「第2のふるさとで見つけた私の夢」 道高校定通生徒生活体験発表大会 最優秀賞・布藤さん(東藻琴)(関係団体 2018-10-23付)
道高校長協会定通部会(蓑島崇部会長)主催の第六十二回道高校定時制通信制生徒生活体験発表大会(十九日付2面既報)で最優秀賞を受賞した東藻琴高校三年生の布藤和花さんの発表「第2のふるさとで見つけた私の夢~地域で学んだ未来の農業経営のカタチ」の内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
「このままやったら日本の農業はアカン」
私の故郷である大阪府岸和田市は全国的にはだんじり祭りが有名で農業はあまり盛んではありません。そんな私が、農業に興味をもったのは、小学生のころに両親とともにオホーツクを観光したときに食べた生乳一〇〇%のアイスクリームのあまりのおいしさに感動したことがきっかけです。「北海道で農業を学びたい」という思いは、中学校を卒業するまで変わることはなく、あのとき訪れたオホーツクで学べる、この東藻琴高校に入学しました。
高校を卒業したら、北海道で農業がしたい。入学当初はそう考えていましたが、ある人との出会いが私の夢を大きく変えました。
その人は、東藻琴の酪農家、増子昭雄さん。大阪から来た私は、高校の寮が閉寮となる休日に、増子さんの家で生活をしながら、農作業を手伝っています。
増子牧場は乳頭数四十頭と五十㌶の畑作複合経営の大型農場で、家族経営の農家です。朝から晩まで休む暇なく働く姿を見て、少しでも力になりたいと思い、搾乳はもちろん、今ではミルカの移動からバルククーラの管の清掃まで、すべての工程を一人でもできる程に成長しました。
また、増子牧場は、日本中央酪農会議が認定する酪農教育ファームで、夏場には道外から多くの人が搾乳や野菜の収穫を体験しに訪れます。農業未経験者に一から酪農について教えている増子さんの様子を見て私は不思議に思いました。ただでさえ忙しいのに、そこまでやって農業経営上にメリットはあるのだろうか。増子さんに率直に尋ねるとこう答えてくれました。「ただつくるだけの農業を続けたら、未来の農家はいなくなる」
私は、最初この言葉の意味がよく分かりませんでしたが、農業の学習を通して地域の農業に関する様々な課題があることを知りました。
一つ目は「若い人に農業の魅力を伝えられていないこと」です。
農業の授業で、北海道は他県よりも法人経営が増えており、家業後継が当たり前だった時代ではなくなってきていることを先生から教わりました。増子さんは「田舎の農家で働きたいと思ってくれている人はまだまだ少ないのが現状だよ」と話してくれました。少子高齢化の進む日本社会ではますます農業従事者が減少していくことは想像できます。魅力ある北海道農業も、知らなければ興味が湧かないのは当然のこと。
そこで、私は増子牧場に体験に来た子どもたちを中心に、搾乳以外に少しでも農業の驚きや発見を与えられるような企画を考案しました。その名も「ミルクのちから」。少しでも農業の魅力を伝え、興味をもってもらうことが目的です。京都から来た観光客には、増子さんのおばあちゃんから教わった生乳でつくる牛乳豆腐を一緒につくりました。小学生の男の子は初めて口にする食べ物を不思議そうに見ながらも口に運び「すごくおいしい」と、とても喜んでくれていました。
些細なことですが、私はその笑顔を見て、農業経営者自身が農業の魅力を伝えていくことの大切さを学びました。
二つ目は「地域農産物の魅力を伝えられていないこと」です。
東藻琴では、近隣の農家が一つの組織として集まり「ノンキーマーケット」という名で、それぞれに栽培した生産物をジャムなどの加工品にして販売する六次産業の取組を行っています。増子さんのおばあちゃんも女性部の一員で、私も集会に参加させてもらっていました。
農家の方々は自分の生産物に絶対の自信をもっていますし、実際に加工品の味は絶品です。これらの商品は増子牧場にファームステイしている観光客にも振る舞われ、「味が濃くておいしい」と多くの人から高評価を受けています。
しかし、定期販売は地域の道の駅と限定的なため、地域の外への発信力は少し低いように感じました。そこで、私は農業クラブの活動として本校の販売会「東高交流マルシェ」で、ノンキーマーケットをはじめとする地域商店街の自慢の特産品を一つにしたオリジナルギフトセットを考案しました。
パッケージや商品POPもノンキーマーケット代表の吉井さんと相談しながら進め、当日は用意した十セットを完売することができました。
この経験を通して、ただつくるだけでなく、つくった商品の魅力を伝えることの大切さを学びました。
三年生になった今、私は農業情報処理で学んでいるヤフー株式会社とのデジタル人材育成プログラムで学んだ知識を生かして、インターネットを活用して自慢の製品を多くの人に広める技術を学んでいます。
大阪から来た農業未経験の私にとって、ここでの三年間は毎日が驚きと発見に満ちていました。
農業の辛さ、大変さを実感として学んだ今だからこそ言えます。「農業って面白い!」北海道の農業をこれからも守り続けるために、私は酪農学園大学に進学し、「先生!私は農家になる」と子どもたちに夢を与えられる教員になります。
(関係団体 2018-10-23付)
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