道議会質疑 予算特別委員会(7月2日) 
(道議会 2024-10-11付)

Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand

【質問者】

▼赤根広介委員(北海道結志会)

▼田中英樹委員(公明党)

【答弁者】

▼中島俊明教育長

▼山本純史学校教育監

▼伊賀治康総務政策局長

▼岸本亮高校配置・制度担当局長

▼山城宏一指導担当局長

▼齊藤順二生徒指導・学校安全担当局長

▼山口利之ICT教育推進局長

▼山﨑貴之法制・公務管理担当課長

▼髙田安利高校教育課長

▼手塚和貴高校配置・制度担当課長

▼大槻直広生徒指導・学校安全課長

▼北川慎太郎ICT教育推進課長

◆端末の更新

Q赤根委員 GIGAスクール構想の成果と課題について伺う。

A北川ICT教育推進課長 これまでの取組の成果等について。3年度から本格的な活用が始まった小・中学校の1人1台端末に関し、本道の小・中学校において、ICT機器を授業でほぼ毎日活用した学校の割合は全国平均を上回る約7割となる一方、教員の指導方法の理解不足や研修サポート体制の不十分さなどによって、活用が進んでいないケースも見られるところ。

 このため、道教委では、端末とクラウド環境を活用した教育実践の創出に取り組む国のリーディングDXスクール事業の実践事例や成果を全道の学校に普及するほか、全国教員研修プラットフォームにおける各教員のニーズに合った情報教育、プログラミング教育に関する研修コンテンツの活用の促進や、ICT活用ポータルサイトの情報発信を一層強化するなどして、教員のICT活用指導力の向上や授業改善の推進に取り組んでいるところである。

Q赤根委員 本年度は一般的に端末の更新が必要とされるタイミングで、つぎのステージに入るという意味で呼ばれているのがセカンドGIGAということだ。

 どのような内容で、道教委での対応はどのようになるのか伺う。

A山口ICT教育推進局長 1人1台端末の更新等について。国では、GIGAスクール構想の第2期を見据え、各都道府県に端末調達のための基金を設置し、支援を行うこととしたところであり、市町村の事務負担軽減や、スケールメリットによる端末、サービス等の調達、ランニングコストの低減などのため、原則として共同調達によることとされ、道教委では、国のガイドラインに基づき、全市町村教委の教育長をもって構成する共同調達会議を設置した。

 今後は、5年度までの間にGIGAスクール構想の実現に向けて実施してきた児童生徒向けの端末と通信ネットワークの整備や、これらを活用した学びの実践のための取組などの知見を踏まえて、各学校において、端末を活用した学習活動が一層促進されるよう取り組んでいく。

Q赤根委員 端末を活用した学習活動が一層促進されるとあったが、そのためのインフラとして必要になるのが通信環境である。

 国の調査によると、全授業で多数の児童生徒が同時に端末を活用する場合にも支障が生じないとする、文部科学省推奨の通信速度を満たしていたのは全体の2割にとどまるという結果が出ている。

 今後、デジタル教科書の本格的な導入や、全国学力・学習状況調査等のCBT化に当たって、学校のネットワークの環境は極めて重要になってくる。道内校の現状および今後の対応について伺う。

A山口ICT教育推進局長 学校のネットワーク環境について。文科省の調査によると、国が学校規模ごとに1校当たりの帯域の目安として設定した通信速度を満たす道内の公立学校は35・5%となっており、道教委では、この調査結果を踏まえて、各道立学校の通信速度等をあらためて調査しているところである。

 その結果に応じて、各学校のネットワーク環境改善に向けた対応策を検討することとしている。

 また、市町村教委に対しては、通信速度など、学校の通信ネットワークの現状を分析、診断する国庫補助事業の活用を促しており、今後も各市町村における小・中学校等のネットワーク環境改善の取組を支援していく。

Q赤根委員 全国的にはいち早くSINETを計画的に整備している地域などもある。道教委としても、まず、ここのインフラ整備は早急に取りかかっていかなければいけないところだと思う。計画的な整備を進めていただきたい。この点、重ねて所見を伺う。

A山口ICT教育推進局長 学校のネットワーク環境について。このたびの国の調査において、通信速度を満たす公立学校は全国平均で2割程度である。本道の35・5%は、全国の状況から見ると必ずしも低いものではないと考えているが、道教委としては、道立学校への調査、あるいは、小・中学校での国庫補助事業の活用などによって、可能な限り早期に通信ネットワーク環境の改善が図られるよう取り組んでいく。

Q赤根委員 ことし1月、文科省は「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改定し、地方自治体の情報セキュリティーポリシーとは別に、学校教育の現場もポリシーを定めるよう求めている。この対応状況を伺う。

A北川ICT教育推進課長 情報セキュリティー対策について。学校には、児童生徒の指導要録や生徒指導に関する記録など重要性の高い個人情報が数多く保管されていることから、文科省では、都道府県教委等に対し、学校教育独自の教育情報セキュリティーポリシーを定めるよう求めている。

 道教委では、道庁とは別に、道教委事務局や道立学校に適用する情報セキュリティー基本方針と情報セキュリティーに関する対策基準を定め、各道立学校に対し、個人情報を含む電子データの取り扱いを具体的に示すなど、情報セキュリティー対策の徹底について指導しており、また、市町村教委に対しては、国のガイドラインを踏まえたセキュリティーポリシーの策定や随時の見直しなど、学校における情報セキュリティー対策の実効性担保に向けた取組を進めるよう助言しているところである。

Q赤根委員 学校教育情報化推進計画では、不登校の児童生徒に対し、オンラインによる学習指導や教育相談を実施している小・中・高校の割合において、小・中は目標値を90%としている。

 なぜここを100%としないのか、その理由を伺う。

 また、不登校支援として、ICTを活用したメタバースを活用した居場所づくりやフリースクールとの連携強化などが考えられるが、この点、認識を伺う。

A齊藤生徒指導・学校安全担当局長 不登校児童生徒への支援について。国の調査によると、4年度に道内の不登校児童生徒数の約20%が市町村の教育支援センターなどにおいて相談、指導等を受けていることが明らかとなっており、そうした児童生徒は対面で指導を受けていることから、目標値を90%としたところである。

 道教委では、不登校児童生徒への支援に当たっては、登校のみを目標にするのではなく、社会的自立を目指していけるよう、一人ひとりの状況に応じて多様で適切な教育機会を確保することが重要であると考えており、教育支援センターやフリースクールなどとの連携に加え、国において、メタバースの活用を実践事例を踏まえて研究するとしていることから、こうした様々な方法を組み合わせながらきめ細かな学習支援等が展開されるよう、学校や市町村教委の実情に応じて指導助言し、不登校児童生徒の学びの充実に努めていく。

P赤根委員 児童生徒の状況は、毎年度変わる。ぜひ努力をして、どんな状況であっても、常にオンラインを使って児童生徒が相談、指導を受けられる体制というのをつくるべきだと強く指摘する。

Q赤根委員 セカンドGIGAを迎えるに当たって、ますます学校におけるICT化の活用は、重要度を増していくことは言うまでもない。

 こうした状況を迎えて、今後、学校教育の情報化の質の向上がより一層求められる。今後の取組について所見を伺う。

A山本学校教育監 今後の取組について。GIGAスクール構想によって、1人1台端末の活用が進み、また、生成AIの利用が社会に急速に普及する中、教育の質の向上を図るとともに、目指すべき次世代の学校・教育現場を見据えた上で、最先端の技術や教育データの効果的な利活用を推進する必要がある。

 このため、道教委では、ICTの特性や強みを生かし、端末を日常的に活用することで児童生徒自身がICTを新たなツールとして自由な発想で適切に活用できるようにすることが必要であるとの観点から、今後は、全ての学校が、端末活用の試行錯誤から日常化のフェーズに移行し、ICTのふだん使いによる教育活動の高度化が実現されるよう取り組んでいく。

P赤根委員 広域分散型で学校も点在をしている本道だからこそ、ICTの活用は、より高い価値を生みながら新たな可能性を見いだしていくことができる。引き続き、取組を強く求める。

◆教職員不祥事

Q赤根委員 過去5年間の教職員の懲戒処分の状況を伺う。

A山﨑法制・公務管理担当課長 過去5年間における教職員の懲戒処分について。札幌市を除く公立学校において、教職員の懲戒処分の件数は、元年度が78件、2年度が48件、3年度が66件、4年度が53件、5年度が89件となっている。

Q赤根委員 過去5年間のわいせつ事案の状況と発生要因をどう分析し、対応されているのか伺う。

A山﨑法制・公務管理担当課長 過去5年間のわいせつ事案の状況等について。札幌市を除く公立学校教職員のわいせつ事案で懲戒処分となった件数は、元年度が11件、2年度が3件、3年度が3件、4年度が4件、5年度が12件となっている。

 児童生徒に対するわいせつ事案の多くは、SNSなどを通じて児童生徒の心の問題や家庭環境などのプライベートな相談について、組織的な対応をせず、教員一人で抱え込んだ結果、児童生徒との距離感を誤り、親密な関係につながったことなどが要因ではないかと分析している。

Q赤根委員 国の調査では、性犯罪の9割に性犯罪の前科がないことから、未然防止の対策は重要と考える。

 道教委では、4年3月に、教職員による不祥事の未然防止に向けた対策を促進するため、児童生徒への接し方に関する指導など、7項目、17方策から成る「学校におけるわいせつ事故防止方策」を作成しているが、現場での実効性がいかに確保できるかが重要と考える。

 この方策に基づく取組状況をどう把握されているのか、成果や課題と併せて伺う。

A伊賀総務政策局長 わいせつ事故防止方策について。道教委では、わいせつ事故の防止に向け、各道立学校および札幌市を除く教育委員会に対し、全ての学校において、4年3月に作成した「学校におけるわいせつ事故防止方策」に基づき、わいせつ防止に係る研修の実施など、不祥事の根絶を図るための取組を求めてきているところ。

 5年度は、全ての学校において不祥事防止のためのチェックシートやわいせつ等に係る校内研修資料は活用されているものの、不祥事の未然防止や早期発見に向け、教職員が主体となって事故防止に係る研修を企画する校内委員会の設置については、5割の学校にとどまっている。

Q赤根委員 なぜ5割程度にとどまってしまっているのか、その要因について伺う。

A伊賀総務政策局長 校内委員会の設置について。既に設置している研修部などで教職員が主体的に事故防止に係る研修を企画している事例も想定されるが、今後、設置していない理由や、校内委員会以外に同様の目的を達成する取組の有無などについて、学校に状況を確認した上で対応を検討していく。

P赤根委員 しっかり精査した上で取組を充実させていかないと、再発防止、未然防止に向けた取組が徹底されているとは到底言い難い。

 各学校で取組が必ず行われるよう、あるいは、違う形で補完されているのであれば、それが徹底されるよう、しっかり取り組んでいただきたい。

Q赤根委員 性的被害の教育について。児童生徒の成長に合わせて、自分の人権を守るという視点においても、発達段階に応じた性的被害の教育は重要と考える。

 道教委としては、この点、どのように取り組んでいるのか伺う。

 また、同様に、保護者、さらには地域の方々に対しても、児童生徒の性的被害の未然防止の取組、こうしたことをしっかりと啓発していく必要があると考えるが、併せて伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 性被害の未然防止について。性暴力は、被害者の尊厳を傷つけ、心身に深刻な影響を与え、その後の生活に甚大な影響を与える場合が多いことから、学校において性に関する適切な指導を行うことは重要である。

 学校では、教育活動全体を通じて生命の貴さを学び、生命を大切にする教育や、自分や相手を尊重する教育を推進し、子どもの発達の段階に応じて、自分の身を守ることの重要性や、嫌なことをされたら訴えることの必要性、性犯罪の被害に遭わないための対応など、性暴力や性被害の予防および対処について学ぶ「生命(いのち)の安全教育」に全ての小・中・高校が取り組んでいる。

 また、子どもや若者を性暴力の当事者にしないための大学生・一般向けの資料として、文科省の「お互いの心と体を大切にするために~性暴力のない社会に向けて」を周知しているところであり、今後も引き続き、保護者や地域の方々も含めた理解啓発に努めていく。

Q赤根委員 不祥事の早期発見の対策として、スクールセクハラ等アンケート調査を実施していると承知している。

 また、児童生徒向けの相談窓口として、子ども相談支援センター等、相談窓口についての周知も図っていると承知している。

 こうしたアンケート調査や相談窓口への相談件数と内容、不祥事案の発見や未然防止につながった事例はあるのか、伺う。

 また、こうした調査や相談窓口が機能するよう、どのように取り組んでいるのか、併せて伺う。

A齊藤生徒指導・学校安全担当局長 相談実績などについて。道教委が毎年度実施している、体罰等に係る実態把握調査においては、教職員による児童生徒へのハラスメントなど、体罰以外の不適切な行為も報告の対象としており、前年度の調査における教職員による性的行為やセクハラで4件の報告があった。

 また、道内の児童生徒向け相談窓口のうち、道教委が所管している窓口の相談実績としては、5年度における相談件数が2774件で、内容は、多い順に、教職員との関係、友人関係、家庭環境であり、そのうち、教職員による児童生徒への不適切な行為の相談は1件で、相談内容を関係機関に情報提供し、速やかな対処を求めたところである。

 道教委では、児童生徒が利用しやすい相談方法を自ら選択できるよう、24時間受付の電話、メールによる相談窓口の設置に加え、3年度以降は、SNS相談窓口を利用できる生徒の対象拡大を図ってきたほか、4年度には、1人1台端末からアクセスできる相談窓口「おなやみポスト」を開設するなどしてきており、さらに、児童生徒一人ひとりに、小学校低学年用、高学年用、中学生用、高校生用の窓口紹介カードを配布して、相談体制が有効に機能するよう努めている。

Q赤根委員 「学校におけるわいせつ事故防止方策」では、児童生徒への接し方に関する指導として、SNS等による個人的なやり取りの禁止の徹底に取り組むとしている。

 その中で、教職員と児童生徒の連絡手段についての校内規程の整備を促進するとしているが、この校内規程の整備状況や内容がどうなっているのか、児童生徒への周知の取組状況と併せて伺う。

 また、教職員と児童生徒の間で、電話やSNS等による個人的なやり取りが確認された事案はあるのか、その場合の対応と併せて伺う。

A山﨑法制・公務管理担当課長 校内規程の整備状況などについて。道教委においては、平成27年3月に、職員と児童生徒との連絡等に伴う事故の防止に向け、各道立学校および札幌市を除く各市町村教委に対し、教職員と児童生徒との間でSNS等による私的な連絡を行わないなど、具体の事例を示した上で、職員と児童生徒の連絡手段に係る校内規程を整備するよう通知している。

 令和5年度に道教委が行った調査では、SNS等による教員と児童生徒との個人的なやり取りを禁止する校内規程等について、88・6%の学校が整備済み、10・6%の学校が整備予定と回答しており、当該規程について、各学校の実態に応じて学級担任や部活動顧問等から児童生徒に周知しているところである。

 SNSで個人的なやり取りがあった事案について。教員と生徒との間のSNSでの私的なやり取りによるわいせつやセクハラ、信用失墜行為などの事案が報告されており、それぞれの事案の内容に応じて、免職、停職、減給などの懲戒処分を行っている。

D赤根委員 校内規程が未整備の学校もまだ10%超ある。迅速な対応を求めたい。もし、SNSのやり取りがあった際には、わいせつ事案が発生していなくてもしっかりと対処していくということも併せて検討していただきたい。

Q赤根委員 先般の国会で、日本版DBSを創設する新法が参議院本会議で成立した。今後、学校のみならず、社会全体で子どもの性被害を防止する機運醸成と実効性の確保が一層課題になっていくと考える。教員によるわいせつ事故の防止に今後どのように取り組むのか、所見を伺う。

 また、わいせつ事故や飲酒運転といった重大事案はもとより、懲戒処分に該当するようなあらゆる不祥事の防止に向けた今後の取組を伺う。

A中島教育長 わいせつ事故防止の取組について。道教委では、これまでも、児童生徒に対するわいせつ事案について、被害を受けた児童生徒の同意を問わず、刑法上の性犯罪の対象とならない行為も含め、全て懲戒免職と厳正に対処しているところ。

 また、わいせつ事故の未然防止に向けては、他県を含め、わいせつ事故によって懲戒免職となった者を二度と教員に採用しないよう、4年度に国が整備した特定免許状失効者管理システムで確認するほか、過去に発生したわいせつ事案を基にしたケーススタディー資料を作成し、校内研修において活用するとともに、先般成立した、いわゆる日本版DBS制度に係る国の動向を注視し、必要な対応を進めるなどして、教職員によるわいせつ事故の防止に努めていく。

 不祥事防止に向けた今後の取組について。学校教育は、保護者や地域の方々との協力の上に成り立っており、わいせつ行為などの不祥事が後を絶たない状況は、教職員や学校に対する信頼を大きく損なう極めて深刻なものと認識している。

 このため、道教委では、各種会議や研修会等において注意喚起や啓発を行うほか、不祥事防止に向けた研修資料を作成し、各学校に配布するとともに、不祥事防止対策官を市町村や学校単位の研修会等に派遣し、指導助言を行うなど、未然防止に向けた取組を行ってきているところ。

 今後とも、他都府県の好事例を参考にするなどしながら、倫理観や崇高な使命感が求められる教育公務員の自覚を深め、あらゆる不祥事の防止に向けて、コンプライアンスの確立や服務規律の厳正な保持に取り組んでいく。

◆高校の通級指導

Q田中委員 平成30年4月の通級による指導の制度開始以来、道立高校における通級による指導を実施した学校数および生徒数を伺う。

A髙田高校教育課長 通級による指導の状況について。高校において、通常の学級で授業を受けながら、一部の授業について障がいに応じた特別な指導を受ける指導形態、いわゆる通級による指導は、平成30年度に制度化され、6年が経過したところである。

 その間、道立高校で通級による指導を実施した学校数と指導を受けた生徒数は、平成30年度が4校で10人、令和元年度は4校で8人、2年度は4校で24人、3年度は5校で27人、4年度は6校で20人、5年度が9校で32人である。

Q田中委員 道立高校における通級による指導で実施している自立活動では、個別の指導計画に基づき、どのような指導が行われているのか伺う。

A髙田高校教育課長 自立活動の指導について。通級による指導を行っている高校では、特別支援学校高等部学習指導要領で示された自立活動の内容を参考に、生徒一人ひとりの障がいの状態や特性、心身の発達の段階等の的確な把握に基づき、指導目標や指導内容を設定し、個別の指導計画を作成することで指導に活用している。

 具体的な指導の場面では、例えば、他者との関わりの基礎を身に付けるためのコミュニケーショントレーニングや、生活のリズムや生活習慣を形成するためのソーシャルスキルトレーニングなどが行われている。

Q田中委員 通級による指導を受けた生徒や指導した教員からは、どのような声が寄せられているのか伺う。

A髙田高校教育課長 生徒等の受け止めについて。通級による指導を受けた生徒からは、身の回りのものの整理の仕方や他者とのコミュニケーションの取り方を学ぶことができた、自分の気持ちを整理して自己理解を深めることができたので安心して学校に通うことができるようになった、相づちが打てるようになり、自分から友達に話しかけられるようになったなどの声が寄せられている。

 また、指導に当たった教員からは、生徒が自己の特性を理解し、学習に対応しようとする態度を身に付け、授業に集中するようになった、自分の思いも相手の思いも大切にしながら発言できるようになり、コミュニケーションに対する苦手意識が少なくなったなどの意見があったところである。

Q田中委員 本道における通級による指導の課題としてどのようなことが挙げられているのか伺う。

A山城指導担当局長 課題について。通級による指導が制度化されて以降、通級による指導のニーズが一定程度ある中、開始されてからの経過年数が少ないことや、実施校がひと桁で推移していることなどから、障がい等のある生徒に対する担当教員の指導経験などが十分蓄積されていないなどの課題がある。

 また、4年度に文科省が実施した調査では、高校において学習面または行動面で著しい困難を示すとされた生徒のうち、通級による指導を受けている生徒の割合は推定値で5・6%となっており、道内においても、小・中学校等で通級による指導を受けていたが、高校では受けていない生徒が一定数いることから、生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育活動をさらに充実させていく必要がある。

Q田中委員 本道における通級による指導の充実に向けて、今後どのように取り組むのか伺う。

A山本学校教育監 今後の取組について。高校における特別な配慮を必要とする生徒あるいは障がいのある生徒への指導に当たっては、特別支援学校等の助言や援助を活用しつつ、個々の生徒の障がいの状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うことが必要であり、さらに、通級による指導を行う場合には、特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし、具体的な目標や内容を定め、指導を行うことが必要である。

 このため、道教委では、担当教員を対象とした研修会において、個別の指導計画の作成や活用など、通級による指導についての専門性の向上を図るとともに、中学校や高校の管理職などを対象とした道立高校入学者選抜に関する説明会などにおいて、通級による指導を受けた生徒の声を紹介するリーフレットを配布するなどしており、こうした取組を通じて高校における通級による指導のさらなる充実を図っていく。

D田中委員 小・中学校等で通級による指導を受けていたが、高校では受けていない生徒が一定数いることは、まさに本当のところである。

 制度開始から6年で、道立高校においては5年度で9校ということで、これから増えてくると思われることから、少なくとも、今、対応していない高校については、通級を必要とする申し出があった場合には、速やかに、丁寧に相談対応するようにしていただきたい。

◆高校配置計画

Q田中委員 都市部における学級減について。9年度の計画案では、北見市内と釧路市内で2校2学級減が示されているが、学級減の理由について伺う。

A手塚高校配置・制度担当課長 9年度の学級減について。このたびの計画案では、6年度との比較で、中学校卒業者数が北見市で90人程度、釧路市で60人程度の減少が見込まれることや、各圏域におけるこれまでの定員調整の経過や学校、学科の配置状況、私立高校の配置状況などを総合的に勘案し、北見商業高校および釧路江南高校をそれぞれ1学級減とする案を示したところである。

Q田中委員 今後は、地方の都市部においても中卒者の大幅な減少が見込まれ、配置計画では、岩見沢市や富良野市における再編統合が決定している。

 生徒の教育環境を維持する観点からも、生徒の進路選択幅の確保にも留意しながら、一定規模の高校を残す都市部の再編も検討する必要があると思う。道教委の見解を伺う。

A岸本高校配置・制度担当局長 都市部における高校配置について。一定規模の生徒および教職員の集団を維持し、活力ある教育活動を展開していく観点から、複数の高校が所在する都市部などにおいては、再編によって一定の学校規模を確保することを検討する必要があると考えている。

 このため、都市部において高校の小規模校化が見込まれる場合などは、市町村との意見交換や地域別検討協議会の場を活用して、再編の必要性などを説明し、地域との共通認識を図るとともに、多様な学習ニーズに応えることのできる学校の役割など、学校規模を含めた望ましい配置の在り方などについて検討する必要があると考えている。

Q田中委員 今回の計画案では、地理的状況から再編が困難であり、地元進学率の高い地域連携校について、森高校における7年度の導入や南茅部高校の9年度の募集停止が公表されている。

 地域連携校では、小規模校における教育環境の充実を図るため、様々な取組が行われていると思うが、具体的にはどのような取組が行われているのか伺う。

A髙田高校教育課長 地域連携校の取組について。地域連携校においては、高校生が、地域社会の一員として地域課題等を発見、解決する課題探究型の学習活動や、コミュニティ・スクールの導入やコンソーシアムの整備を通じた地域の教育資源を積極的に活用した教育活動を推進している。

 また、生徒の興味・関心や、進学希望等に対応するため、高校遠隔授業配信センター(T―base)からの遠隔授業を受けるとともに、協力校として、近隣に配置されている高校と連携し、合同の学校行事や生徒会交流、教職員研修などを実施している。

 さらに、一部の高校では、道外からの入学者を受け入れるための地域と連携した体制整備や、高校生が地元の小・中学校に出向く学習支援などの取組を行っている。

Q田中委員 今後の中卒者数の大幅な減少や、高校が所在しない市町村が道内に多数存在することを考えると、道教委は、定員調整を行う市町村だけではなく、地域総出で、地域に所在する各高校の役割や将来の高校配置などを検討していく必要があると思う。

 道教委は、今後の配置計画の策定に当たってどのように地域と向き合っていくのか伺う。

A中島教育長 今後の取組について。道教委では、通学区域や通学可能圏域などの一定の圏域単位で、関係市町村の参画を得ながら、圏域内の高校が担うべき役割や高校の魅力化、高校配置の在り方などを協議する仕組み、いわゆる圏域協議を5年度から開始し、初年度は北見、釧路など4圏域で開催したところ。

 各地域での協議においては、都市部の定員調整によって圏域内の都市部以外の地域の高校を維持してほしい、定員調整は必要と考えるが、進路選択幅が狭まらないよう配慮が必要などといった意見があったところである。

 道教委としては、こうした圏域協議の結果を配置計画に生かすとともに、圏域全体における高校教育の質の維持向上に向けた施策や、地域の実情に応じた多様なタイプの高校づくりなどを進め、これまで以上に地域との連携を深めながら、生徒から選ばれる魅力ある学校づくりを進めていく。

D田中委員 中卒者が減っていく中で、一方では、地域においてはなくせない高校があり、行き着くところ、極論は少子化対策に尽きるが、非常に悩ましく難しい課題となっている。

 これは、もはや、地方存続という観点からも、道教委のみならず、道庁全庁的な対策が必要ではないかと思っている。

 現状においては圏域協議という形だが、地域の理解と納得を得られるよう、間口減少、統廃合を可能な限り防ぐためにも、あらゆる政策を総動員して最大限努力されていくことをお願いする。

(道議会 2024-10-11付)

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