【社説】黎明期迎えた学校でのICT活用
(解説 2021-01-01付)

 昨年来、新型コロナウイルス感染症は社会の隅々にまで影響を与え、学校では臨時休業が3ヵ月にも及んだ。学びの保障のため、政府はGIGAスクール構想の予定を前倒しし、小・中学校で1人1台端末を活用できる学習環境整備を加速。新年度以降、クラウドを活用した双方向型による一斉学習やデジタル教材の活用が始まる。

 文部科学省は新年度に全国学力・学習状況調査のオンライン化の試行やデジタル教科書の普及促進を計画。昨年、学校・保護者間の連絡手段のデジタル化を各都道府県・市町村教委に求めるなど、学習活動以外での取組も進めている。

 一方で急加速に伴う様々な混乱がある。各自治体は端末や校内無線LANの環境整備を進めているが、進ちょく状況にも差が生じている。学校現場で円滑に運用するには、機器の初期設定、トラブル時の対応、安全なネットワークの構築など多くの課題がある。学校単独ですべての課題に対処することは困難であり、ICTに精通した民間企業や地域の人材による支援も求められてこよう。

 ICT活用への対処のみならず、本来の学校教育の目的を再確認することが肝要だ。全国連合小学校長会は昨年12月、中央教育審議会に寄せた意見で、ICTはあるべき学校教育を実現するツールとし、過去の実践と最適に組み合わせ、有効に活用することが重要と指摘した。

 教育の現場には、研究活動の中で長年にわたって培い、磨き上げてきた多くの実践の成果がある。教材研究、情報の共有・周知など、今後の取組を進める上で大きな力となるものだ。

 ICT活用能力の向上は喫緊の課題。不安を抱える教員は少なくない。そのためにも、教育行政においては、ICT化が進む現場の状況の逐次詳細な把握・分析、必要な支援の構築が不可欠となる。

 新型コロナウイルス感染症の収束は、いまだ見通せていない。児童生徒の学びを止めない取組は続く。学校運営や授業の質を高めるとともに、緊急時に不安なく学習が継続できる環境づくりに力を入れていかなければならない。

 教育行政、学校、関係団体、民間企業等がそれぞれの役割を果たし、今後、生じるであろう様々な課題に対処しながら、共に歩み、着実に前進する1年になってほしい。

(解説 2021-01-01付)

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