ほっかいどう学トークセッション 未来担う子につなげて 令和の北海道創る知恵とは
(関係団体 2021-11-16付)

ほっかいどう学①・森氏
森久美子氏

 13日、札幌ビューホテル大通公園で開かれたほっかいどう学の第3回シンポジウムでは、「令和の北海道を創る知恵とは~未来を担う子どもたちにつなげるもの」をテーマにトークセッションが行われた。北海道の危機とチャンス、インフラと教育がつくる北海道の未来などを話題に、4人のパネリストが意見を交わした。概要はつぎのとおり。

【パネリスト】

▼作家(農林水産省食料・農業・農村政策審議会前委員)

森 久美子氏

▼NPO法人炭鉱(ヤマ)の記憶推進事業団理事長

吉岡 宏高氏

▼愛別町立愛別中学校校長・上川地区社会科教育連盟委員長

蟹谷 正宏氏

▼国土交通省北海道開発局局長

橋本   幸氏

【コーディネーター】

▼特定非営利活動法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長

新保 元康氏

森 いつも北海道の農村景観の美しさにびっくりしていた。平成4年まで東京に住んでいた。一次産業はもとより、農産物を運ぶ道路をはじめ、すべてインフラがあるから成り立っている生活だと感じている。

 農業で圃場の仕組みを教える場合、田植え、稲刈りに比重が置かれがちだが、圃場の中に排水管が入っていることを農業体験参加者の100%の人が知らなかった。

 公共事業イコール悪というのではなく、むしろインフラという縁の下がないと私たちは何もできないということだ。農産物は水利施設や排水システムなどに支えられ、安定的に生産されている。土の下に興味を持って教えていただければ。社会資本整備の大切さを分かっていただけるのではないかと思う。

吉岡 コロナで私も大変な思いをした。ただ、逆にチャンスと、行動改善、体質改善、観光に力を入れていたが、人数主義からの脱却ということも考えた。どういう社会になっていくのかというイメージをしていかないといけない。人数は少ないけど高く売れるといったことを考える必要がある。

 インフラは目立つし大きくて分かりやすい。なぜその場でそういうものを整備したのかという意味を発信していくことも含め、観光のコンテンツとして極めて有効と感じる。

蟹谷 社会科や総合的な学習の時間に学習したことが、児童生徒の生活に結びついていない実態がある。インフラ整備の恩恵にどっぷりとつかっていながら、整備されたインフラについて質問すると、児童は分からないと答える。

 ある小学校4年生は、道路の除雪を誰が行っているのか分からなかった。矢羽根、散布車、砂箱が何のためにあるのか身近すぎて分からない。国道、道道、町道の違いが分からない。子どもが知らないのは大人の責任といえる。

 学習内容と生活体験、生活体験から学習内容の双方向を実現することが大切。一部の優れた実践から、いつでも、どこでも、誰でもできる実践にしていく必要がある。1人の100歩ではなく、100人の1歩を目指す。そういう意味でほっかいどう学推進フォーラムの活動は非常に価値がある。

 道内各地で進む「みち学習」だが、旭川市と富良野市で授業実践を行った。富良野市立東小学校3年生を対象に行った授業では、旭川十勝道路の整備にかかわって、移動時間短縮、交通事故が減ったといった内容を実践した。こうした実践が増えていくことに期待したい。子どもたちの身近な事象から〝はてな”を引き出す。これが自ら進んで学ぶことにつながる。

橋本 北海道のことを学ぼうといったとき、大手ショッピング施設まで直進110㌔㍍といった看板や、駐車場4000台といったこんなところがよく挙げられる。

 社会資本の公共投資の判断基準には、費用対効果、いわゆるB/Cが用いられるが、人口が指標の大きな要素を占める。ただ、日本の食料供給を支え、インバウンドといった価値については、反映されていないといった実態もある。

 近年、人口減少時代に対応するため、コンパクトシティという施策があるが、集居型の本州などと、散居型の本道において、一律にコンパクト化すると、北海道の場合、朝早くから牛の面倒を見なければならない酪農などをはじめ、無理が生じる。人口低密度地域においては、一律にコンパクト化するわけでなく、そこに住み続けられる環境を提供することで生産空間を守ることが重要となる。

 中央省庁は12省あるが、財務省は予算、外務省は外交、厚生労働省は福祉、経済産業省は経済、環境省は環境保全といったイメージがすぐ浮かぶ半面、国土交通省のインフラ分野の重要性に関する発信は、他の分野に比して希薄な感じを受ける。我々の仕掛けが弱いのかもしれない。

 学習指導要領を読んだが、現行の教育課程に新たなものを入れると、大変窮屈なものとなると感じた。インフラという社会の大切なものを教える時間としては、主体的、対話的、深い学びで探究的な学習である総合的な学習の時間というのがイメージに合っているのかもしれない。

 インフラという大切なものに関する課題を発見したり、地域の方と話したりする。そうしたものを教育の現場に効果的なストライクゾーンに投げ込む努力が必要。今後、面白い取組をみなさんと一緒に実践していきたい。

新保 昔は、北海道を1年学ぶ時間があった。今は、そういう時間がなく、北海道の成り立ちそのものを知らない人が多くなった。北海道の足元のことを学び、令和の北海道の子どもたちのために、声をかけあって未来を創っていくことが重要だと思った。とても有意義な会となり、今後もぜひ企画させていただきたい。

この記事の他の写真

ほっかいどう学②・吉岡氏
吉岡宏高氏
ほっかいどう学③・蟹谷氏
蟹谷正宏氏
ほっかいどう学④・橋本氏
橋本幸氏
ほっかいどう学⑤・新保氏
新保元康氏

(関係団体 2021-11-16付)

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