新設校の挑戦に期待 地域の実情に合った教育へ(学校 2024-09-17付)
地域の期待を背負った岩見沢市内新設校の開校が、来春に迫っている。国の普通科改革に基づき、学際的な学びや地域社会に関する学びなど、地元の実情に合わせた特色ある教育が始まろうとしている。
文理探究科では、3年次に卒業論文を課す。背景には、大学側の「学生の記述力低下」を指摘する声がある。全国学力・学習状況調査の結果をみると、小中共に国語において「自分の考えを伝えるための書き表し方の工夫」「必要な情報を取り出すことや表現の効果を考えること」などに依然として課題があることが明らかになっている。
道教委によると「道内公立高校で、個人探究として卒論を課す学校は極めて珍しい」という。高校教育課の滝田尚誠課長補佐は「大学や、卒業後の学ぶ意欲につながっていくのでは」として、新設校の挑戦に大きな期待を寄せる。
今春、北海道大学の総合型選抜で2人が合格。全国の大学が総合型選抜や推薦入試の募集枠を増やす中、同校では着実に合格者を増やしており、探究学習に力を注いだ成果が実りつつある。
岩見沢東高校の渡辺淳一校長は「(探究学習で)調べたことを発表することがゴールではない」と強調する。「探究学習に取り組み、卒論を執筆することで、問いの発見・解決とともに、新たな価値を生む力を育成したい。それこそが、これからの社会に求められる資質・能力ではないか」と力を込める。
一方、単位制をみると、普通科・文理探究科共に2年次4単位、3年次21単位の履修を設ける。現段階で想定する70を超える選択群の中には、「造形」や読譜能力を養う「ソルフェージュ」など、特色ある科目が目につく。
これらは、岩見沢西高校が取り組んできた多様な進路志望に応じた進学重視型単位制の成果を継承するものだ。
今春には、東京芸術大学音楽学部に現役合格者を2人送り出した。卒業生の一人は「音楽の授業を多く開講しており、将来に必要な科目を少人数で集中的に取り組むことができた」と振り返る。自らの志望に合わせた科目を多く履修することで、音楽の練習時間が確保できたとして「将来の目標がはっきりしている生徒にとって、単位制は大きなメリット」と話す。
新設校には現在、単位制の授業数に対応するため、中庭に増築棟を建設する計画が進む。西高の伊勢一哉校長は「生徒が自ら選ぶカリキュラムには責任感が生まれる。目標に向かって真剣に取り組む高校生は、われわれの想像を超えるほどの成長を見せてくれる」と期待を寄せる。
新設校開校を巡っては、市内中卒者数の減少とともに、難関大学進学を目指す学力上位層の中学生が、札幌圏の高校に流出。事態を重く見た岩見沢市の関係者が、伝統校同士の再編統合に複雑な思いを抱きつつ、道教委に対し“前向きな”再編を求めたことが決め手となった。
7月に開かれた公立高校配置計画地域別検討協議会。空知南学区の関係者から「新設校は、道内でも先進事例になる」「地域と密着した魅力ある高校のため、子どもに寄り添った取組を」と期待する声が上がった。
近年、市内ではコンパクトなまちのメリットを生かした小中高大の連携を求める声が高まっているという。伊勢校長は「地元の子が地元で学べることが一番」として、地域のニーズに応える新設校を目指す。渡辺校長は「小・中学校で培った学びをどうつなげていくかが大切だ」と話し、地域に根差した学校として新たな一歩を踏み出す決意をにじませる。
(学校 2024-09-17付)
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