課題共有する組織体制を 道教委 学力向上 改善の方向性
(道・道教委 2021-11-30付)

国語における全国の平均正答率との差の推移
道教委 学力向上 改善の方向性(クリックすると拡大表示されます)

 道教委は、『令和3年度全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』において、北海道の学力向上の取組に関する改善の方向性を示した。「検証改善サイクルの確立」「授業改善」「小・中学校の連携した取組の充実」「望ましい学習習慣の確立」の4つの視点で結果を分析し、改善の具体や授業アイデア例を掲載。検証改善サイクルの確立では、校長のリーダーシップや課題を共有する組織体制、教職員同士の協力体制を確立する重要性を示した。各視点に基づく結果分析と改善の方向性はつぎのとおり。

◆検証改善のサイクル確立

▼分析から明らかになったこと

 「児童生徒の姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立しているか」「学級運営の状況や課題を全教職員の間で共有し、学校として組織的に取り組んでいるか」などの質問に肯定的に回答した本道の学校の割合は、小・中学校共に全国に比べて高い傾向がある。

 上記の質問に「よくしている」と回答した本道の学校の割合は、小・中学校共に全国と比べて高く、このような回答をした学校ほど各教科の平均正答率が高い傾向にある。

 検証改善サイクルに関する取組を「よくしている」と回答した学校においても、教科の平均正答率が全国を下回っている状況がみられる。

▼改善の方向性

 校長のリーダーシップのもと、学校運営の状況や課題を全教職員で共有し、各種データ等を効果的に活用するなど、PDCAを機能させた検証改善の質を高めることが大切。

 教職員同士の協力体制を確立し、人材育成に取り組むなど、全教職員の学校経営への参画を構築することが大切。

◆授業改善

▼分析から明らかになったこと

 「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいたか」との質問に肯定的に回答した本道の児童生徒の割合は増加しており、この質問に肯定的に回答した児童生徒ほど各教科の平均正答率が高い傾向がある。

 小・中学校共に、各教科では「知識および技能」に比べ「思考力・判断力・表現力等」にかかる内容について全国との差が大きい傾向がある。また、問題形式では選択式に比べ、短答式や記述式といった何らかの記述を要する問題について全国との差が大きい傾向がある。

▼改善の方向性

 自ら問題を見いだし、解決方法を探して決定し、実行し、振り返る過程を重視することが大切。

 自分の考えをもち、言葉や文章で表したり、その考えを伝え合うなどの言語活動を充実させるのが大切。

 他者と協働しながら一人ひとりのよい点や可能性を生かすことで、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出すことを実感できる授業を工夫することが大切。

◆小学校と中学校の連携した取組充実

▼分析から明らかになったこと

 「全国学力・学習状況調査の分析結果について、近隣の小・中学校と成果や課題を共有したか」「近隣等の小・中学校と、教科の教育課程の接続や、教科に関する共通の目標設定など、教育課程に関する共通の取組を行ったか」との質問について、肯定的に回答した本道の学校の割合は、小・中学校共に全国に比べて高い傾向がある。

 小中連携に関する取組を「よく行った」と回答した学校においても、教科の平均正答率が全国を下回っている状況がみられる。

▼改善の方向性

 目指す子ども像の実現に向け、児童生徒の学習状況や地域の実態なども踏まえ、課題に即した具体性をもった目標設定(目標の可視化)や取組内容等を明確にした組織づくりが大切。

 同一中学校区内の小学校と中学校が各種データ等に基づく成果と課題を共有するとともに、教科の系統性を踏まえた教育課程や指導方法などの接続を確かなものとするなど、小中連携に向けた取組の質を高めることが大切。

◆望ましい学習習慣確立

▼分析から明らかになったこと

 家庭での学習習慣に関する項目について、「1日当たりの学習時間が長い」「1日当たりテレビゲームをする時間が短い」「家で自分で計画を立てて勉強をしている」と回答した児童生徒の方が平均正答率が高い。

 本道の児童生徒は、全国に比べて1日の学習時間が短く、テレビゲームをする時間が長い傾向がみられる。

▼改善の方向性

 児童生徒が自ら計画を立てて学習し、規則正しい生活を送ることのできる環境づくりに向けた家庭や地域との協力体制の確立が大切。

 児童生徒の発達の段階に応じた家庭学習の在り方について学校全体で共通理解を図り、一貫した指導を徹底・継続することが大切。

◆記述問題 依然として差 全国平均との経年変化

 『令和3年度全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』では、「国語」「算数・数学」の全国の平均正答率との差の推移を学習指導要領の内容・問題形式別に調べた。国語では、小学校の「書くこと」の差が縮まり、中学校の「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」は全国平均を上回っている一方、小学校の「読むこと」の差が比較的大きい。算数・数学では、記述式問題の正答率の差が依然として大きく、小学校ではマイナス3・0~3・6ポイントの間で推移している。

◆国語および算数・数学の状況

【国語】

▼学習指導要領の内容別の経年変化(全国の平均正答率との差の推移)

▽小学校

 「書くこと」の正答率は全国との差が縮まっており、「言葉の特徴や使い方に関する事項」が全国の平均正答率より低いものの、比較的小さな差で推移している。

 「読むこと」で、令和元年度に全国との差が縮まったものの、他の内容と比べて比較的大きな差で推移している。

▽中学校

 「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」について、全国の平均正答率を上回った年があり、その他の年においても比較的小さな差で推移している。

 「書くこと」「読むこと」は、継続して全国の平均正答率を下回っている。特に「書くこと」が比較的大きな差で推移している。

▼授業改善に向けて

▽小学校

 高学年において、目的に応じて文章と図表を結びつけて必要な情報を見つけたり、見つけた情報を言葉で表したりすることができるよう指導することが大切。

▽中学校

 具体的な叙述に基づいて自分の考えをもつように指導するとともに、互いの考えを交流し、振り返ることで自分の考えを確かなものとするよう、指導することが大切。

【算数・数学】

▼問題形式別の経年変化(全国の平均正答率との差の推移)

▽小学校

 「選択式」について、全国の平均正答率より低いものの、比較的小さな差で推移している。

 「短答式」について、平成29年度に全国との差がマイナス1・7ポイントに縮まったものの、他の年度ではマイナス2・3~3・5ポイントの間で推移している。

 「記述式」について、元年度に全国との差がマイナス2・2ポイントに縮まったものの、他の年度ではマイナス3・0~3・6ポイントの間で推移している。

▽中学校

 「選択式」について、28年度に全国の平均正答率を0・6ポイント上回り、他の年度についても全国との差が比較的小さな差で推移している。

 「短答式」について、28年度は全国との差がマイナス0・2ポイントであり、他の年度ではマイナス0・7~1・7ポイントの間で推移している。

 「記述式」について、3年度に全国との差がマイナス1・5ポイントに縮まったものの、他の年度ではマイナス1・7~2・2ポイントの間で推移している。

▼授業改善に向けて

▽小学校

 全学年を通して、思考力、判断力、表現力等を育成するため、具体物、図、言葉、数、式、表、グラフなどを用いて考えたり、説明したり、互いに自分の考えを表現し伝え合ったり、学び合ったり、高め合ったりする学習活動を積極的に取り入れることが大切。

▽中学校

 全学年を通して数学的な表現を用いて簡潔・明瞭・的確に表現したり、互いに自分の考えを表現し伝え合ったりするなどの機会を積極的に設けることが大切。

(道・道教委 2021-11-30付)

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