学力向上の機運高めよう 子の学力考える会シンポジウム開催―日高教育局
(道・道教委 2016-01-04付)

学力向上フォーラム北村局長
北村局長

 【浦河発】「地方創生における教育の役割とは何か」をテーマに日高教育局は二十七年十二月一日、日高合同庁舎で第二回管内学力向上フォーラム「北海道の子どもたちの学力について考える会」シンポジウムを開催した。シンポジストとして、道教委委員で中央教育審議会臨時委員の鶴羽佳子氏、様似町長の坂下一幸氏、浦河高校長の小島晶夫氏、管内社会教育委員連絡協議会長の高橋祐之氏が登壇。北村善春局長をコーディネーターに、社会を生き抜く力の育成と地域を担う人づくりの重要性や方向性などに向けた取組を議論した。

 学力向上フォーラムは、管内の学力向上に向けて、学校・家庭・地域が一体となって取組を進めていくための共通理解を図りながら、学力向上の機運醸成を図るもの。今回は、「地方創生における教育の役割とはなにか」をテーマにシンポジウムを開催した。

 将来の変化を予測することが困難な時代を前に、子どもたちが自らの人生を切り開き、社会を生き抜いていくためにはどのような力を身に付けなければならないのか、また、地域を担う人づくりに向けて学校や家庭、地域、企業、行政は何を準備していかなくてはならないのかを切り口に、シンポジウムを進めた。

 鶴羽氏は、“学力向上の大切さと教育改革の動向”との視点から、アクティブ・ラーニングの重要性を指摘。「これからの日本を担う子どもたちを育てていく上で、“自分たちで考えられる”ことが大切になる」と強調。「“どう思う?”の質問に答えられるよう、普段の授業で考える力を育んでほしい」などと述べた。

 また、自身の社会人経験から、「“資料の漢字や領収書の字が読めない”“報告書が書けない”“計算ができない”ことは、社会に出たときにハンディキャップとなる。基本的な学力は、大人が保障しなければならない」と訴えた。

 坂下氏は、〝ふるさと教育にかける思い〟を視点に据えた。アポイ岳の世界ジオパーク認定に向けた小学校や中学校での取組にふれ、「持続可能なコミュニティで郷土愛を育んでいきたい。ふるさとを好きになってもらうためにも、ジオパークを利用した活動にも取り組み、地域全体で子どもを育てる環境を作っていくことが望ましい」と述べた。「大人は、子どもを学校に預けっぱなしではなく、それぞれが教育的機能を果たし、“自分たちのまちは自分たちで作っていく”という意識をもたなければならない」と呼びかけた。

 高橋氏は、社会教育に携わる立場から“地域を支える人材育成に向けた教育の役割と義務教育への期待”について述べ、都会から来た高校生に星空を見せてあげたエピソードを紹介。「自分たちの住んでいる地域には、たくさんの資源や教材がある」と述べ、「それらをすべて生かして、子どもたちの夏休みや冬休みなどを有効に使った学ぶ機会をつくっていきたい」と述べた。

 小島氏は、“高校教育改革の動向と高校教育の視点から見た義務教育への期待”について、管内の高校教育の現状などをグラフやデータを交えながら解説。「子どもが小学生であっても、子どもたちのその先の学びをしっかり考えていかなければならない。きょうの学びがどこにつながっていくのか、目の前の子どもがどこに向かっていくのかを考えることが大切」とし、社会に出ても通用する力を身に付けさせるため、学力向上の必要性を訴えた。

 最後に、北村局長は「管内では、地域の人たちに勉強やスポーツを教えてもらった経験のある子どもたちがとても多い地域」と述べ、子どもたちと地域とのかかわりの深さを評価。その上で、「長い視点で我々大人がそれぞれの立場で子どもたちの生きる力を育む実践を」と求めた。

◆鶴羽委員が浦河高校の授業視察

 シンポジウムの翌日、鶴羽委員は、学校視察のため浦河高校を訪れた。

 同校は本年度、道教委のICT活用教育推進事業と課題解決に向けた主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)推進事業の指定を受けている。

 鶴羽委員は、二年生の生物と数学の授業を見学。タブレット型PCを活用し、グループで学び合う生徒たちの姿を視察した。

この記事の他の写真

学力向上フォーラムパネリスト
パネリスト
学力向上フォーラム全景
社会を生き抜く力育成へ積極的に議論を重ねた
学力向上フォーラム鶴羽委員視察
鶴羽委員が浦河高校を視察

(道・道教委 2016-01-04付)

その他の記事( 道・道教委)

富良野市で地域未来づくり会議―上川教育局 今後の方向性を確認 小中高一貫教育の共通理解図る

地域未来づくり会議  【旭川発】上川教育局は昨年十二月中旬、富良野緑峰高校(宮本鎮栄校長)で二十七年度第一回管内地域未来づくり会議を開いた=写真=。道教委の小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業の一環。同事業指...

(2016-01-06)  全て読む

十勝局が学力向上推進研修会開催 授業改善の方向性等確認 全国学力調査結果の活用法を研修

学力向上推進研修会  【帯広発】十勝教育局は二十七年十二月中旬、十勝合同庁舎で本年度学力向上推進研修会を開催した=写真=。管内の市町村立小・中学校および道立特別支援学校の教諭など約八十人が参加。参加者は、本年度...

(2016-01-05)  全て読む

啓発パネル展示会実施 小中15校の取組成果を紹介 道北方領土対策本部

北方領土・豊浦中講演  道総務部北方領土対策本部は、二十七年度後継者育成・啓発素材アウトプット事業の一環として、道内十五の小・中学校で実施した北方領土学習の啓発パネル展示会を「北方領土の日」特別啓発期間の二十一日...

(2016-01-05)  全て読む

道徳教育の充実へ道教委 事例集・校内研修プログラム、年度内に作成へ 考える道徳への転換円滑に

 道教委は、本年度末までに『道徳教育に関する実践事例集』および『校内研修プログラム』を作成する。「特別の教科 道徳」設置を盛り込んだ学習指導要領一部改正を受けて、「考える道徳」へ転換していく...

(2016-01-04)  全て読む

自分を見つめる機会に 心に響く道徳教育推進事業―道教委

 道教委「子どもの心に響く道徳教育推進事業」における外部講師派遣校がまとまった。小・中学校六十校であり、全国的に活躍している、本道になじみの深い著名人による講演を行っている。  地域の人材...

(2016-01-04)  全て読む

【28年新年号】学力の向上へ日常的に授業改善―道教委 授業のヒントがここに チャレンジテスト活用を

 本年度全国学力・学習状況調査の結果、道内小・中学校の授業について、冒頭の目標提示や最後の振り返り活動に課題があることなどが明らかとなった。道教委は、授業改善に当たり、「先生方には、まず、調...

(2016-01-01)  全て読む

【28年新年号社説】地域全体で学びの場を醸成

 本年度策定された「北海道総合教育大綱」では、基本的な考え方の中に、「地域全体で子どもたちの学びを支援する取組を推進する」ことが盛り込まれた。  具体的には、「すべての子どもたちに、社会で...

(2016-01-01)  全て読む

【28年新春インタビュー】道教委・柴田達夫教育長に聞く 学力・体力向上へ取組一層 「本道の子は、地域全体で育む」

柴田教育長インタビュー ◆学力 全教科で全国平均以上に  ―二十七年度全国学力・学習状況調査の分析結果からみえてきた課題と、今後の取組の方向性についてお聞かせ下さい。  二十七年度全国学力・学習状況調査は、毎年...

(2016-01-01)  全て読む

特別支援文教施策要望への道教委回答

 道特別支援学校長会(五十嵐利裕会長)、道特別支援学校副校長・教頭会(日向正明会長)、道公立学校事務長会(永井進会長)の『二十八年度道文教施策に関する要望書』に対する道教育委員会の回答はつぎ...

(2015-12-28)  全て読む

道教委進学セミナー特別企画 発話障壁を取り除いて 安河内氏が札幌東高で授業等

セミナー特別企画  道教委は二十一日、札幌東高校で「道高校学力向上推進事業」二十七年度進学指導セミナー(英語)特別企画を実施した。安河内哲也氏(一般財団法人実用英語推進機構代表理事、文部科学省英語教育の在り方...

(2015-12-28)  全て読む