函館市5年度教育行政執行方針 不登校生徒支援へ 非常勤講師を配置 縄文世界遺産センター誘致
(市町村 2023-07-06付)

函館市藤井壽夫
藤井教育長

 【函館発】函館市教委の藤井壽夫教育長は6月28日の第2回定例市議会で教育行政執行方針を説明した。いじめ・不登校対応では、市内小学校に対するスクールカウンセラーの派遣や市内中学校で広がっている「校内サポートルーム」に不登校生徒支援非常勤講師を新たに配置。社会教育では、道が設置する縄文世界遺産センターの誘致に取り組む方針を示した。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

▼変化する社会を生きる力の育成

 子ども一人ひとりが、変化する社会の中で主体的に生き抜くことができるよう、確かな学力、豊かな心、健やかな体を育むことが重要。学校運営力の向上を図る各種人材を配置するなど、きめ細かな指導体制の整備を行うとともに、学習用端末の活用を進めることにより「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進する。

また、保護者の経済的な負担の軽減を図るなど、将来を担う子どもたちが健やかに成長でき、安心して教育を受けることのできる学びの環境を整える。

 小学校においては、少人数指導の充実や教科担任制の導入を推進するため、算数科および理科の非常勤講師を配置する。

 円滑な学級運営を行うことが困難となっている小学校に対し、児童が落ち着いた環境で学ぶことができるよう、日常的な学習指導や生徒指導を補助する非常勤講師の配置を拡充する。

 中学校においては、免許外指導の改善を図るための非常勤講師を配置する。

 外国語教育については、外国語指導助手や外国語活動サポーターの活用、教員研修の実施により、その充実を図る。

 学びの質を向上することができるよう、大型ディスプレーを含むICT機器などを最大限活用するとともに、教員の研修や専門的な技術を有する支援員の派遣などを行う「ICTサポートセンター」を継続設置する。

 中学校においては、個々の習熟の程度に応じた学習を充実するため、デジタルAIドリルを引き続き活用する。情報モラルを含む情報活用能力の育成に努めるなど、児童生徒がより高度な情報化社会にも対応できるよう、学習活動の充実を図る。

 学校図書館については、学校司書の活用や図書整備率の向上によって、読書環境や読書活動のさらなる充実を図るほか、全校に新聞を複数紙配備し、主体的な学びのサポートに努める。

 特別支援教育については、障がいの有無にかかわらず、全ての児童生徒が同じ場で共に学ぶことを追究するとともに、小・中学校に配置する支援員を増員し、巡回指導員やサポートチームを活用しながら学校全体で支援する体制を充実するほか、通常の学級に在籍する学習面や生活面において教育上特別な配慮を要する児童生徒を対象とした通級指導教室を設置し、児童生徒一人ひとりに対応したきめ細かな支援を行う。

 いじめの対応については、いじめはどの学校にも誰にでも起こり得るものとの認識に立ち「市いじめ防止基本方針」に基づき、学校、家庭、地域、関係機関などと緊密に連携し、未然防止と早期発見、早期対応に組織的に取り組む。

 不登校の対応については、児童生徒一人ひとりの状態に応じた多様な支援を行うため、これまでの中学校に加え、小学校へのスクールカウンセラーの派遣により、児童生徒の相談体制を充実するとともに、保護者等への支援・相談を行うスクールソーシャルワーカーの活用に努める。

 「登校することはできるが、所属教室に入ることができない生徒」を対象に、学校独自の取組として設置が広がってきた「校内サポートルーム」に不登校生徒支援非常勤講師を新たに配置。適応指導教室と相談指導学級を統合した「サポートベース函館」を南北海道教育センター内に新設し「外出はできるが登校ができない児童生徒」の社会的自立に向けた支援を行うほか、フリースクールなどとの連携を推進する。

 このほか、ICTを活用した計画的な学習活動を行えるよう支援の充実を図るなど、児童生徒が抱える諸問題の解決に向けて組織的に取り組む。

 いじめや不登校など、複雑化・多様化する児童生徒一人ひとりの問題への対応を図るため、教員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、こころの相談員などの研修の充実による資質・能力の向上を図る。

 日本語指導が必要な児童生徒については、早期に学校生活に適応できるよう支援員を活用し、基礎的な日本語の習得や授業の理解を支援する。 

 さらに、児童生徒一人ひとりが、自分を大切にするとともに、多様性を認め合い他者を尊重することができるよう、がん教育や命を守る教育、性に関する教育などを実施する。

 学校給食については、物価高騰が続く中、保護者の負担を増やすことなく、栄養バランスの良い給食を提供するため、給食食材購入費の支援を継続する。「市学校給食基本方針」に基づき、より安全で安心な給食を提供するため、衛生管理をさらに徹底するとともに、郷土の食材や食文化への関心を高めるため、函館産や近郊産の農水産物の使用に努めるほか、計画的に学校給食設備の更新を進める。

 安全に関する教育の推進については、地域や学校の実態に即した実効性のある危機管理マニュアルに基づき、災害や危機事象の発生時等に適切に対応できるよう備えるとともに、児童生徒の通学の安全を確保するため、地域や家庭、関係機関と連携し、通学路の見守り活動や点検・整備を行う。地震など危険発生等に自ら正しく判断し、身を守る行動が取れるよう、児童生徒の発達の段階に応じた安全教育を推進する。

 就学援助については、対象者の拡大や支給費目の拡充を図る。

▼地域とともにある学校づくりの推進

 全ての市立学校に導入したコミュニティ・スクールを通じて、保護者や地域と連携した特色ある様々な取組を促進する。

 地域と学校をつなぐパイプ役として地域コーディネーターの配置を拡充するなど、地域学校協働活動の充実を図る。

 また、幼児教育から小学校教育、小学校教育から中学校教育への円滑な接続を図るため、教職員や園児・児童・生徒の交流、就学・進学に向けた情報や目指す子ども像の共有などに取り組む。

 学校における働き方改革については、引き続き、教職員の勤務実態などを把握するとともに、校務支援システムを活用した校務の情報化や、外部人材の配置による学校運営体制の充実を図るなど、組織としての業務改善を進め、教員と児童生徒が向き合う時間の確保に努める。

 部活動については、市の子どもたちが、少子化の中でも将来にわたりスポーツや文化芸術活動に親しむ機会を確保できるよう、新たに関係団体等で構成する協議会を立ち上げ、部活動の地域移行に向けた検討を進める。

 教職員の資質・能力の向上については、南北海道教育センターにおける研修も含め、その内容を幅広く充実するとともに、指導主事等が学校からの要望に応じて行う訪問研修を実施する。

 学校再編については、4月に「南茅部中学校」を開校した。今後も、子どもたちにとってより望ましい教育環境を整備する観点から学校再編を検討していく。

 市立函館高校については、進学重視型の普通科単位制高校として、創意ある教育課程を編成し、地域に学び、地域で学ぶ「函館学」を実施するなど、魅力ある高校づくりを推進する。

▼函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成

 小学校でデジタル社会科副読本を活用するほか、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の垣ノ島遺跡や大船遺跡、縄文文化交流センターを見学するなどの郷土学習を実施し、歴史や文化、自然など、函館の良さを感じることのできる教育活動を推進する。

 また、豊かな国際感覚を育む教育活動を推進するため、外国語指導助手を活用したコミュニケーション能力の育成を図る学習の充実のほか、市立函館高の生徒を対象とした海外留学事業を実施する。

 このほか、コロナ禍において中止した2年度の成人祭の代替行事を開催し、生まれ育った函館に愛着と誇りを持ってもらうとともに、あらためて大人の自覚を持ち、未来に向かって前向きに歩む力を得る機会を提供する。

▼生きがいを創り出す生涯学習の推進

 家庭教育や子育てに関するセミナーを開催するほか、高齢者大学を開設するとともに、各種市民活動団体等との連携のもと、様々な学習活動を促進する。これらの情報を提供するため、学習情報誌「まなびっと広場」を発行。社会教育施設やスポーツ施設、学校を市民の学習活動の場として提供し、幅広い世代の市民が主体的に学ぶことができる機会の確保や学習の成果を生かすことのできる環境の充実を図る。

▼心の豊かさを育む文化芸術の振興

 青少年の優れた作品などの発表の機会である「市青少年芸術教育奨励事業」や、小・中学校に芸術家等を派遣し、児童生徒が文化芸術に触れる場を提供する「文化芸術アウトリーチ事業」などを実施する。

 関係団体と連携した「はこだてカルチャーナイト」や「市民文化祭」の開催、市民の自主的な文化活動である「はこだて国際民俗芸術祭」への支援のほか、新たな支援制度を創設するなど、より一層市民の文化芸術活動の促進を図る。

 また、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の拠点施設として北海道が設置する縄文世界遺産センターの誘致に取り組む。

 垣ノ島遺跡においては、縄文文化の理解を深めるデジタルコンテンツの運用や遺跡見学などの案内窓口の新設、大船遺跡においては、3月に新設した駐車場からの散策路の整備など、遺跡の活用および受け入れ体制の充実に努める。

 博物館については、常設展に加え、企画展を開催するなど、市民や観光客が函館の歴史への理解を深める取組を推進するほか、仮称・総合ミュージアムの整備に向けた検討を進める。

▼健やかな心身を育む運動やスポーツの振興

 はこだて市民健幸大学実行委員会に参画し、パラスポーツやニュースポーツ、アーバンスポーツの体験会や栄養バランスの良い食事の講演会を開催するなど、スポーツ・レクリエーション活動の一層の推進を図る。アーバンスポーツ等の普及・振興に向けた検討を始める。

 このほか、36年ぶりの北海道開催となる全国高校総合体育大会について、市でハンドボールと自転車競技の2競技を開催する。

 また、市スポーツ協会や各種スポーツ団体等と連携した競技大会の開催やスポーツ合宿および大会の誘致を通じて、競技人口の拡大や競技力の向上に努めるほか、市民のスポーツへの関心を高めるため、フットサルやバレーボールなどのスポーツイベントの誘致に努める。

 さらに、千代台公園陸上競技場については、日本陸上競技連盟の公認大会の開催要件となる2種公認に必要な施設改修や大会運営システムの更新を行う。

(市町村 2023-07-06付)

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