少年の主張宗谷地区大会 “かわいそう”は無責任 礼文香深中3年・光枝さん(道・道教委 2024-08-08付)
【稚内発】宗谷総合振興局が主催する6年度少年の主張宗谷地区大会が7月26日、宗谷合同庁舎で開催された。管内市町村から9人の生徒が登壇。日常生活での体験や自身の考えなどを発表した。最優秀賞には、礼文町立香深中学校の光枝美優さん(3年)=写真=の「〝かわいそう〟は無責任」が選ばれた。光枝さんは、幼少期から母子家庭で育ってきた家庭環境に対し、友人や他者から「かわいそう」と言われることに疑問を感じていた。多くの人が母子家庭を「かわいそう」な境遇として捉えていることについて、自身の考えを伝えた上で「私は、ひとり親家庭に対する〝かわいそう〟という意見が改善され、どんな家庭でも理解してくれる社会に変えていきたいです」と力強く訴えかけた。
皆さんは、ひとり親家庭、いわゆる母子家庭、父子家庭にどのようなイメージを持っていますか?「かわいそう」だと思っていませんか?
私は2歳の頃から母子家庭で育ちました。小学生の時、友達と話している時に父親の性格を聞かれたことがあり、とっさに「お父さんいないんだ」と答えました。すると、友達に。「そうだったんだ。なんかごめんね」と言われました。他の友達にも「かわいそうだね」と言われました。その言葉が私の中で引っかかっていました。なぜなら、私が他人に「かわいそう」と思われる存在だということに気付いたからです。私は「かわいそう」という言葉で少なからず傷つきました。そして、父親が一人いない家庭で育ったというだけの子どもが「かわいそう」と思われることに疑問を持ちました。
ではなぜ、母子家庭に「かわいそう」というイメージがついてしまったのでしょう。インターネットで調べるといくつかの理由が分かりました。
一つ目は、父と母が二人そろっている家庭が一般的という考えが染みついているからです。二つ目は、父親がいないため、経済的に厳しいという決めつけがあるからです。
一つ目については、夫婦と未婚の子のみの世帯における、約11%がひとり親家庭であるということが分かっています。また、このグラフを見ると、年々夫婦と未婚の子のみの世帯は減少傾向にあるのに対し、ひとり親と未婚の子のみの世帯の割合は増加傾向にあることが分かります。その上、今は様々な家庭のかたちも認められる、多様性の時代です。これらのことから「かわいそう」といったイメージを持つのは、少し古いような考えだと感じませんか?
二つ目については、ひとり親家庭の児童のために、地方自治体から支給される児童扶養手当や、母子家庭向けに家賃の一部を補助する住宅手当が出ています。これらのほかにも医療費助成やコロナ渦でのひとり親世帯臨時特別給付金など、国や自治体からの手当が多く存在しています。これらの二つのことから母子家庭だからといってみんなが不幸せであり「かわいそう」だと思われる存在ではないことが言えます。裏を返すと、両親がそろっている家庭だからと言って、必ずしも幸せかというと、そうではないですよね。
実際に、私以外に母子家庭で育った方の考えを知りたくて体験談を調べると「父親がいないこともあり、二人で頑張ってきたので、小さい時から友達関係のモヤモヤを気兼ねなく相談できました」「同じ女同士ということもあり、恋愛の話や他愛もない話などができ、母とは友達のような関係でした」など、私の感じてきたことと同じ考えを持つ人たちの話に出会うことができました。
私も、部活でキャプテンをしていて、後輩をどういう風に引っ張っていくか悩んでいたことがありました。その時、母が「みんなと一回話した方がいいんじゃない?みうが動かないと何も始まらないよ」と、強く背中を押してくれました。私は、気兼ねなく相談できる家庭環境に助けられたのです。
マイナスなイメージを持たれがちなひとり親家庭には、ひとり親家庭の良さがあることが分かります。私も母子家庭で育ちましたが自分の家庭が「かわいそう」だと思ったことは一度もありません。それは、私にたくさんの愛情を注いでくれた母親や、母親のことを理解してくれた周りの方々のおかげもあります。ひとり親家庭に必要なのは「かわいそう」というイメージを持つことではなく、周りの人が何か自分にできることはないか考え、行動することだと私は思います。私は、ひとり親家庭に対する「かわいそう」という意見が改善され、どんな家庭でも理解してくれる社会に変えていきたいです。
「かわいそう」に責任をもって。
(道・道教委 2024-08-08付)
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