未来創造する楽しさ学ぶ 札幌澄川西小6年生のSTEAM教育 札幌国際大・安井准教授が出前授業(札幌市 2022-10-31付)
センサーの機能を確かめる児童
札幌市立澄川西小学校(千徳直美校長)で25日、札幌国際大学の安井政樹准教授による出前授業「未来創造学習」が行われた。小学校段階におけるSTEAM教育の普及・推進を目指したもの。ICTの効果的な活用に向けて“ものづくり”の観点を加えた学習を展開すると、児童たちは次々と発明アイデアを思い浮かべた。安井准教授は、STEAM教育の良さを教員が体験することで、教育現場に広がっていくことを期待している。
6年2組総合的な学習の時間に臨む児童24人の前に、端末に接続された見慣れない機材が並んだ。安井准教授は、生活で利用される多くの機械が「センサー」「コンピューター」「アクチュエーター」の3つが作用することで機能していることを説明した上で「様々なセンサーを体験してみよう」と呼びかけた。
児童たちは、明るさや温度、湿度、気圧、距離、動き、傾き、電圧などを感知する機材「AkaDako STEAM BOX」((株)ティーファブワークス製)で実験。2人一組になってセンサーに手をかざしたり、みのむしクリップを接続して乾燥剤を挟んだり、機材を上下させたりすると、端末に映し出されたグラフが敏感に反応。児童たちは「本当に数値が変わった!」「反応している!」などと目を輝かせた。
安井准教授は、児童たちがセンサーの働きを確認したところで「センサーを使って、人々がより幸せになれる“未来を変える発明プレゼン”をつくろう!」と呼びかけた。児童たちはペアで活発に話し合い、全12グループがユニークなアイデアを発表。ものづくりを考える楽しさを肌で感じた。
STEAM教育は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた教育概念。文部科学省は、5分野を教科等横断的に学習することで、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための資質・能力を養うものとして位置付けている。
高校では、中央教育審議会答申において、総合的な探究の時間や理数探究などで重点的に取り組むべきものとしている。
一方で、小・中学校段階では素地の育成を求めながらも、学校現場では「作業や実験を伴う学習のノウハウを持った教員の不足」「電子環境整備の遅れ」「家庭や地域の格差」などの課題も見られ、本格的な取組推進にはハードルが高い現状だ。
安井准教授は、教職員の努力によって1人1台端末の活用が進んでいる一方で、活用方法について「現在は何かを調べたりまとめたりするなど、児童たちにとって“受け身”の活用もあるのではないか」と指摘する。GIGAスクール環境を生かした学びをさらに推進するためにも児童の主体的に学ぶ意欲を高め、STEAM教育が掲げる「学んだ知識を実社会での問題発見・解決に生かすところまで進めたい」と力を込める。
実際、この日の授業のまとめで行ったプレゼンテーションで、高熱を感知すると警告音声を発する機能を作り上げた児童もいた。授業を見学した千徳校長は「未来の学習の姿を目の当たりにした。児童たちの大きな可能性を感じた」と手応えを口にした。
担任の小森量平教諭は、“ものづくり”の視点を加えた授業に大きな期待を示す。「算数や理科などを組み合わせて、積極的に取り組んでいきたい」と意気込む。STEAM教育の普及に向けて「外部講師やその道のプロなどを招き、多様な人材の得意分野を生かした授業を展開することが重要」と説く。「まずは先生の挑戦する気持ちが必要。多くの先生が授業を体験して“良いものだ”と感じ、進め方の理解を深めていくことが大切」と話す。
安井准教授は「教職員は、STEAM教育を進めたくても研修機会が少ないのが現状。ぜひ、未来創造型の授業の良さを体験してもらいたい」と期待する。
(札幌市 2022-10-31付)
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