第73回全国造形教育 研究大会北海道大会 第70回全道造形教育 研究大会札幌大会 分科会提言②小学校 型紙の「陰」「陽」生かし 千歳市北陽小 クレヨンの色など工夫
(学校 2021-11-08付)

【発表概要】

▼発表テーマ=「もっと!」を自ら追究しようとする題材構成の工夫『たのしくうつして』(小2・絵に表す)

▼発表者=若林朗子教諭(千歳市立北陽小学校)

 画用紙をはさみやカッターで切り取ってつくった型紙の「陰」と「陽」を生かしたり、繰り返し使えるものを探したり、クレヨンの色や擦り方を工夫したりしながら絵に表す題材。

視点①「もっと!」を生み出す教材化

▽題材配列の工夫=切り抜く活動のある題材を事前に実施しておくことで、道具のよさを実感しながら選んで使うことができる

▽国語とのつながり=児童全員が国語で読み深めた「スイミー」を表すことで、よりイメージを膨らませることができる

▽クレヨンでステンシル!=既習の画材を使った新しい技法を知ることで、興味や意欲をもって取り組むことができる

▼評価規準

▽知識・技能

・つくった型紙を使ったクレヨンステンシルを擦る活動を通して、新しい技法でいろいろな形や色を表すことのよさに気づくとともに、手の感覚を働かせながらクレヨンの色を擦る加減を工夫し、表したいことをもとに表している

▽思考力・判断力・表現力等

・色や形を擦って感じたことやイメージしたことから、表したいことを見つけ、表し方を選んでいる

・自分たちの作品のよさや面白さについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を広げている

▽主体的に学習に取り組む態度

・カッター、クレヨンなどの道具の特長やよさを実感したり、その可能性を追究したりしながら、楽しく安全に活動に取り組もうとしている

【活動構成】

「この子」

▽魚を表そうとするが、はさみではうまく魚の形に切り抜くことができない。「先生、はさみはしんどい!」「カッターを使っちゃダメ?」

▽クラゲを表すために、始めはクラゲの形をクレヨンで縁取り外側に擦っていた。「先生、足がもげちゃった!」

▽その後、外側の形を使い、内側に擦りはじめた。「こっちの方が、クラゲらしい!」「でも、にじいろにならない」

▽色が混ざらないように、ティッシュをこまめに取り替えながら擦り始めた

視点②「もっと!」が連続する活動構成

▼1時間目=題材と出合い、思い付いたことを表してみよう!

▽画用紙をはさみで自由に切り抜いた型紙で、クレヨンステンシルをしよう

・「クレヨンで表したように見えないくらいきれい」

・「色を何色も使ってみたいな」

・「擦る方向を変えたら、違う感じになるよ」

・「紙を半分に折ってから切ると形だけを切り抜くことができるよ」

・「形を切り取った外側の形も使えそうだね」

・「星形を切るにはどうすればいいかなあ」

・「左右対称じゃない形を切りたいけれど、(中側の形か外側の形の)どちらかが使えなくなるのはいやだな」

▼2・3時間目=前時の活動を生かして、「もっと!」「スイミー」を表してみよう

▽スイミーのどの場面を表したい?スイミーの挿絵も、型紙を使っていそうだったよね

▽カッターを使って型紙をつくっていいよ

・「にじいろのゼリーのようなクラゲを表したいな」

・「カッターを使えば、クラゲの足もうまく切れたよ」

・「せっかくカラフルにしたいのに、クレヨンの色が混ざって、汚くなっちゃったよ。ティッシュが原因?それとも擦る方向?」

・「スイミーの赤い魚の兄弟たちを一気に表せて楽しい!」

・「この型紙、1回しか使わないのはもったいないかも…」

▼4時間目=「2年1組作:スイミー」お話の順番に並べて貼ろう

▽みんなの作品を並べて、スイミーの挿絵にしよう

・「○○さんは、教科書にはない場面を表しているね」

・「あれ、大きな魚になったときの向きが私と違う…。たくさん泳いでいると向きが変わることもあるから、まあいいか…」

・「あまり人気のない場面もあるね。教科書の挿絵も必要だね」

視点③「もっと!」をつなげるための自他の変容をとらえる振り返り

▼試す活動の保障から

 テーマを設定せず、「技法(クレヨンステンシル)」「道具(はさみやカッター、クレヨン)」と自由に向き合う経験を十分に保障したことで、「できること」「できそうなこと」を取り出しながら、見通しをもって表そうとすることができるようにした。

▼形や色を振り返りの視点に

 表したい形や色にするためにどのような工夫をしたのかを活動中もどんどん発表させたことで、友達が使った技法や表現に目を向け、自らの作品に取り入れようとすることができるようにした。

視点④「もっと!」を高めるための学習評価の工夫

▼イメージを具体化する言葉がけ「どんな場面を表したの?」「そこにはどんなものがあったの?」

 表したい場面のイメージを言語化することで、何を表せば場面がより伝わるようになるか工夫したり、付け加えたりしようとする姿から評価した。

▼技法を「○○作戦」で!

 いい“加減”でクレヨンステンシルを擦った活動を評価するため、どんな風に擦ったかを「たいよう作戦(内側から外側に向かってシュッシュッと擦る)」「まぜまぜ作戦(何色も使って、擦りながら混色させる)」などと命名させ、それを取り上げ共通の言語にした。

【実践を振り返って】

▼最初にはさみを使わせて表したいものが表しづらい経験をさせたことで、児童は自ずとカッターを使った場合と比較し、「表したいものを表すために(安全に)使いたい!」という必要感を高めることができた。カッターで誰一人けがすることなく、満足のいく作品を完成させられたこともよかった

▼昨今の事情から共用を避けたい意図もあり、児童がそれぞれ所有している画材を使ったが、ロウ素材のクレヨンよりもオイル素材のクレパスを使った作品の方が発色はよかった。そのため活動のよさに見合った仕上がりにならなかった作品もあった。ただし、大人目線でのこと。児童は満足していた

(学校 2021-11-08付)

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