道議会質疑 決算特別委(4年11月10日)(道議会 2023-05-19付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼木葉淳委員(民主・道民連合)
▼菊地葉子委員(共産党)
【答弁者】
▼倉本博史教育長
▼唐川智幸学校教育監
▼谷垣朗道立学校配置・制度担当局長
▼中澤美明指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長
▼伊賀治康教職員局長
▼岡内誠道立学校配置・制度担当課長
▼新居雅人義務教育課長
▼今村隆之健康・体育課長
▼山下幹雄教職員課長
▼中嶋英樹働き方改革担当課長
=役職等は当時=
◆部活動地域移行
Q木葉委員 紋別市教委が示した3年度の地域部活動推進事業の成果報告書によると、次年度以降の休日部活動の地域移行に向けて、地方の問題として、部活動は学校が主体となるべきという考えと、持続可能性を見据えた地域移行という考えの意見対立が生じた、基本姿勢に大きな隔たりがあるという記載が見られる。これは、モデル地域だけの課題ではなく、全道の多くの地域が抱える課題だと考える。
道教委として、5年度からの地域移行に向けて、紋別市教委のモデル事業で明らかとなった課題の解決に向けて、どのように取り組んでいくのか伺う。
A中嶋働き方改革担当課長 部活動の地域移行について。紋別市では3年度、国の委託事業を活用し、中学校の休日の部活動を地域の人材が指導することによって、教員の負担軽減を図るなどの実践研究を進め、茶道やダンスなどでは、市内の中学校3校が合同で、地域の指導者が市の文化施設で指導する取組につなげるといった成果があったものの、運動部活動の在り方に関して、共通認識を十分に図ることが難しく、計画どおり実施できなかった取組もあったと承知している。
道教委としては、各地域において、教育委員会、学校関係者、保護者、スポーツ・文化担当部署、スポーツ・文化団体、地域の関係者など、多くの方々が参画する検討協議会が設置され、部活動を地域移行する意義などについて十分に意思疎通が図られ、地域に支えられた部活動が展開できるよう、知事部局をはじめ、市町村教委や関係団体と連携しながら取り組んでいく。
◆感染症対応
Q木葉委員 道は、学びを止めない環境の整備費として、学習支援員の配置に7億円余り、スクール・サポート・スタッフの配置に10億円余りを予算措置しているが、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーについては、2億円余りとなっている。
この間のオンライン授業、休業実態、マスク、行事短縮に対する子どもたちへの影響は、計り知れないものがある。
道教委として、コロナ禍の子どもたちの内面への影響をどのように認識しているのか伺う。また、道教委としての検証作業が必要と考えるが、所見を伺う。
A中澤指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長 子どもたちへの影響などについて。本道では、新型コロナウイルス感染症の影響などによって、学校や家庭における生活や環境が変化し、児童生徒は様々なストレスや課題を抱えていると認識している。
このため、道教委では、一人ひとりに寄り添ったきめ細かな指導を展開するため、各学校における組織的な生徒指導体制の構築と、スクールカウンセラーなどとの連携による教育相談体制の充実などに取り組んでいる。
また、道教委では、これまでも、道医師会や道薬剤師会、校長会やPTA団体等で構成する道学校保健審議会をはじめ、大学、保健所等の専門家の意見を伺いながら、コロナ禍における教育活動の在り方を検証し、各学校へのフィードバックと助言を行ってきた。
引き続き、こうした取組を進め、各学校が、衛生管理マニュアルを踏まえつつ、効果的かつ効率的な感染予防対策を提供できる体制を整えながら、日常の教育活動を可能な限り実施し、さらに充実することができるよう支援していく。
Q木葉委員 具体的にどのような点について検証して、どのような結果が出て、各学校へはどのように対応しているのか伺う。
A中澤指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長 道学校保健審議会等について。本審議会は年2回開催しており、4年7月に開催した審議会においては、道教委における新型コロナウイルス感染症対策について説明を行い、児童生徒や学校の状況等を踏まえながら、マスクの着脱に関する指導の在り方や効果的な換気対策等について協議した。
道教委では、こうした協議内容を踏まえ、夏季休業前に、感染対策の留意点に関するリーフレットを作成し、各学校や家庭に注意喚起を行ってきた。
加えて、札幌医科大学の教授等から日常的に感染対策に関する指導をいただいているほか、保健所の専門家と学校を訪問し、感染対策の改善点について指導を行い、その成果をリーフレットにまとめて、各学校や家庭に周知するなどの取組を行っている。
◆日本語指導
Q木葉委員 道内の外国籍児童生徒の在籍実態についてどのようになっているのか、3年の状況と10年前、20年前の状況について伺う。
A新居義務教育課長 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の状況について。札幌市を含む日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は、20年前の平成14年度は、小・中・高・特の合計で67人、10年前の24年度は72人、令和3年度は185人となっている。
Q木葉委員 道教委として、この間、どのような支援を行ってきたのか、また、現状の課題をどのように認識しているのか伺う。
A中澤指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長 外国籍の児童生徒の受け入れへの支援について。近年は、外国籍の児童生徒の母語が多様化し、居住する市町村が多岐にわたる傾向にあることから、児童生徒の実情に応じた指導に苦慮している学校や、初めて外国籍の児童生徒を受け入れる市町村教委への支援を一層充実することが重要と認識している。
道教委では、各市町村教委に対して、学齢期の外国籍の児童生徒の就学機会の確保に向けた通知や、転入後の指導に関する資料を配布するとともに、市町村教委の要請に応じて、大学教授などの有識者を学校に派遣し、日本語指導の在り方について指導助言を行うほか、コミュニケーションを図るための携帯型通訳機の貸与や、ICT端末を活用した指導等に関する資料を提供している。
Q木葉委員 今後も外国籍の児童は増加していくことが予想されている。
現状の課題解決に向け、市町村教委とどのように連携し、どのような取組を進めていくのか伺う。
A唐川学校教育監 今後の取組について。外国人の児童生徒にとって、学校での教育は、日本での生活の基礎であり、児童生徒の日本語能力はもとより、一人ひとりの生活習慣などの文化的な背景を的確に把握しつつ、安心して学校での生活を送ることができるようにすることが大切であると考えている。
道教委では、市町村教委をはじめ、知事部局やJICA、大学等の関係機関で構成する外国人児童生徒の支援に関する協議会を毎年度開催し、受け入れ体制の整備や日本語指導の在り方について協議を行うほか、教員や市町村教委の担当者を対象とした日本語指導に関する研修会を実施している。
今後もこうした取組を継続するとともに、有識者の学校訪問による日本語指導の支援を行うなどして、市町村教委をはじめとする関係機関と連携しながら、外国籍の児童生徒へのきめ細かな対応に努めていく。
◆免許外指導
Q木葉委員 教育職員免許法認定講習のねらいと3年度の実施状況について伺う。
A山下教職員課長 教育職員免許法認定講習について。道教委では、免許取得を志す現職教員が受講しやすい環境を整備するために認定講習を開設しており、その時々に学校教育現場で必要と考える講習を開設している。
3年度は、特別支援学校、中学校の技術、家庭および小学校の免許状を取得する課程について、認定講習を開設した。
Q木葉委員 本講習の受講日は、平日、休日の両方が設定されているとのこと。受講日設定の理由と、3年度の参加状況および受講に際しての勤務対応について伺う。
A伊賀教職員局長 認定講習の受講日などについて。認定講習は、現職教員が集中的に受講することができるよう、夏季休業期間に開設しており、本講習の指導大学である道教育大学と講師が対応できる日程を調整しながら設定している。
また、3年度の参加状況は、特別支援学校522人、中学校の技術18人、家庭17人、小学校42人の計599人で、このうち、週休日と休日に参加しているのは561人である。
受講に際しての勤務対応は、勤務日において、校務運営上の支障がなければ、教育公務員特例法に定める、いわゆる校外研修として、校長が承認することができるものと考えている。
Q木葉委員 学校現場の職員からは、子どもたちのために、専門資格、免許を取りたいという声を聞く。ただ、既に学校現場で働いている教職員は、平日は子どもたちとの活動があって参加は難しいと伺っている。せめて、休日の講習に参加した場合、代替の休暇というものを措置してはどうかという声もある。
道教委としての認識と今後の対応について伺う。
A倉本教育長 認定講習の受講に係る対応について。教員免許は、教員個人が保有する資格であり、その取得のための講習の受講は、職務には該当しないことから、週休日の受講に係る振り替えは難しいものの、勤務日の受講は、職務との関連性を考慮し、校務運営上の支障がなければ、校長が校外研修として承認できるものと考えている。
道教委としては、授業がなく、教員が受講しやすい夏の休業期間に、引き続き、講習を開設したいと考えている。
また、2年度から、インターネットによる同時双方向型遠隔講習方式で実施し、受講に当たっての移動時間の短縮や交通費の負担軽減を図っており、今後も引き続き受講しやすい環境の整備に努めていく。
D木葉委員 教員が教職免許法認定講習を受けることは、目の前にいる子どもたちのために、少しでも良い授業をしたいという思いからだと考える。
中学校における免許外指導が679件あり、全道の中学校数よりも多い。より専門性を持って指導したいと思っている教員が、夏季休業等にこうした講習を受けているが、受けた方の実績をみると、勤務時間外に研修を受けた方が、599人中561人と、9割になっている。学校にいる間は、やはり、教員としては、子どもたちと共に過ごし、子どもたちに必要なことであるからこそ、こうした研修を受けている。ぜひとも、そういった現場の教職員に寄り添った対応をしていただきたい。
また、長期間に及ぶ欠員があったり、2月には100人を超えるような欠員があったり、100人を超える方が病気休職をしている。300人を超える方々が退職しているといった答弁があった。やはり、今の学校現場にはゆとりがなく、周囲の教員の健康状態にも、若い先生の健康状態の変化にも気付くことができない、そんな現場となっているのではないか。自分のことで精いっぱいの学校になっているのではないか。
同僚の変化に気付けない教員が、子どもの変化に気付けるのだろうか。そのことが、子どもたちの穏やかな、そして健やかな成長に大きな影響を与えてしまうのではないか。
学校現場への人の配置、学校現場の裁量権、何よりも業務そのものを見直すといったことを求めたい。
◆特別支援教育
Q菊地委員 特別支援学校の幼児児童生徒数について、3年度までの5年間、どのように推移しているのか伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 幼児児童生徒数の推移について。本道の国立、公立、私立を合わせた特別支援学校の幼児児童生徒数は、訪問教育学級の在籍者も含めて、平成29年度は5817人、30年度は5878人、令和元年度は5996人、2年度は6013人、3年度は6049人であり、29年度と3年度を比較すると、232人の増となっている。
Q菊地委員 教室不足、狭あい化については、これまでも指摘を行ってきたが、特別支援学校で3年度時点で特別教室等を転用している学校数はいくつか、また、それでもなお不足する学校数はいくつか伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 教室不足の状況について。3年10月時点で、道立特別支援学校67校のうち、11校において、在籍者数の増加に伴い教室不足が生じており、これら全ての学校において、特別教室の転用や教室の間仕切りなどを行ったことによって、必要となる普通教室は確保できている。
Q菊地委員 特別支援学校の生徒数増加による教室不足について、どのような対策を講じ、どれだけ改善したのか、また、3年度までの5年間で何件の整備を実施し、金額はいくらになったのか、併せて伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 教室不足への対応等について。特別支援学校の児童生徒数の増加に対応するため、道教委では、これまで、既存施設などを活用した学校の新設や校舎の増築に加えて、通学区域の見直しなどを行ってきており、元年度調査と3年度調査を比較すると、こうした対応によって、教室不足が生じている学校数は17校から11校となり、不足する教室の合計数は112室から104室へと減少している。
また、平成29年度から令和3年度までの5ヵ年においては、知的障がいの特別支援学校を4校開校したほか、1校で校舎の増築を実施しており、これら5件の整備費は、合計で約29億4000万円となっている。
Q菊地委員 3年10月の文科省調査によると、教室不足の解消に向けた集中取組計画策定について、北海道は、策定ありと回答しているが、どのような計画か伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 集中取組計画について。令和2年1月の文科省からの通知に基づき、道教委では、6年度までの集中取組期間における特別支援学校の教室不足の解消に向けた取組に関する計画を3年3月に策定した。
本計画では、緊急度の高い学校から、校舎の増築や通学区域の見直し、空き校舎など既存施設を活用した整備を行うほか、適切な就学の場を確保できるよう、市町村教委など関係機関と連携し、多様な学びの場の充実、整備に取り組むといった、教室不足の解消に向けた取組の基本的な方向性を定めている。
Q菊地委員 この集中取組計画は公表しているのか。公表していないとしたらなぜか。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 計画の取り扱いについて。集中取組計画は、教室不足の解消に向けた取組の基本的な方向性を道教委内で整理したものであり、公表はしていないが、今後、具体の取組を進めるに当たっては、その内容を示しつつ、保護者など関係者の意見を伺いながら進めていく考えである。
Q菊地委員 文科省の通知では、総合的・計画的な取組をより一層推進とされている。この通知に照らせば、解消する不足教室数など、具体的数値が道の計画で示されるべきと考えるが、計画に示されていないのはなぜか。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 具体の計画について。特別支援学校の在籍者数は、学校によって年度ごとに増減が見られるなど、一定ではないことに加えて、利用可能な施設や敷地も限られており、教室不足の解消に向けては、今後の児童生徒数の推移や施設の状況、地域の実情などを踏まえて、慎重に検討していく必要がある。
そのため、集中取組計画においては、今後の取組の基本的な方向性を示し、この考え方に沿って、4年度までに具体の対応を検討した上で、5年度以降、順次、取組を進めることとしたものである。
Q菊地委員 集中取組計画には具体的な数値を示していないが、このような計画で本当に教室不足の解消が可能なのか伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 教室不足の解消について。集中取組計画で示す基本的な方向性に沿って、児童生徒数の推移や施設の状況、地域の実情などを踏まえて、具体の対応を検討することとしており、教室不足の解消に向けて、着実に取組を進めていく考えである。
Q菊地委員 他県では、集中取組計画の中で、具体的な学校、期間を設定し、整備スケジュール等についても明らかにしている。
道の計画では計画の検討にとどまっているが、検討の中に特別教室の転用解消は含まれているのか伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 特別教室について。障がいの状態に応じたきめ細かな指導や支援を行う上で、必要となる教育環境を確保することは重要であり、特別教室等を転用する場合にあっても、音楽室や視聴覚室、調理室など、使用頻度が高く、専用の教材や教具を必要とする特別教室は維持するなど、学校全体の教育活動に支障が生じないよう配慮している。
今後、教室不足に対応するための具体の対応を検討するに当たっては、普通教室と併せて、必要となる特別教室を確保するなど、望ましい教育環境の整備に努めていく考えである。
Q菊地委員 転用による子どもたちの学習に影響が出ているのではないか。
道教委としてどのように考えているのか伺う。
A岡内道立学校配置・制度担当課長 教育活動への影響について。特別教室を転用することによって、例えば、様々な学習を普通教室で行わざるを得なくなるほか、児童生徒が心理的に不安定になった場合などに、気持ちを落ち着かせるために必要な場所の確保が難しくなるなど、教育活動に少なからず影響があるものと考えており、望ましい教育環境を確保する観点から、改善を図っていく必要があると考えている。
Q菊地委員 特別支援を必要とする生徒数は、増加の一途をたどっており、慢性的な教室不足が深刻化している。道の対応は、これまでの枠を出ておらず、対策が遅れていると言わざるを得ない。
道として、現状をどのように認識しているのか伺う。
A谷垣道立学校配置・制度担当局長 現状への認識について。障がいのある子どもたちやその保護者の専門的で質の高い支援や指導へのニーズの高まりなどを背景に、特別支援学校での就学を希望する児童生徒の増加傾向が続いている。こうした状況を踏まえて、道教委では、これまで、学校の新設や増築、通学区域の見直しなど、必要な対策を行い、教育環境の確保に努めてきている。
こうした対応にもかかわらず、一部の学校においては、それを上回るペースで児童生徒数の増加が続き、教室不足が依然として続いている。こうした現状は、障がいのある子どもたちが安心・安全に学校生活を送り、必要な支援や指導を受ける上でも憂慮すべき状況であり、早急に対応しなければならない重要な課題と認識している。
Q菊地委員 それならば、なおさら具体的な対策が必要だが、文科省の通知では、2年度から6年度までの期間において、教室不足の解消に向けた取組を集中的に行うとされている。しかし、道の計画では、6年度まで計画検討にとどまっている。真剣に、教室不足、狭あい化を解消する決意が見えない。
整備スケジュール等も含めた具体的計画の策定をいつまでに行うのか、また、教室が不足している現状について、道も認識しているにもかかわらず、解消に向けた集中取組計画は具体的内容がなく、次年度からの方針素案の内容も前回と同様の対策にとどまっている。
問題解決に向けて、具体的にどのように取り組むのか、教育長に伺う。
A倉本教育長 今後の取組について。障がいのある子どもたち一人ひとりが、障がいの状態などに応じたきめ細かな指導や支援を通じて、自らの可能性を最大限に伸ばしていくためには、教育環境の整備が極めて重要である。
道教委では、これまで、教室不足が課題となっている学校を職員が直接訪問し、施設の状況や教育活動の実施状況など、学校の実情の把握に努めてきたところであり、こうした取組によって得られた情報なども踏まえて、今後の児童生徒数の推移や、学校、地域の実情、老朽化の状況などを総合的に勘案した上で、4年度までに緊急度の高い特別支援学校を優先して具体の対応を検討し、特別支援学校の教育環境の改善・充実に向けて取組を進めていく。
◆包括的性教育
Q菊地委員 包括的性教育の推進等について、議論の前提として、WHO(世界保健機関)が定義するセクシュアルヘルス(性の健康)とは何か。
A今村健康・体育課長 いわゆる性の健康について。WHOの定義によると、性の健康とは、性別や性的指向、性自認、性に関する意識や行動を総称するセクシュアリティーに関連する、身体的、感情的、精神的、社会的に幸福な状態であるとされている。
さらに、性の健康は、単に、病気、機能障がい、または、虚弱がないということを指すものではなく、強制や差別、暴力のない、楽しく安全な性的体験をする可能性が必要であり、性の健康が達成され、維持されるためには、全ての人の性的権利が尊重され、保護され、実現されなければならないとされているものと承知している。
Q菊地委員 道教委は、性教育を性に関する指導と呼称しているが、性教育において、セクシュアルヘルスは人権であるという概念はどう反映され、性教育にどう実践されてきたのか、3年度決算と併せて示していただきたい。
A今村健康・体育課長 性に関する指導の実践について。性に関する指導は、全ての学校において、学習指導要領に基づき、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動を取れるようにすることを目的に実施している。
指導に当たっては、体育科や保健体育科はもとより、学校の教育活動全体を通じて、教科等横断的に指導することが大切であり、指導の過程において、人権の尊重はもとより、自他の健康に対する責任感、良好な人間関係など、人間尊重の精神に基づいて行われている。
なお、道教委において、性に関する指導について、予算を伴う事業等は実施していない。
Q菊地委員 道教委が平成19年3月に策定した「学校における性教育を進めるために」という性教育指導文書には、生命尊重、人間尊重などの文言は明記されているが、人権という言葉は存在していない。
また、男女平等の精神に基づく正しい異性観、男女の人間関係など、性の在り方があたかも男女のみであるかのような記述が「学校における性教育の基本的な考え方」で明記されている。
この指導文書は、現在使用されていないとのことだが、こうした記述を道教委として不十分、不適切と認識しているのか伺う。
A今村健康・体育課長 道教委が作成した指導資料について。本指導資料は、各学校において、教職員の共通理解のもと、充実した取組が進められるよう、道教委が、学識経験者や道内の養護教諭等に執筆を依頼し、性教育指導資料および保護者用資料として、平成19年3月に発行したものである。
本資料は、発行からおよそ15年が経過し、その間、社会の変化や学習指導要領の改訂などによって、記載が現行の指導内容と異なることから、現在は使用しておらず、各学校においては、現行の学習指導要領に対応した文科省が発行する「改訂“生きる力”を育む保健教育の手引」を活用するなどして、児童生徒の実態に応じた性に関する指導を実践しているところである。
Q菊地委員 道教委は、平成14年度から令和2年度まで、性教育研究協議会兼薬物乱用防止教育研究協議会を年1回開催してきた。しかし、令和3年度から隔年開催に変更された。
性教育は、健康教育推進研修会の一部として実施するとされているが、性教育の位置付けが後退したと受け止めざるを得ない。
より性教育の必要性や関心が高まっている中で、性教育を全体の一部として捉えるのではなく、より積極的な開催を再検討すべきではないか。
A今村健康・体育課長 性の指導に関する研修について。今日の児童生徒には、肥満や生活習慣の乱れ、アレルギー疾患の増加、性に関する問題など、多様な健康課題が生じていることから、各学校においては、全ての教職員が連携しながら、教育活動全体を通じて、課題解決に取り組むことが重要である。
このため、道教委では、多様化する健康課題等に対応するため、令和3年度から開催している健康教育推進研修会において、複数の課題からその時々で重点的に取り扱う健康課題を設定しているが、性に関する指導については、少なくとも2年に1度は取り上げることとしており、3年度は、警察職員を講師として招き、SNSに起因する性や薬物の問題に関する講義を行うほか、中学校の養護教諭による実践発表を行い、その成果の普及に努めたところである。
なお、本研修会で、感染症対策やアレルギー対応等を主要なテーマとした場合であっても、行政説明や協議等の場面において、性に関する指導の観点も取り入れながら実施することとしており、道教委としては、引き続き、性に関する指導の充実を含め、児童生徒の健康教育の一層の充実に取り組んでいく。
Q菊地委員 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が発表した国際セクシュアリティ教育ガイダンスは、包括的性教育のあるべき姿を示した国際的指針として、現在、大変注目されてる。
同ガイダンスの内容を伺うとともに、道教委としてどう認識しているのか伺う。
A今村健康・体育課長 国際セクシュアリティ教育ガイダンスについて。ユネスコによると、国際セクシュアリティ教育ガイダンスとは、健康と福祉を促進し、人権とジェンダー平等を尊重し、子どもや若者が健康で安全で生産的な生活を送る力を与えるための質の高い包括的なセクシュアリティ教育を提唱するものであると承知している。
道教委としては、性に関する指導は、人権の尊重はもとより、自他の健康に対する責任感、良好な人間関係など、人間尊重の精神に基づくことが重要と認識をしており、全ての学校において、体育科、保健体育科、特別活動をはじめとして、教育活動全体を通じて行うことが大切であると考えている。
A菊地委員 現行の学習指導要領では、妊娠の経過は取り扱わないなどと学習を制限する、いわゆる歯止め規定があり、包括的性教育の推進に背を向けている。
学習指導要領は、各学校で教育課程を編成する際の基準である一方、大まかな教育内容であること、地域や学校の実態に応じて教育課程を編成することができ、学校において特に必要がある場合は、学習指導要領に示していない内容を加えて指導することができると総則に示されている。
また、その他、特に必要な教科を選択教科として設けることができるとある。つまり、包括的性教育の授業も設けることが可能だ。
中学生において、性交や避妊、中絶等に関する学習をすることは、現行の学習指導要領のもとでも何ら問題なく、極めて重要な学習課題であると考えるが、見解を伺う。
A中澤指導担当局長兼新型コロナウイルス感染症対策担当局長 性に関する指導の内容について。学習指導要領においては、例えば、中学校の保健体育科の保健分野において、思春期には内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟すること、また、成熟に伴う変化に対応した適切な行動が必要となることについて指導することとされている。
その内容については、妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精、妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとするとされている。
この趣旨については、性に関する指導に当たって、発展的な内容を教えてはならないという趣旨ではなく、個々の生徒間で発達段階の差異が大きいことなどから、全ての生徒に共通に指導するべき事項ではないとされているものであり、道教委としては、こうした学習指導要領の趣旨に基づき、各学校が一人ひとりの児童生徒の発達段階や負担過重に配慮しつつ、教育活動全体を通じて指導の充実を図ることが重要と考えている。
Q菊地委員 性教育は、人権教育と明確に位置付け、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを道教委自身がよく研究し、教育実践に生かす立場で取り組むべきではないかと考えるが、教育長の所見を伺う。
A倉本教育長 性に関する指導の充実について。各学校では、性に関して、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じて、教育活動全体を通じて指導している。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスなど、包括的性教育については、現在、国会等でも活発に議論が行われていると承知しており、道教委としては、引き続き、その推移を注視するとともに、性に関する指導が、道徳教育や人権教育などとも関連を図りながら、教科等横断的に指導を行うことによって、児童生徒が性や人権などを正しく理解し、適切な行動を取ることができるよう、健康教育推進研修会など各種研修会の場を活用するなどして、引き続き、各学校への指導の充実に努めていく。
(道議会 2023-05-19付)
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