道徳研修講座でマイスター授業公開 価値に向かう問い返し 釧路市教委 新陽小・三守教諭
(市町村 2023-11-08付)

道徳授業公開三守絢子教諭
道徳科を指導する三守教諭

 【釧路発】釧路市教委は10月31日、釧路市立新陽小学校(福田由美子校長)で研修講座「道徳科教育の充実~マイスターの授業公開」を開催した。市内や管内の小・中学校、義務教育学校から68人が参加。本年度認定された授業マイスターによる授業公開や研究協議を通して、道徳科における課題について把握し、今求められる授業の在り方の研修を深めた。

 市教委は、ことし授業マイスターに認定された2人による研修講座(授業公開)2講座と、前年度授業マイスターに認定された6人の「授業マイスターに学ぼう」(市の授業力向上事業の一環)6講座を開設。教員全体の指導力向上を目的に7月~来年1月にかけて実施している。 

 このうち、研修講座「マイスターの授業公開」は、ことし授業マイスターに認定された2人が担当。7月には鳥取西中学校の細野歩教諭が3年生社会科「個人を尊重する日本国憲法」で授業公開している。

 この日、新陽小の三守絢子教諭が5年1組で道徳科の授業を公開。教材「森の絵」を活用し「自分の役割を考えて」の内容項目について考えを深めた。

 本時のねらいを「えり子さんの心の変化について話し合うことを通して、クラスや学校で役割を果たす時に大切な心に気づき、自分の役割を自覚しながらみんなで協力し合ってよりよいクラスや学校をつくろうとする実践意欲を高める」と設定した。

 はじめに「やりたくない役割をやることになった経験は?」という事前アンケートから、その時の心情を想起。役割に取り組むときの心について話し合ったあと、資料のえり子さんの役割に対する考えを交流した。えり子さんの心の変化を確認した上で「なぜ、えり子さんの心は変わったのだろう」というねらいを提示した。 

 子どもたちは、心情の変化の理由をボードに書き込み、それぞれの考えの共通点や相違点を見つけ、黒板にまとめた。

 板書をもとに「人が頑張っていたら、どうして自分も頑張ろうと思う?」「誰かがやらなきゃというのは、仕方なくやっているの?」「誰かは自分でもいいの?」など、子どもたちの考えに対する問い返しを続けることで、問題を自分事として捉えるとともに、自分の経験とも照らし合わせた。

 学習の振り返りでは「自分の仕事がみんなのためになると思って頑張る」「苦手なことでも友達と協力して取り組みたい」などといった意見が出され、より良い学校生活や集団生活の充実に努めることの大切さに気付いた。 

 授業後、体育館で行われた研究協議では、授業者から授業のポイントや課題などの説明が行われたあと、参加者は12グループに分かれ協議に入った。

 参加者からは「問い返しの粘り強さがすごい。マイナスの考えを問い返すことでプラスの考えに発展していった」「クラスの雰囲気がとても良く、自分の考えを自由に話せる。子どもたちが自分たちの言葉でまとめていた」などといった意見が聞かれた。

 鳥取西小学校の五十嵐結子教諭は「子どもたちとの良好な信頼関係のもと、たくさんの問い返しが、ねらいとする価値に近づき、深い学びにつながっていると感じた」と話した。 

 助言に立った道教育大学釧路校の星裕准教授は、多様な方法を取り入れた指導が大切であるとした上で「価値観・指導観・教材観」について解説。これらを指導案に明確に示すことで、授業で何をねらっているかが見えてくると強調した。きょうの授業では、ねらいが具体的に示されていたことで、学習の中心内容や学習活動がより明らかになり、多様な指導方法の工夫も見られたと評価。

 さらに、価値に向かう問い返しが重要であるとし、事前にどういう問い返しをするのかを準備しておくこともポイントとした。何回も問い返すことで、多面的・多角的に考え、道徳的価値を深めることにつながるとし、今後の道徳科の授業改善に期待を寄せた。

(市町村 2023-11-08付)

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