道養護教員会札幌小中 3ヵ年調査研究 〈上〉 実態に合う指導法交流 電子メディア使用と健康の関連性
(札幌市 2021-01-14付)

 道養護教員会(佐藤芳美会長)札幌小中支部が平成29年度から3ヵ年計画で実施した児童生徒における電子メディアの使用と健康との関連性に関する調査研究がまとまった。1・2年目は、子どもの実態に関するアンケート調査を行い、3年目には、小学校児童向け保健指導グループなど3グループに分かれ、発信方法の検討と資料の作成を実施。「実態に合った発信や指導についてのアイデアを交流することで、多くの発信の手立てを得ることができた」などの成果がみられた。札幌小中支部の研究概要を連載で紹介する。

現代における子どもの健康課題からみえてくるもの~電子メディアが与える健康への影響

【研究計画(3年研究)】

 1・2年目は実態把握をするためアンケート調査を実施し、実態や課題を明らかにすること、3年目は、発信方法の検討と資料の作成、実践を行うこととした。

【研究内容】

◆アンケート調査

 アンケート調査は、研究2年目に手稲区内の全小・中学校で実施した。調査用紙については、電子メディアの使用の実態と心と体の健康に関する項目について、1年目に実施したプレ調査をブロック内で再検討したものを使用した。幼稚園については、研究推進委員の原案をもとに幼稚園内で検討・修正したものを使用することにした。

▼調査の目的

 電子メディアの使用実態と子どもたちの心と体の健康とのかかわりについて把握をするため14項目について、アンケート調査を実施した。

▼調査時期=平成30年7月

▼調査対象者

▽小・中学校のアンケート調査

 手稲区内の小学校16校の6年生1280人(男子666人、女子614人)、手稲区内の中学校9校の3年生1214人(男子604人、女子610人)。

 回収率は小学校が男子654人(98・2%)、女子606人(98・7%)、中学校が男子549人(90・9%)、女子566人(92・8%)だった。

▽幼稚園保護者のアンケート調査

 全家庭にアンケート用紙を配布し、回収率は男子の保護者27人(67・5%)、女子の保護者26人(66・7%)だった。

▼調査方法

 小・中学校は各校で時間を設定し、学級担任の進行で児童生徒がアンケート用紙に記入した。幼稚園は全家庭に配布したアンケート用紙を保護者が任意で記入し提出した。

▼集計と検定

 データは各校で入力作業を行い、研究推進委員が集計した。なお、クロス集計の検定はχ2検定を行い、有意差の危険率は5%未満を有意とした。

 その後、ブロック研究推進研修会の中で、項目別の単純集計やクロス集計のデータから読み取れること、注目したところを交流し、各校の実情との関連性や児童生徒にどのような力を付けさせたいか話し合い、発信方法を検討、実践の具体化を目指すこととした。

▼結果および考察

▽電子メディアの使用率

 電子メディアを全く使用していない児童生徒は、小学6年生で男子5人(0・8%)、女子8人(1・3%)、中学3年生で男子11人(2・0%)、女子9人(1・6%)とわずかであり、ほとんどの児童生徒が何らかの電子メディアを使用している。

 電子メディアの使用率が100%の小・中学校もあった。その中でもゲーム機などの使用は小学生に多く、スマートフォンの使用は中学生に多い。

 スマートフォンについては、小学校から中学校にかけて使用率の増加が大きい。

 幼稚園については、約75%の幼児が何らかの電子メディアを使用しており、スマートフォンの使用に至っては小学6年生とほぼ同じ使用率であったことから、電子メディアの使用開始の低年齢化が進んでいることが分かった。

▽平日、休日の平均使用時間

 平日(月~金)に3時間以上使用している児童生徒は約10~25%未満だったが、休日(土日)になると、小学生で約20~30%、中学生で約45%に増加した。

 さらに、3時間以上の内訳をみると、10時間以上使用している児童生徒は123人(小学生49人、中学生74人)で、電子メディア漬けの生活を送っている児童生徒が少なからずいることが推察された。

▽平日の使用時間と就寝時の置き場所の関係

 就寝時、枕元に電子メディアを置いている児童生徒は、それ以外の児童生徒に比べて、平日に3時間以上使用している割合が有意に高いことが分かった。

 就寝時における寝床での電子メディアの使用は、就寝時刻を遅らせるだけでなく、睡眠の質の低下を招くことも懸念される。

 実際、今回のアンケート調査では、電子メディアを枕元に置いていると就寝時刻が遅くなり、朝スッキリ目覚めることができないという傾向が中学校で顕著にみられた。

 また、「家の人に預けている」「自分の寝る部屋以外に置いている」と使用時間が短いという傾向は、小学校で顕著にみられた。

▽平日の使用時間と家庭での約束事の関係

 小学校では約80%、中学校では約55%の家庭で何らかの約束事を決めている。そのうち、時間の約束事は小学校で697人(71・7%)、中学校で374人(62・0%)、場所の約束事は小学校で458人(47・1%)、中学校で232人(38・5%)と予想外に低く、「他の約束事がある」という児童生徒が小学校で139人(15・0%)、中学校で135人(24・0%)であり、自由記述から「課金をしない」など、お金に関することが大半を占め、次いでアプリケーションソフト、SNSやネットの使い方についてであり、時間と使用場所などと考えていた学校と家庭との意識の差がみられた。

 なお、家庭での約束事がない児童生徒は、約束事がある児童生徒に比べて、3時間以上使用している割合が有意に高いことが分かった。

▽平日の使用時間と自覚症状の関係

 自覚症状を聞く設問は複数回答で、小学校も中学校も使用時間が長いほど多くの自覚症状があると回答している。小学校では3時間以上使用している児童は、3時間未満の児童に比べて心身の不調を感じることが有意に多かった。中学校では有意差は認められなかった。

 「疲れやすい」「朝起きるのがつらい」については、使用時間にかかわらず多くの児童生徒が「ある」と回答している。これは児童生徒の生活習慣全般に起因する結果であり、その一つが電子メディアの使用であると考えられる。

 また、使用時間が長い児童生徒ほど「何もやる気がしない」「集中できない」に「ある」と回答している割合が高かった。

▽幼稚園の保護者が心配していること、困っていること

 アンケート調査の自由記述から、小・中学校で危惧されている内容や、現在の小中学生の実態から将来を不安視するもの、使用開始の低年齢化による不安や悩みが浮き彫りになった。

(札幌市 2021-01-14付)

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