道社会教育委員の会議提言 全小・中に連携担当教員 地域とともにある学校へ転換
(道・道教委 2016-08-02付)

 道教委が七月中旬に開いた教育委員会会議では、道社会教育委員の会議の提言「多様な人材の参画による地域の教育支援充実のために~道社会教育委員の会議による調査から見えてくるもの」について、報告が行われた。同会議は、道内全市町村における社会教育行政の現状などに関する調査を実施。その結果・分析に基づき、「すべての小・中学校に、〝地域連携担当教職員〟として、社会教育主事有資格教員を配置するなど、〝地域とともにある学校〟への転換」など五点を提言している。

 提言内容はつぎのとおり。

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 道社会教育委員の会議では、本提言を作成するに当たり、道内すべての市町村に対して実施した調査から明らかとなったことなどを踏まえ、社会教育行政の中核を担う「社会教育委員」や「社会教育主事」の役割、目指す姿などについて協議を重ねてきた。

 その結果、社会教育事業や社会教育活動の展開方法、社会教育の成果の発信方法、また、その充実を図るための手がかりとして、本道が抱える今日的な課題の解決方策について、地方創生を目指すという観点から、つぎのとおり、五つの提言を取りまとめた。

【学びや育ちを支援する基盤づくりの必要性】

 そもそも、地域住民や保護者には、自ら子どもたちに積極的にかかわり支援することによって、自分たちの手で地域をより良くし、子どもたちを育てていこうとする意識や志がある。

 また、子どもも大人も自らが主体となって地域を豊かに活性化する取組に挑戦し、学校を核に、地域全体を「学びの場」ととらえ、まちの元気を取り戻している実践例なども見受けられる。

 こうした意識の高まりや、地縁的つながりの復活・再生を目指すという視点にとどまらず、新たなスタイルの地域コミュニティを創り出すという視点に立って、学校と住民、保護者等が力を合わせて、子どもたちはもとより、大人たちの学びや育ちを支援する基盤を再構築しなければならないと考える。

 調査結果を踏まえた協議では、これらの社会教育による学習機会の提供等についての必要性が指摘された一方で、学びや育ちを支援する基盤づくりを担う人材の養成に、市町村は苦慮している状況が見受けられた。

 そこで、地域を担う子どもを育て、生きがい、誇りを育むために、学校において地域の人々や保護者等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール化を図り、地域との連携・協働体制を構築し、学校を核とした地域づくりへの発展を目指す中で、社会教育による人材育成を同時に進めることが必要であると考える。

 また、日常的に指導者として活躍する学校教職員が地域人材の育成の一翼を担う仕組みなども重要な視点であることから、地域との連携を担当する教職員に社会教育主事の有資格者を活用することや、市町村の社会教育委員、社会教育主事等の研修機会を充実させることによる、地域課題を解決する社会教育事業の展開が必要であり、「地域とともにある学校」を目指すための仕組みづくりが期待されている。

▼提言1 すべての小・中学校に、「地域連携担当教職員」として、社会教育主事有資格教員を配置するなど、「地域とともにある学校」への転換

【社会教育を推進する人材養成の必要性】

 「提言1」のとおり、学校を核とした地域づくりを推進するに当たっては、市町村の社会教育委員や社会教育主事の活躍は不可欠である。

 しかし、その役割や必要性については、必ずしも十分な理解が得られていないことや、社会教育主事講習の実施時期や実施機関、実施場所、費用負担などの課題もあり、約三割の市町村で配置されていない状況にある。

 また、社会教育主事の資格をもつ教職員の活躍が期待されている中、現在、本道における社会教育主事講習は、夏休み期間中に札幌市における開催のみで、例年、教職員からの受講者は十名を下回る状況にある。

 このような中、「社会教育委員や社会教育主事」については、地方創生の中核を担うべき人材であることから、国における様々な議論の中でも、その必要性について指摘されており、特に、社会教育主事の役割や身に付けるべき能力などについては、地域の課題解決支援や組織化支援に対応する人材として、クローズアップされている。

 これまでに、道社会教育委員の会議から出してきた提言においても、社会教育主事の積極的な育成に関する事項をはじめ、文化・スポーツの振興を下支えする社会教育主事の必要性等について述べてきているが、市町村が人材育成に苦慮する中、今一度、その役割や存在意義について提言することとした。

 具体的には、教職員からの受講については、市町村教育委員会はもとより、校長会等に働きかけることや、教職員を対象とした新任研修等の法定研修に社会教育の内容を位置付け、理解を深めさせることなどによって、資格取得を促進することが必要である。

 また、受講しやすい環境を整備するため、講習を担当する大学と受講日程に関する調整や内容の充実、さらには、教職員からの受講者に対して受講費用の負担軽減などについても検討を進める必要がある。

 一方で、市町村における人材の確保については、北海道独自の課題に対応した社会教育主事の役割を明確にし、各種研修会の充実に努める必要がある。

▼提言2 大学等との連携により、社会教育主事講習の受講しやすい環境を整備し、すべての市町村教委に社会教育主事配置(発令)

【社会教育委員の自律した活動の必要性】

 調査結果からは、社会教育委員の役割について、「住民主体の地域づくりや、活性化のための担い手」「新たな学習課題の発見と柔軟な思考」などが求められており、社会教育主事同様、地域における自助や共助の仕組みづくりの必要性を読み取ることができる。

 二十三年一月に道教委からの諮問に対して出された社会教育委員の会議における答申の中では、「社会関係資本としての人と人とのつながりを地域の中に築いていく学びを組織する力」を「社会教育力」として位置付け、この力はどの市町村にも同じ状態で存在しているわけではなく、市町村や小学校区・中学校区などの地域ごとに全く違った状態で存在していることから、

▽自分たちで市町村や地域の実態を把握することから始めなければならないこと

▽地域住民による地域社会の実態把握そのものが、子どもたちの学力・体力の向上に向けたスタートであること

▽学び合いの中心を各市町村の社会教育委員が社会教育主事等とともに担っていかなければならないこと

 ―などとして取りまとめられている。

 これらの役割を担うための資質や能力は、従来の研修機会や研修方法だけで簡単に補うことができるものではなく、多くの情報や新しい発想など、異なる観点から、社会教育委員自身が身に付けるべきことも多いと考える。

 このようなことからも、それぞれの地域における学び合いの中心としての役割を担う社会教育委員については、その能力向上に向けた新たな研修機会が必要であり、その際、地域を越えた広域的な相互の連携・ネットワーク化を図ることで、それぞれの地域における取組の参考にもなることから、道教委はそうした実践に関する情報提供はもとより、新たな仕組みづくりに関する支援に努める必要がある。

▼提言3 社会教育委員としての能力向上に向けた研修機会の支援と、研修機会を活用した広域的な委員相互の連携促進

【公民館等の社会教育施設による多様な事業展開の必要性】

 調査結果からは、各市町村で実施されている社会教育事業の評価にかかわり、事業実施時の参加者によるアンケートによる事業評価がほとんどであり、その評価自体についても形骸化が懸念される。

 また、評価の基準やシステムが確立されていない状況なども確認できた。

 このようなことから、職員の多忙化等による前例踏襲型の社会教育事業が多く存在しており、せっかくの評価がフィードバックされていない現状、住民主体の取組に反映されていない現状など、社会教育による成果を発信する機会がどんどん失われているとも考えられる。

 このような中、国においても同様の問題意識から、「絆づくりと活力あるコミュニティの形成」の実現に向け、地域力の活性化のために公民館等、地域の「学びの場」を拠点として実施される地域課題解決の取組の促進、支援を行う「地域力活性化コンファレンス」を二十七年度より実施しており、北海道においても実行委員会が組織され各地域でコンファレンスを開催している。

 具体的には、これまでに全国各地で地方創生に向け住民が主体となって取り組まれ、成果を上げている好事例について、

▽蓄積された様々な課題解決のノウハウ

▽プロセス等の成果の活用方法

▽各地域が共有するべき課題の解決に向けた協議手法

 ―など、地域力活性化の取組の全国的な普及・啓発等を行うものである。

 こうした社会教育施設等を活用し、地方創生に向けた取組や社会教育事業の展開については、「提言3」において述べたとおり、それぞれの地域における取組の参考にもなることから、道教委は積極的に支援する必要がある。

▼提言4 公民館等の社会教育施設を活用し、地方創生に向けた人づくり・地域づくりのための学習機会の実施支援の充実

【従来の制度や仕組みにとらわれない施策展開の必要性】

 調査結果からは、市町村が考える都道府県の役割として、「優れた実践事例や研究成果の提供」「子どもたちの主体性を引き出す学習機会の充実」などが挙げられている。

 また、都道府県レベルにおいての「学校教育行政」と「社会教育行政」におけるネットワークの構築についても求められており、これまでの縦割行政のスタイルや自前主義からの脱却について検討すべきであると考える。

 このことは、今後の本道における社会教育行政の推進に止まらず、生涯学習の振興という広い視野から検討されるべきとも考える。

 このような中、二十七年度に出された「第三次北海道生涯学習推進基本構想」や「北海道総合教育大綱」等においては、これまで以上に社会教育の果たすべき役割への期待が強くなっており、社会教育によって積み上げられてきた社会教育的な効果を行政内の他部局等へも働きかけていくべきであると考える。

 また、市町村における社会教育による学びの提供、成果の活用だけでは、今日的な地域課題を解決することに限界が出てきているのも事実であり、医療分野や福祉分野をはじめとした様々な領域との協働実践により課題の解決を図ることができるようになると考える。

 そもそも、社会教育は多領域であり、多領域の方々と手を結んでいかなければ社会教育も成り立たない。

 つまり、様々な領域にまたがる社会教育行政が、従来のように社会教育行政の範ちゅうだけで取組を展開するのではなく、知事部局等の関係部局はもとより、企業やNPO、関係機関・団体に対して、自ら積極的に効果的な連携を仕掛けていき、協働して施策を展開するネットワーク型行政を推進する必要がある。

▼提言5 これまで以上に実効性のある社会教育行政の推進に向けた連携の構築

(道・道教委 2016-08-02付)

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