部活動地域移行で おにスポ磯田氏 地域スポーツの未来へ 日高町教委の説明会で講話
(市町村 2022-12-09付)

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地域移行後の部活動は「競技思考」から「レクリエーション思考」へ、「強化と普及・育成の中間」から「普及・育成」へシフトし、子どもたちの「やってみたい〓」を後押しする。一方で、競技思考かつ強化の役割は、競技団体が担う形となる

 【苫小牧発】日高町教委が11月29日、町内の富川公会堂で開いた部活動の地域移行に関する説明会で、NPO法人おにスポ理事長で道教委の「部活動の在り方検討支援アドバイザー」を務める磯田大治氏が講話した(説明会概要は5日付7面既報)。磯田氏は「部活動の地域移行は、地域スポーツの未来を議論する入り口」と述べ、種目別受け皿団体探しではないことを強調。移行方法は地域ごとに異なることにも触れ、各地域独自のスタイルで進める必要があることを訴えた。「部活動が変わります!!~令和5年度から地域移行が始まります」と題して行われた講話の概要はつぎのとおり。

▼今後の部活動

 当面はなくならない。まずは休日における移行を来年度から3ヵ年で行うことを目標とする。また、平日の移行も視野にできるところから取り組むことになる。

▼受け皿団体について

 パターンは主に3つ考えられる。

①地域スポーツクラブ等に移行するケース

②外部指導者が部活動を指導するケース

③教員が兼職兼業として報酬を得て指導するケース

 東京都では、外部指導者が担当する部活動と教員が担当する部活動が並行している状況が拡大しつつある。また、③は実際にこの方法でやっているという例は聞いたことがない。

▼地域移行の方向性と課題

 体験格差をなくすことが重要。日本でもマルチスポーツに興味がある中学生は59%いる。いろいろなスポーツをやってみたいと思っている生徒が多くいるのに制度上できていない。

 また、地域移行にはつぎのような課題がある。

▽低所得世帯であってもどの子も気兼ねなくスポーツを楽しめる環境

▽障がいのある児童でも安心してスポーツを楽しめる環境の充実

▽山間地域や離島でもスポーツ活動の機会を保障すること

▽1種目だけではなく、様々なスポーツを楽しむ機会の保障

 これらは室伏広治スポーツ庁長官が指摘していることでもあり、クリアすべき課題となる。

 部活動は、生徒の自主的・自発的な参加によって行われるもので、地域移行後もこの考え方は変わらない。スポーツが多様化する中、マルチスポーツやeスポーツ、ヨガといった従来の部活動にはないものに対して「やってみたい!」という声が上がることも想定される。まずは競技種目ごとに地域移行を進めることになるが、スタートしたあとも子どもたちの意見をくみ取れる仕組みが必要になる。

▼スポーツの価値観のイノベーション

 これまでの部活動は―

▽1年生で入部。「この部活動を選んだのだから3年間全うしよう」。1種目しかできない?

▽3年生で中体連に参加し6月で引退。引退する必要ある?

―という状況があった。

 これからの地域スポーツでは―

▽地域で参加可能なスポーツを選べる環境。多世代参加型やマルチスポーツ

▽試合に出ることだけを目的とせず、スポーツに親しめる環境

―といったものに変化していく=図参照=。1種目だけではなく、やりたい競技を探そうという形になっていく。

▼マネジメント組織

 宮城県栗原市の「しわひめスポーツクラブ」では、様々なスポーツの少年団、一般団体等だけではなく、中学校部活動の部員全員が入会し活動している。例えば、バレーボールでは部活動を含めた複数の団体があるが、各団体・部活動で購入した用具を共有したり、一般団体のメンバーが外部指導者を務めたりするなど、協力しながらスポーツを楽しんでいる。

 本来の受け皿として探さなければならないのは、部活動・部員を受け入れてくれる競技団体ではなく、ヒト・モノ・カネをマネジメントする人材・組織。マネジメント組織は、補助金・分配金・会費の管理、指導者の派遣調整、施設の利用調整といった課題を引き受ける。

▼まとめ

 これまで中・高校生のスポーツ環境整備は「学校におんぶにだっこの状態」だったことを認識し、部活動の地域移行は、地域が「自分たちのまちのスポーツを振興する最大のチャンス」と捉えるべき。

 部活動を地域移行するに当たって考えるべきポイントは―

▽主体は生徒であり「やってみたい!」がかなう仕組みづくりを

▽地域移行は種目別受け皿団体探しではない

▽教員の働き方改革というよりも青少年のスポーツ環境を整備するという意識を

▽それぞれのまちのやり方を確立するため、ゴール、在るべき姿を明確にすることが必要

―となる。

 部活動の地域移行は、地域スポーツの未来を議論する入り口となる。地域の協力なしでは絶対に実現できないので、子どもたちのために大人に何ができるかを議論のテーブルに載せて、わくわくするような未来を描いてほしい。

(市町村 2022-12-09付)

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