道高教組・道教組が声明 民意反映した指針策定を 高・特配置計画決定受け
(関係団体 2023-09-14付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(中村哲也執行委員長)は、道教委が示した2024~26年度における公立高校配置計画および24年度公立特別支援学校配置計画に対する声明を発表した。「数の論理のみで決められる募集停止」の撤回や「同一学区内で最大8学級、最小2学級という極端な学校間格差」の改善を要請。道教委が策定した指針改定版に基づく配置計画では募集停止や学級削減が進み「地学協働の推進さえも失われ、地域は疲弊する」と断じた。その上で、本道の実態を踏まえた現実的な少人数学級への転換・実現など、多くの道民の意見を反映した指針の策定を強く求めた。 

 道教委は5日、公立高等学校配置計画(2024~26年度、以下、高校配置計画)と24年度の公立特別支援学校配置計画(以下、特別支援学校配置計画)を発表した。

 今回の高校配置計画は、6月6日に発表した高校配置計画案と同様に40人学級で計算された数の論理で学校・学級を削減するものであり、小学校から進んでいる35人学級の流れを全く考慮せず、地域の高校を大切にしてほしいという道民の願いとはかけ離れていると言わざるを得ない。

▼募集停止を撤回し、拙速な再編統合は見直すべき

 この間、各地域で2回にわたる地域別検討協議会を開催し、その場では多くの自治体から、ことし改定した「これからの高校づくりに関する指針」(以下、指針)における「望ましい学校規模」の削除を歓迎し、小規模校の存続および少人数学級の実施を求める声が上がっている。また、多くの高校から地域に根付いた教育実践やその学校の歴史と伝統が語られた。

 今回、26年度で募集停止が決定された奈井江商業高校は「教師の目が届きやすい小規模校は中学時代に挫折した生徒がやり直せる場でもある」(校長談)と、これまで小規模校としての役割を大いに果たしてきていた。そうした学校の募集停止は、その子どもたちを切り捨てることとなり、進路選択の幅を狭めることになる。

 また、遠距離通学によって経済的、精神的、身体的負担が増すことについて、道教委は主に通学費補助によって教育の機会均等を保障しているとの立場を取っているが、道内では採算面だけではなく運転手が確保できずにバス路線が廃止に追い込まれたり、委託していたスクールバス運行業者が倒産したりするといった事例も生まれており、現実にこれ以上地域に唯一存在する高校の募集停止や特別支援学校の寄宿舎を廃止することは、通学手段を失い教育の機会均等が保障できなくなることが懸念される。

 岩見沢市内や富良野市内のそれぞれ2校の再編統合は、それぞれの市による要望を道教委が受け入れた形で発表されたものであるが、統合年度に卒業生となる現在の1年生や保護者、中学生には丁寧な説明が必要である。統合まで1年半となった現在、ようやく岩見沢新設校で普通科新学科のクラス数や単位制の導入、富良野新設校においては学科が発表されるに至った状態である。

 25年の統合年度に卒業生となる現在の1年生は、富良野新設校では両校生徒が同じ校舎に入る方向性が示されているが、岩見沢新設校では予定が示されておらず、入学した高校と卒業した高校が違う学校になりはしないかと不安を感じている生徒や保護者が少なからずおり、十分な理解を得るには25年度の統合は拙速だと言わざるを得ない。

 地域の要望や在校生たちの意向を無視し、数の論理のみで決められる募集停止は撤回し、拙速な再編統合は見直すべきである。

▼現場を混乱させる年度当初の学級減はやめ、少人数学級を進めよ

 今回の配置計画では2次募集後に40人以上の欠員があるとして学級減とした18校のうち14校14学級を元に戻す措置をとった。年度当初の突然の学級減は教職員数の減少や予算措置の変更など、教育条件が大きく低下することとなり、学校運営や教育課程にも影響することから学校は常にその影に脅かされている。成り行きまかせの適正配置計画でなく、入学者数に関わらず配置計画で示した学級数を維持して欠員がある高校から先行して35人学級にするべきである。

 とりわけ生徒数が多く競争が激しい石狩学区での矛盾が際立っている。19~23年度の配置計画では、学級減数は19学級だったものが、2次募集後の学級減を加えると44学級となり、配置計画の倍以上の学級減の強行となっている。道教委は「学区の厳しい競争環境によって生じた結果として重視している」と説明しているが、厳しい競争環境を肯定し、一層の競争激化を招くものとして絶対に容認できない。同一学区内で最大8学級から最小は2学級という極端な学校間格差は早急に改善すべきである。

▼必要な財源確保をし、教室不足を解消せよ

 特別支援学校配置計画では、6月に示された計画案から定員増となっているが、校舎の狭あい化が放置され、施設設備が改善される見込みがないままに入学者を受け入れざるを得ない現状においては生徒が安全な環境で安心して十分な学習をすることを保障できず、これは教育行政の不作為による障害のある子どもたちへの人権侵害にほかならない。

 一昨年に制定された特別支援学校設置基準は、「児童・生徒数の上限」「備えるべき特別教室などの施設・設備」「通学時間の上限」が規定されないなど、教室不足解消と教育環境改善という制定の趣旨に照らすとあまりに不十分と言わざるを得ないものであった。とはいえ、設置基準は、そこで学ぶ子どもたちの教育条件改善の足がかりにしなければならず、とりわけ教室不足解消は喫緊の課題である。

 しかし今回の特別支援学校配置計画では、高等部の学級数の増減は示されているものの、小中学部も含めた教室不足解消に関する計画について一切触れられていない。設置基準公布の際、文部科学省は各教委に対して教室不足解消の計画、いわゆる「集中取組計画」の策定を行うことを要請しており、教室不足に関する文科省調査(22年3月公表)に対し道教委は「計画有り」と報告しているが、実態として具体的なものは何ら示されておらず、集中取組計画も踏まえた配置計画を早急に策定すべきである。

 昨年の道内特別支援学校において「児童生徒の増加に伴う一時的な対応をしている教室数」は143教室で、特別教室の転用、教室の間仕切りなど工夫して対応しているという実態が明らかとなった。しかも調査時点(21年10月調査)で、24年度までに教室不足の解消が計画されているのが2教室にとどまるなど、問題が放置されていると言っても過言ではない。

 道教委は、今後の見通しとして「既存施設等の活用による対応を検討」と、これまでと変わらない配置計画の方針を示しているが、「既存施設への詰め込み」はやめ、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきだ。この後も当事者の声、学校の実態をよく踏まえ、特別支援学校の過大・過密の解消、小中学部も含めた教室不足解消の道筋を明らかにするとともに、狭あい化・教室不足が深刻な自治体との連携を図りつつ、それらの早急な実行を強く求めるものである。

 また、特別支援学校の寄宿舎の統合や廃止も見過ごせない問題である。広大な北海道では毎日の通学が現実的でない地域も多く、寄宿舎の存続は教育権保障の要である。札幌圏の義務・高等部併置の知的障害特別支援学校は、全校から寄宿舎がなくなったため、家庭事情や発達課題などから寄宿舎教育を希望する場合は遠く離れた学校を選択するしかない現状がある。

 これが「身近な地域で専門的な教育を受けられる特別支援教育」の現実である。これを打破し、寄宿舎の再建を進めていくことこそ、本来の特別支援教育のあるべき道である。

▼少人数学級こそ大きな希望

 23年度の道内188校の公立高校のうち、1学年1学級の学校は62校である。今後、27年度以降の中卒者もより一層減少する状況が続き、指針改定版に基づいた配置計画では募集停止や学級削減など子どもたちの教育を受ける権利が脅かされる事態がさらに進んでいくことになる。これでは道教委が推し進めてきた「地学協働の推進」さえも失われ、地域は疲弊するばかりであろう。

 地域別検討協議会では、訓子府町長から道教委に対して「人口減少が著しい北海道で、高校配置の在り方をどのようにしていくのか鈴木直道知事の見解を聞いてほしい」との要望が上がった。まさに今求められていることは、道教委として学級定員の縮減を知事に要望し、鈴木知事に道独自の少人数学級への決断を求めることである。

 北海道の教育をどのように構想するのか。そもそも多くの地域に高校がなくなっては道教委が進める「地域との連携・協働」の基盤を掘り崩すことになる。募集停止の基準を撤廃し、高校配置はどうあるべきか、多くの地域の道民の意見を反映した指針を策定する責務が道教委にはある。

 私たちは、これまでも教育効果の観点から小規模校や少人数学級の優位性を訴えてきたが、この状況において、ゆきとどいた教育ができる少人数学級は大きな希望である。

 小学校では35人学級が進んでおり、高校配置計画も、その流れに即したものとなるよう、例えば、1学年1学級の高校は、道独自で20人学級とする、定員を割った学校から先行して35人学級にするなど本道の実態を踏まえた現実的な少人数学級への転換が求められている。

 私たちは、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化、特別支援学校の狭あい化・過大過密化の解消などを求める「教育全国署名」に全力で取り組むとともに、「ゆきとどいた教育」を求める共同を一層広げ、大きく運動を進めていく決意である。

(関係団体 2023-09-14付)

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