと承知している。

 道教委としては、各学校や地域の実情に応じて特別支援教育支援員を配置できるよう、支援員配置にかかる財源措置の一層の拡充について引き続き国に要望していきたいと考えている。

▽現行の特別支援教育就学奨励費においては、重度重複障がいのある児童生徒にかかる修学旅行の付添経費等は、特別支援学校の在籍児童生徒は補助対象であるが、市町村立小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒は補助対象となっていない。今後、市町村立小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒についても補助対象となるよう特段の配慮を願いたい

〈回答〉

 道教委では、障がいのある児童生徒等の就学に当たり、保護者の経済的負担の軽減を図る観点から、これまでも、特別支援教育就学奨励費負担金等における修学旅行の付添人経費の支給対象範囲拡大など、就学奨励にかかる施策の充実を国に要望してきており、引き続き要望していきたいと考えている。

▽障がい種別(特に病弱、肢体不自由児)で学級に複数の子どもたちが在籍の場合は教員の複数配置となるよう国に要望していただきたい

〈回答〉

 道教委では、特別支援学級の教員配置について、学級数に応じて配置しており、肢体不自由、自閉症・情緒障がい、知的障がい学級で児童生徒数が7人以上の場合などに道独自の措置として1人加算するほか、通級指導を行う学校へ加配措置するなど、教職員配置の充実に努めている。

 今後とも、障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導、支援を適切に行うことができるよう、定数措置の一層の拡充について、国に要望していく。

▽児童生徒が医療機関に入院(短期)し、併設する特別支援学校やいわゆる院内学級で教育を受ける場合の転校手続きの特例・簡素化を国に要望していただきたい

〈回答〉

 道教委では、これまでも、全国都道府県教委連と連携し、国に対して、病気のため入院療養中の児童生徒に対しては、いわゆる院内学級等への学籍異動事務を省略し、事務軽減および円滑な児童生徒の異動を行うことができるようにすること、いわゆる院内学級等で実施した教育指導を、学籍校の教育課程の一部とみなす制度に改正することを要望してきており、引き続き要望していきたいと考えている。

▼高校の配置

▽全日制小規模高校および定時制高校の配置については、これからの高校づくりに関する指針によって、基本的な考えが示されているが、地方(郡部)においては、高校の地域振興に果たす役割が大きいので、都市部と郡部の違いを考慮し、小規模校を抱える地域の意見を聞いて、配置の見直しは慎重に検討いただきたい

〈回答〉

 本道の中学校卒業者数はピーク時の半分を下回る状況となっており、一定規模の生徒や教職員による活力ある教育活動を展開する観点から高校の再編整備を進めているが、配置計画策定に当たっては、各学区ごとに開催している地域別検討協議会に加えて、個別に市町村を訪問する機会や地元の検討の場などを通じて地域の意見を伺うとともに、学校や地域の実情を十分に考慮しながら進めている。

 今後とも、高校における教育水準の維持向上や教育環境の充実を図ることを基本とし、広域な本道における都市部と郡部の違い、今後の中卒者数、地域の実情や学校・学科の特性などを考慮し、地域別検討協議会などにおける地元市町村の意見等も参考としながら、適切な高校配置を検討していきたいと考えている。

 なお、これからの高校づくりに関する指針では、地域連携特例校等において、5月1日現在の第1学年の在籍者が20人を下回った場合にあっても、地域における高校の教育機能の維持向上に向けた具体的取組と効果を勘案した上で再編整備を留保することとしており、今後とも、地域との連携を一層深めながら魅力ある高校づくりに努めていきたいと考えている。

▽高校の総合学科を設置するに当たって、地方における中等教育の振興、高校の活性化を果たす役割が大きいので、地域の実情を考慮され設置していただきたい

〈回答〉

 道教委としては、総合学科を平成9年に設置して以降、できるだけ多くの通学区域に設置しており、現在、町立を含め17校設置している。

 設置に当たって、地域特性に応じた教育内容の設定や教育活動における地域との連携が重要であることから、これまでも地域の人や学校関係者の理解を得ながら進めている。今後も地域の要望等を踏まえ、中卒者数の状況や進路動向、都市部と郡部の違いなどを総合的に勘案しながら、これからの高校づくりに関する指針に基づき取り組んでいきたいと考えている。

▽つぎの事項について、特段の配慮を願いたい。

①公立高校配置計画地域別検討協議会における意見や地元市町村の理解や要望を、高校の配置計画に対して大きくしん酌する材料とするよう願いたい

②都市部と郡部の教育的環境に格差を生じることのないよう配慮願いたい

③市町村立高校設置者を含め、各圏域ごとに特色ある教育環境を道と市町村が共に保障していくような協議の場の設定を願いたい

〈回答〉

 中学校卒業者数の減少が続く中、教育水準の維持向上を図り、活力ある教育活動を展開するためには、高校の再編整備は避けて通れないものと考えているが、再編整備の検討に当たっては、地域の実情や教育的観点からの望ましい学校規模の考え方などを丁寧に説明するとともに、地域の人々から意見を伺うことが何よりも大切と考えている。

 今後とも、高校が地域で果たしている役割や、高校教育を取り巻く環境の変化を見極め、地域別検討協議会をはじめ様々な機会を通じて、保護者や地域の意見などを伺いながら魅力ある学校づくりを進めるとともに、適切な高校配置となるよう努めていきたいと考えている。

▼地域と学校の連携・協働体制構築事業の充実

 地域と学校の連携・協働体制構築事業にかかる補助事業継続と補助増額を国に要望していただきたい。

〈回答〉

 地域と学校の連携・協働体制構築事業については、これまでも国に対し財源措置の継続および拡充を要望しており、今後とも、全国都道府県教委連などとも連携しながら国に要望していきたいと考えている。

▼フッ化物洗口剤の支援

 新規にフッ化物洗口を実施する公立の幼稚園や小・中学校に対して、平成24年度と同様にフッ化物洗口に必要な薬剤の支援をお願いしたい。

〈回答〉

 フッ化物洗口については、未実施市町村における円滑な導入の支援の一環として、道町村教委連の要望を受け、25年度から知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する公立の学校等に対して初年度分の薬剤を支援している。道教委としては、引き続き知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する学校等への負担軽減措置について検討していきたいと考えている。

▼子どもたちのインターネット利用にかかる施策推進

▽ネットパトロール業務の継続をお願いしたい

〈回答〉

 道教委では、児童生徒のネットの不適切な利用による、ネット上のいじめなどの問題行動の未然防止、早期発見・早期対応のために、国の補助事業を活用しネットを監視する取組や、ネットトラブルの未然防止にかかる学校の取組を支援している。

 ネットパトロールは、いじめなどの未然防止や早期発見・早期対応を図る上で重要な事業と考えており、引き続き、国に対して支援事業拡充について働きかけていきたいと考えている。

▽高速回線が整備されていない地域の学校では、ICT機器を十分に活用できないので、高速通信網の整備に対する優先的配慮および明確な財源措置を国に要望していただきたい

〈回答〉

 国の令和2年度第2次補正予算において、光ファイバーの整備事業が盛り込まれ、道(知事部局)においては、未整備の地域に対し、事業を実施するよう働きかけ、本年度末までに市町村が希望する全地域で光ファイバー整備が進められると承知している。

▼デジタル教材購入に対する支援

 授業のデジタル化に伴い、教職員がオンライン授業やICTを活用するために必要なデジタル教材の購入について柔軟に対応できるような財政支援を国に要望していただきたい

〈回答〉

 道教委では、全国都道府県教委連と連携し、国に対して、教育の情報化を推進するためのソフトウェアの経費について、継続的かつ十分な財政措置を講じるよう要望しており、今後も引き続き必要な対応を行っていきたいと考えている。

▼外国人児童生徒に対する指導体制への支援

 定数加配配置基準に満たない場合は、町村費(会計年度任用職員)で日本語支援員を配置しているが、国に対し財政支援を要望していただきたい。

〈回答〉

 本道では、指導方法などに関する相談支援や教員の指導力向上を目的とした研究協議会の開催など、帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな指導支援体制の整備を図っており、町村が単独で配置している支援員等の財政措置については、具体的な業務内容などを踏まえて国への要望について検討していく。

▼家庭での端末を使った学習に対する通信費用等に対する財源措置の継続

 現在の新型コロナウイルスの感染対策対応地方創生臨時交付金による財源措置を継続するよう国に要望していただきたい。

〈回答〉

 道教委では、全国都道府県教委連と連携し、国に対して、すべての児童生徒が家庭学習においても端末を活用できるよう、特に、低所得世帯の児童生徒への通信費の支援を講じるよう要望しており、今後も引き続き必要な対応を行っていきたいと考えている。

社教主事 市町村自主配置を

◆生涯学習・社会教育の振興・充実

▼生涯学習の振興

 学校図書の整備充実・学校図書館司書の配置について、交付税措置の継続および増額について国に要望していただきたい

〈回答〉

 29年3月に学習指導要領が改訂され、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を図るために、学校図書館の役割が一層期待される中で、学校図書館図書整備等5か年計画において、小・中学校の学校図書館における図書整備、新聞配備および学校司書の配置にかかる地方財政措置が29年度から拡充された。

 道教委では、学校司書の配置や学校図書館の環境整備が充実するよう、学校司書の定数措置の新設および地方財政措置の拡充などについて、これまでも国に要望しており、引き続き要望していきたいと考えている。

▼地域文化の振興

▽文化財保護のため国庫補助事業計画の完全採択および国庫補助の増額を図るよう国に要望していただきたい

〈回答〉

 国民共有の財産である文化財は、次世代へ適切な形で保存・伝承していくべきものであるため、その保存と活用にかかる国庫補助事業計画の完全採択等について、要望の趣旨を踏まえ、引き続き、国に働きかけていきたいと考えている。

▽埋蔵文化財発掘調査費用の国庫補助制度の改善および専門職員の配置についての財政的支援を国に要望していただきたい

〈回答〉

 これまでも道による国の施策および予算に関する提案・要望において、専門職員の法的位置付けを明確化する必要があることなどについて国に要望してきたところであり、引き続き国に要望していきたいと考えている。

▼社会教育指導体制の強化

 社会教育主事の専任配置については町村においても努力をしているが、生涯学習推進のため、また、今後のコミュニティ・スクール制度を考慮し、学校教職員の社会教育主事資格取得についてお願いするとともに、当面は派遣社会教育主事(スポーツ担当を含む)制度の継続をお願いしたい

〈回答〉

 コミュニティ・スクール制度においては、学校と地域をつなぐ役割を担うコーディネート機能の充実が重要であり、このコーディネート機能の役割を果たす者として社会教育主事の活用も期待されていることから、道教委では、前年度から文部科学省の委嘱を受けて社会教育主事講習を実施し、札幌会場以外の地方会場を設けることで、教職員が受講しやすい環境を整備した。

 しかし、道教委に在籍する社会教育主事は年々減少傾向にあり、人材不足によって市町村の社会教育推進体制整備への支援、青少年の体験活動の充実、家庭教育への支援など、今日的な課題等に対応するため実施してきた派遣社会教育主事(スポーツ担当を含む)制度の維持が困難な状況にある。

 社会教育主事講習の地方会場設置等によって、市町村職員も受講しやすい環境を整えていることから、道教委としては、派遣社会教育主事制度は継続するものの、当面、新たな派遣は見合わせることとし、市町村の自主配置が進むよう取り組んでいきたいと考えている。

◆いじめ・不登校対策

▽スクールカウンセラーの配置について、スクールカウンセラー活用事業のより一層の拡充を図っていただきたい

〈回答〉

 道教委では、国の補助事業を活用してスクールカウンセラーの配置を推進しており、これまで、派遣方法を改善して配置拡大を図るとともに、前年度からスクールカウンセラーに助言するスーパーバイザーを各管内に配置するなど、制度の充実を図っている。

 また、災害や事故、感染への不安など新型コロナウイルス感染症の影響等のため、緊急に児童生徒の心のケア等が必要となった場合などには、各市町村教委の希望に基づき、随時派遣することも可能としている。

 スクールカウンセラー活用事業は、学校の教育相談体制の充実を図る上で重要な事業であると考えており、引き続き、国に対して、制度の充実を働きかけていきたいと考えている。

◆NHK放送受信料

免除措置の継続

▽学校での放送教育の利用は多く、教育効果が極めて高いものがあるので、教室等の放送受信料免除措置について継続されるよう、日本放送協会に対して働きかけていただきたい

〈回答〉

 日本放送協会(NHK)の放送受信料の免除措置については、義務教育諸学校等における教育内容の一層の充実・向上と放送教育の普及・拡大の観点から、これまで、国に対して要望している。今後とも、NHKの動向を注視しながら、引き続き国に対し、NHKへの働きかけについて要望していく。

 道町村教育委員会連合会の新型コロナウイルス感染防止にかかる緊急要望に対する道教委回答の概要はつぎのとおり。

◆教職員・児童生徒への新型コロナウイルスワクチン早期接種

 教職員および学校関係職員への優先的なワクチン接種については、現在、各自治体の判断で行われているが、国の方針として行われるよう取り計らい願いたい。また、児童生徒に対するワクチンの早期接種についてもお願いしたい。

〈回答〉

 教職員および学校関係職員への優先的なワクチン接種について、国が定める優先接種の順位については、医療従事者↓高齢者↓基礎疾患を有する人や高齢者施設等の従事者↓これら以外(一般接種)とし、一般への接種については、地域の実情に応じて順次、接種を進めることとしている。

 また、道では、市町村における接種計画の円滑な策定に資するよう、新型コロナウイルス感染症対策専門会議委員の意見を踏まえ、一般接種の進め方に関する考え方を示しており、その中で、「社会活動を継続するために不可欠なサービス等」として教育にかかわる人を例示している。

 道教委としては、今後の道や他都府県の動きを注視していきたい。

◆学習指導員、スクール・サポート・スタッフ配置事業継続と予算の拡充

 各学校において、GIGAスクール構想による新しい授業スタイルの構築や新型コロナウイルス感染症対策で業務が多様化していることから、学習指導員、スクール・サポート・スタッフ配置事業の継続と予算の拡充をお願いしたい。

〈回答〉

 学習指導員については、年度当初に、配置希望のあったすべての学校に配置している。現在、教育局を通じて、毎月の各学校の執行状況を調査しており、併せて、学習指導員の追加配置の申請を受け付けている。今後は、当該執行状況調査によって把握した執行残見込みを活用し、予算の範囲内で、年度中途において学習指導員の配置を希望する学校への配置を決定していきたいと考えている。

 スクール・サポート・スタッフについては、学校における働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症対策に伴う教員の業務負担を軽減するため、配置校の拡充を図っており、今後とも配置充実のため、国に対し財源措置の拡充を要望していく。

◆修学旅行延期のキャンセル料支援

 修学旅行を中止や延期した場合のキャンセル料や新型コロナウイルス感染対策等によって生じた経費について、支援をお願いしたい。

〈回答〉

 道教委としては、感染拡大に伴い令和3年に予定していた修学旅行等を中止または延期した場合に発生したキャンセル料等について、財政措置を講ずるよう、引き続き、国に要望していく。 

(関係団体 2021-09-09付)

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