協働と研究・研修充実を 大鐘会長あいさつ概要―道高校長協会総会・前期研究協議会
(関係団体 2016-05-17付)

道高校長協会総会大鐘会長
あいさつする大鐘会長

 道高校長協会二十八年度総会・前期研究協議会(十日、ホテルライフォート札幌)における大鐘秀峰会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 道高校長協会は、この三月で熊石高校、旭川凌雲高校、洞爺高校が惜しまれつつ、その歴史に幕を閉じたが、新たに旭川永嶺高校が開校し、公立高校二百三十五校、私立高校五十六校、合わせて二百九十一校で、二十八年度の活動が始まった。この二百九十一校の公立高校、私立高校が協調し、未来ある本道の高校生の健全な育成に取り組んでいきたいと思っている。会員の皆さんの協力をお願いする。

 さて、今日の社会は、国際化、情報化が急速に進展するグローバリズムの中、極めて変化の激しい状況にある。特に、日本社会においては少子高齢化が進み、人口減少に転じていく中、労働力や生産量の低下が予測されている。

 そこでは、これまでの経済成長による豊かさへの信仰が問い直され、資本主義や民主主義といった根本原理の価値の軸や制度の再構築が求められている。

 そうした中、これから求められる二十一世紀型人材を育成するという大きな教育課題を考えるとき、中教審教育課程企画特別部会による「論点整理」の冒頭の「新たな学校文化の形成」や「学校の意義」には、そうした状況認識に基づいた新しい教育や学校の在り方が示されている。その点で、これまでにない大きな改革期の到来を何よりも本協会の基本的な認識にしなければならない。

 次期学習指導要領の改訂においては、授業の在り方やカリキュラム全体を見渡す視点をもちながら、学力の三要素を土台にして、どのような力をどのように育成するのかといった、各学校の生徒の実態に即した学力の再定義が求められることから、根本的な学力、学習の在り方を構築していく理念的な作業を出発点として、学力向上に向けた取組を進めることになる。

 画一的ではない多様な方法論を精査しながら、自校に合ったスタンダードを土台からつくり上げていくという、これまでの前提を変更する作業に取り組むことになる。

 すでに策定されている高大接続改革のスケジュールによれば、二〇一九年に高校基礎学力テスト、二〇二〇年にセンター試験に替わり、大学入学希望者学力評価テストが始まり、さらに二〇二三年、二〇二四年には、それぞれのテストが次期学習指導要領下で本格化していく道筋が示されている。

 その一方で、いまだに後を絶たない、いじめにからむ生徒の死亡事故等において、学校の対応や体制の問題をはじめとして、豊かな心を育む教育の充実を柱に、知・徳・体のバランスの取れた教育の重要性は一層高まっていると考える。

 また、法制度の成立をはじめとする経営課題の増加は言をまたない。小中一貫教育学校制度、コミュニティ・スクール化を進める地域・学校協働改革や、チーム学校を実現する学校組織運営改革、教員の資質能力の向上にかかる提言のほか、障害者差別解消法、女性活躍推進法、改正公職選挙法の施行や学校職員人事評価制度の開始等、多くの課題が提起されている。

 こうした状況の中、本協会の存在意義を再確認し、積極的に課題と正対しなければならない。そのための本年度の協会運営の方針として、つぎの二点を掲げる。

 一点目は協働体制の充実。大きな共通課題に向かうための互助的な体制はなくてはならない。各学校事情に応じた対応が求められながらも、本協会の基本的姿勢として、協働は不可欠である。具体的には、情報や課題とともに、目標の共有が協働体制を成立させていく。

 その点で、協働体制を促進していく基盤は支部活動にある。人口減少に伴う地域創生や活性化といった、学校を核にした地域づくりの課題は大きく、そこでは、各地域、各学校の固有の課題に結びついた対応の仕方を探り出さなければならない。より具体的、個別的な対応のために支部活動の充実が求められ、それが発展して全体の共通課題の解決につながっていくと考える。

 二点目は、研究・研修の充実。大きな改革期において、情報の収集・共有に基づく研究・研修を踏まえた課題解決のための創造的提言が新たな希望を描き出す。その活動の中核にあるのは、支部活動はもとより、これまで全国的にも成果を上げてきた調査研究部の活動であるが、本年度も、調査研究部の活動に協力をお願いする。

 この研究・研修については、校長の大量退職に伴う管理職養成という視点からも、協会の組織文化として継承されるべきである。本協会の学習する文化と盤石な体制の継承が急務になっている。協会が課題解決のために、これまで諸先輩によって継承されてきた会員相互の自由闊達な議論風土を活用しながら継承していきたいものである。

 このような協会の運営方針を土台にして、のちほど総会で承認いただくが、本年度の協会の活動方針は、「北海道の未来を担う人を育む高等学校教育の創造~人と協働し、社会で自立して生きる力の育成を目指して」というものである。

 基本テーマについては、前年度踏襲であるが、副題については、昨年秋に策定された北海道教育大綱の「第二章 本道教育の基本方針」から、「自立して」という語句を引用している。

 この活動方針のもと、本年度、校長協会として取り組む主な具体的な課題を四点挙げさせていただく。

 一点目は、教育改革動向を踏まえた学校経営の推進について。めざましい教育改革動向がもたらす課題は、個別課題の集合というよりは、複合的、総合的な課題であると考える。つまり、今日の課題は、部分的・対処的対応よりも、全体的・根本的対応が求められていると考える。

 例えば、学習指導と評価の改善が、同時に、そのための組織開発を求めるというように多元的な対応が必要になるということである。そのため、各学校では、取り組むべき学校課題の全体像の把握が求められる。

 そのような諸課題の全体把握の視点の形成をはじめとして、次期学習指導要領が完成する二〇二四年度までの九年間は激動の期間である。各学校が各自の工程表に基づいて、計画的かつ系統的に改革を進めていくための先導的な研究・研修が求められる。

 喫緊の課題について研究を蓄積してきた調査研究部の活動はもちろんのこと、先行事例のない中、先進的な研究を進め、その成果を発信し、共有する体制や基本計画を整える必要性を考えている。

 二点目は、文教施策要望と人事要望について。文教施策要望については、全道的かつ今日的視野に立って、本道の高校教育水準の向上を目指す上で課題となることを、要望の形でまとめている。昨年度の道教委担当課からの回答を精査しながら、より実効性の高い形になるよう努めていきたいと考えている。

 人事要望については、各学校の組織体制に直結する会員の切実な思いが込められた要望が寄せられている。これらの要望を整理した上で、六月に開催される「教職員人事打合せ会議」において、教職員課と協議する予定である。

 文教施策要望、人事要望の作成は、いずれも時間のかかる作業であるが、学校経営を左右するとともに、研修の意味をもつことから、会員の意識を統合し、協働体制を築く土台となる。課題解決に向かう前向きな意見、要望に収束するためのより良い意見の集約に協力いただくようお願いする。

 三点目は、信頼される学校づくり。昨年度も残念ながら、管理職の不祥事が発生した。管理職の不祥事は、道民の信頼を損なうばかりでなく、学校組織の協働体制を支える管理職と教職員との信頼関係を大きく損なう。

 管理職のリーダーシップの第一の在り方は、ロールモデルとしてのリーダーシップである。法制度について、正しい知識と意識をもち、高い倫理観と責任感を備えた姿勢を教職員の先頭に立って示すことが、管理職を目指す人材を育成する王道であり、信頼される学校づくりに至る糸口であると考える。

 喫緊の課題である後継者育成の視点に立って、自らが日常的な未然防止のための範となり、不祥事の根絶、服務規律の徹底に努めていく必要がある。

 四点目は、協会の財務の見直しと活動の活性化。二十二年度から財務・組織検討委員会を設置し、継続的に保護者負担の軽減を柱に経費削減を検討し、会議そのものの削減や会議への参加を制限するとともに、経費の個人負担をお願いしてきた。

 しかし、財政上のさらなる改善が必要になっている状況にある。そこで、基本方針として、これまでの活動を低下させないこととともに、個人負担を増やさないという方針をもって、協会内にあらためて財務検討特別委員会を設け、検討を重ねていく。

 また、本年度協会の活動について、全高長総会・研究協議会等への参加を支部選出理事や調査研究部主査にも拡大した。これは、これからの教育改革への対応を考えた研究・研修活動の推進が根拠になっている。

 今後も、協会の活性化という視点から、引き続き、活動の充実を促す取組について検討していきたいと思う。

 以上、四点について、皆さんの理解と協力を重ねてお願いする。

 後期中等教育機関としての高校の運営をつかさどる長として、校長の立場を再認識し、新たな希望をもって、力を合わせて北海道の未来を担う高校生を育てる高校教育を創造していこう。

 先月の十四日、十六日に発生した熊本地震への支援活動について、協会として支援を呼びかけさせていただいたところ、多くの皆さんから協力をいただき、五月六日付で、二十七万円の支援をいただいた。この場を借りてお礼申し上げる。

 また、校長協会による社会貢献事業として昨年度開始したプロジェクトも、いい形でスタートできた。長期的かつグローバルな視点とともに、目前の生徒への眼差しを大切にした、この事業への協力に感謝申し上げる。

 微力ではあるが、与えられた職務に全力で当たりたいと考えているので、皆さんの絶大なる支援、協力をお願い申し上げる。

(関係団体 2016-05-17付)

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