【解説】高校生物教育の重要用語
(解説 2017-10-17付)

 日本学術会議は「高校の生物教育における重要用語の選定について」の報告を取りまとめた。

 高校の生物教育で使用される用語については、これまでも語数の多さと不統一が指摘され、現行の教科書では、延べ二千を超える用語が重要と指定されている。このことは、学習上の障害となっているほか、生物学が暗記を求める学問との誤解を生み、大学入試の受験科目選択で敬遠されるなど、高大接続の在り方にも深刻な影響を及ぼしている。

 日本学術会議では、このような認識から、生物科学分野教育用語検討小委員会を設置し、教育の場で用いられる用語の検討を行った。

 検討に当たっては、現行教科書の調査のほか、インターネットによる検索ヒット数をもとにした分析などを実施。高校の生物教育において学習すべき主要な概念とのつながりが特に高い「最重要語」二百五十四語、学習すべき主要な概念とのつながりが高い「重要語」二百五十八語の計五百十二語を選定した。

 例えば「生物基礎」の単元「生物の共通性と多様性」では、最重要語に「細胞」「核」など、重要語に「原核細胞」「組織」など。同じく「細胞とエネルギー」では、最重要語に「呼吸」「ミトコンドリア」など、重要語に「NADH」「リン酸」などを挙げている。

 日本学術会議では、選定しなかった用語を教えないということではなく、重要語として扱われる用語を減らそうと提案するものと説明。最も重要なねらいは「生物学が暗記科目ではなく、思考力を大きく刺激する魅力にあふれた学問」とのメッセージを送ることと強調している。

 また、今回の報告をもって用語を固定化せず、学問の進展や研究者・教育者からのフィードバックをもとに、継続的に改訂されていくべきものとしている。

(解説 2017-10-17付)

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