東川町教委・町内6校1園 文科省研究開発学校指定 幼~高の系統性充実 Globe研究発表会開く(市町村 2021-11-16付)
道内外の教育関係者200人以上が参加
【旭川発】平成29年度から文部科学省研究開発学校の指定を受けている東川町教委と町内6校1園は10月下旬、東川小学校(南部和紀校長)を拠点に創設教科「Globe」研究発表会をオンライン開催した。道内外の教育関係者、町内教職員や来賓など合わせて200人以上が参加。事前配信された授業についての部会研究協議や講演などを通じ、4ヵ年計画の集大成として、これまでの研究成果を共有した。
町は29年度に文科省から指定を受け、東川町幼児センター、東川小、東川第一小学校、東川第二小学校、東川第三小学校、東川中学校、東川高校の1園6校で、英語を中核とした独自の新教科・Globe(グローブ)を創設。研究主題「ふるさと東川を愛する心情を高め、人間尊重の精神を基調とする国際性を養い、国際社会に通用するコミュニケーション能力の育成」のもと、初等中等教育段階におけるグローバル化に対応した教育環境づくりを柱とした教育課程の研究開発を進めてきた。
具体的には、①新教科Globeの創設および指導内容、指導方法、評価方法の在り方②幼・小・中・高における国際教育や英語教育の接続の在り方③外国語に慣れ親しみ、異文化理解を深めるための地域人材の有効的な活用の在り方―の3点を研究。
Globeの3要素「ローカル」(自国や地域の文化や伝統に根ざした自己の確立を図る)、「グローバル」(多様な文化を受容し、共生することのできる態度を育成する)、「コミュニケーション」(英語をツールとしたコミュニケーション能力を育成する)を中心に、幼・小・中・高を通した系統的な指導方法を研究してきた。
新型コロナウイルス感染症の影響で指定期間を1年間延長したことから、本年度を4ヵ年計画の最終年度と位置づけ、研究発表会でこれまでの研究成果を披露。感染状況を踏まえて授業動画を事前に配信し、当日はウェブ会議システムZoomを活用したリモートと会場参集のハイブリッド型で研究協議や記念講演を展開した。
開会に当たり、町教委の杉山昌次教育長があいさつ。
これまでの取組を振り返るとともに、本会が参加者にとって有意義なものとなることを期待した。
続いて、東川小の木村智美教諭が研究概要を説明。本年度は特に「単元デザインの充実」「ローカル・グローバル要素における思考・判断・表現の評価方法」「教科等横断的指導の充実」「幼~高における系統性の充実」を重点に研究を進めてきたことを紹介した。
部会別の研究協議、全体会のあと、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部学力調査官・教育課程調査官の清水友晶氏が「“国際社会に通用するコミュニケーション能力”のその先へ」と題して記念講演。
清水氏は、OECDによる「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」を取り上げ、個々や社会の将来の幸福に向かって子ども自身が「見通し・行動・振り返り」のサイクルを回す必要があることを説明。そのために重要な能力として、エージェンシー(社会参画を通じて、より良い変化を起こすために自ら目標設定し、責任をもって行動する能力)を挙げ、教育の中ですべての子どもたちがエージェンシーを発揮できるよう支援していく必要性などを伝えた。
研究協議では、事前配信した授業動画をもとに、各部会で意見交流した。全体会で4部会の協議内容を共有したあと、檜山教育局の新居雅人次長が全体講評。Globeの系統性を支えるALT(外国語指導助手)など外部人材の存在の大きさなどが話題に上がった。
コミュニケーション要素を中心とした研究協議Ⅰでは、幼小の連携にかかわる第一部会、小中高の連携にかかわる第二部会の2部会を同時展開。第一部会では、幼児センター年長、東川小2年、東川第一小3・4年による3本の授業から、「コミュニケーション能力の基本的な技能の定着を目指した系統性」「幼小の連携」を討議の柱に意見を交わした。
参加者からの「幼児児童の英語への興味・関心や定着度」に関する質問に対し、「幼児たちはALTに親しみをもっており、Globeの活動を楽しみにしている」と説明。初年度に4歳児だった現小学3年生については、英語の発音が良く、意欲的に活動している一方、アンケート調査で「Globeが好き」との回答が少なかったことを踏まえ、実態等を考慮しながら授業改善を図っていることを伝えた。
また、楽しく英語にふれながら英語のリズムを身につけるため、チャンツやジェスチャーの有効性が話題に上がった。
最後に助言者から「コミュニケーション能力は言語活動を通して培っていくもの」との説明があり、自分の気持ちを伝え合う必然性・必要感を高める言語活動を発達段階に応じて工夫する必要性を伝えた。
第二部会では、東川小6年、東川中1年、東川高3年選択の3本の授業を土台に、「コミュニケーション要素における小中高の連携」を中心テーマに協議。課題設定の工夫とルーブリックづくりの難しさや、小中高連携の有効性などについて意見を交わした。
第一、第二両部会で共通して、ALTなど外部人材の存在の大きさが話題に。第一部会では、授業担当者等から「長年携わってくれているALTが子どもをよく理解し、個別支援もしてくれて助かっている」「幼児センターと小学校の両方を担当しているので、幼少連携や情報共有に役立っている」との報告があった。
このあと、ローカル・グローバル要素を中心とした研究協議Ⅱを実施。東川第三小3年、東川小4年、東川第二小4年の授業をもとに協議する第3部会と、東川中2年、東川高1年の授業をもとに協議する第4部会を同時展開した。
全体会では、4部会から代表者が協議内容を共有したあと、檜山教育局の新居次長が講評。「令和の日本型教育」を担う教職員には子どもたちそれぞれの学ぶスピードを理解して主体的な学びを支援する“伴走者”としての役割が求められていることにふれ、東川町では「教師だけでなくALTも子どもたちを理解して取り組んでいる」と評価した。
町の本年度全国学力・学習状況調査結果を振り返り、児童生徒質問紙で自己肯定感や英語への興味・関心に関する肯定的な回答が多かったことから「子どもたちの伴走者として指導してきた成果」話した。
研究協議では、事前配信した授業動画をもとに、各部会で意見交流した。全体会で4部会の協議内容を共有したあと、檜山教育局の新居雅人次長が全体講評。Globeの系統性を支えるALT(外国語指導助手)など外部人材の存在の大きさなどが話題に上がった。
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オンライン参加者とやりとりしながら意見を交わした
(市町村 2021-11-16付)
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