上川管内4年度教育推進の重点 安心・安全と学力向上 岸本局長 学校など一体で取組
(道・道教委 2022-04-27付)

上川教育局長・岸本亮
上川教育局・岸本亮局長

 【旭川発】上川教育局の岸本亮局長は15日、管内公立小中学校長会議(オンライン開催)で4年度教育推進の重点を説明した。スローガンを「ふるさとを愛し、夢と志をもって、可能性に挑戦するために」と設定し「豊かな人間性の育成」「社会で活きる力の育成」「安心・安全に学ぶことのできる学校・地域づくり」「管内教育に必要な事項」の4点について解説。「市町村教委、学校と一体となって“安心・安全”“学力向上”を最重点テーマに管内教育の充実・発展に取り組む」とする意向を示した。

 教育推進の重点の概要はつぎのとおり。

 本年度は、昨年から一層の重点化を図り「安心・安全」「学力向上」を最重点テーマに据え、管内の子どもたち一人ひとりに育成する資質・能力として2点、育成の下支えとなる学校・地域の体制整備として1点、その他として1点の項目に整理し、特に取り組んでいただきたい内容を明確にして示した。

▼豊かな人間性の育成

 少子化の昨今、管内の各学年の人数は10年前の4000人台から現在はおよそ1000人減少し、2年の出生数はいよいよ2690人となるなど、一人の子どもも取り残すことのできない時代を迎える。

 そのような中、上川管内においては安心で安全に過ごすことのできる学校・地域づくりは不可欠と考え、最重点テーマに「安心・安全」を掲げた。

 最重点テーマ「安心・安全」のもと、育成を図る豊かな人間性について2点の具体的方策を示す。

 1点目「道徳教育等の充実」について、特にお願いしたいことは「よりよく生きるための道徳性を養う指導の充実」「いじめを許さない学級経営と学級風土づくり」「道徳における地域人材の積極的活用」の3点である。

 管内においては、全国学力・学習状況調査において「自分にはよいところがある」と回答した児童生徒の割合が約75%であり、全国と比べて自尊感情が低い傾向である。

 道徳性を養うため、学校および地域において「考え、議論する道徳の一層の充実」「地域住民との積極的なコミュニケーション活動の実施」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、道徳の指導や地学協働にかかる研修事業の工夫改善および道徳教育の教材等の活用・作成に努める。

 2点目「いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実」について特にお願いしたいことは「いじめの防止に向けた組織的な取組の一層の推進」「不登校児童生徒に対する組織的な支援体制の確立」の2つである。

 管内においては、いじめの積極的・正確な認知や不登校児童生徒への支援に一層組織的に取り組むことが大切である。

 いじめ、不登校への対応として、学校において「小さなサインを見逃さない教員の児童生徒理解の力を強化」「学校外の子どもの居場所づくり」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、いじめ問題等外部専門家チームをはじめ、関係する専門機関と連携を図りながら、市町村教委や学校の支援に努める。

▼社会で活きる力の育成

 安心・安全に過ごせる学校・地域の中で、上川管内の子どもたちが、今、求められている資質・能力を確実に身に付けるよう、最重点テーマの2つめとして分かりやすく「学力向上」として掲げた。

 最重点テーマ「学力向上」のもと、育成を図る「社会で活きる力」について3点の具体的方策を示す。

 1点目「学校・地域における確かな学力の育成」について特にお願いしたいことは「カリキュラム・マネジメントの効果的な推進」「主体的・対話的で深い学びの実現」「地域・家庭における望ましい生活習慣・学習習慣の確立」の3点である。

 管内においては、これからの学力観として、子どもが自らの能力を将来出会う課題の主体的な解決に生かしていくことができるようにすることが重要である。

 そのため、学校および地域において「子どもが考える場面、時間を充分に確保した授業づくり」「子ども自身の考えを表出するツールとしての1人1台端末を活用した授業づくり」「保護者が子どもの望ましい生活習慣や学習習慣を学ぶ機会の提供」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、学力向上研修会、ICT活用に係るプロジェクトIPPOの継続、義務教育指導監や指導主事の指導助言、道内外の実践事例や校内研修に役立つ資料の提供に努めるとともに、管内PTA連合会と連携した子どもの望ましい生活習慣・学習習慣定着研修事業の開催などに努める。

 2点目「特別支援教育の充実」について特にお願いしたいことは「個別の教育支援計画の活用による関係機関と連携した切れ目のない支援の充実」「障がいのある幼児児童生徒の指導にかかる専門性の向上」の2点である。

 管内においては、通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒への指導の充実等が求められている。

 そのため、学校・地域において「個別の教育支援計画の作成・活用の一層の促進」「全ての教員等による特別支援教育に関する指導について理解を深める校内研修の充実」「地域における合理的配慮・インクルーシブ教育に関する理解の促進」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、管内特別支援連携協議会の協議内容も踏まえ、各学校の研修等の参考となるよう、研修事業の工夫改善や好事例の情報提供に努める。

 3点目「体力・運動能力の向上」について特にお願いしたいことは「運動やスポーツの楽しさや喜びを味わうことのできる体育、保健体育授業の充実」「学校の創意工夫による体力向上の取組の推進」の2点である。

 管内においては、体育、保健体育授業の指導力の向上を図る校内研修の実施や1校1実践など授業以外の時間を活用した体力向上の取組の継続が求められている。

 各学校においては「新体力テストの実施時期の見直し」「運動の喜びを味わう体育、保健体育の授業改善」「地域ぐるみで行う体力づくりの取組の充実」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、児童生徒が課題を意識して学習活動に取り組む保健体育の授業改善について、支援に努める。

▼安心・安全に学ぶことのできる学校・地域づくり

 最重点テーマ「安心・安全」と「学力向上」を支える学校・地域の体制整備を第3の項目として掲げており「安心・安全に学ぶことのできる学校・地域づくり」として5点の具体的方策を示す。

 1点目「児童虐待への対応強化」について特にお願いしたいことは「虐待から子どもを守る学校・地域の体制整備」「関係機関への速やかな通告・情報提供」の2点である。

 各学校においては「児童生徒の見守り体制の強化と通告をためらわないなどの適切な対応」に努めていただくようお願いする。

 2点目「学校段階間の連携・接続の推進」について特にお願いしたいことは「“幼児期の終わりまでに育ってほしい姿”を軸とした幼・小の接続における教育活動の充実」「中学校区における生徒指導や学習状況の共通理解を図る取組の推進」「高校教育への接続を見据えた義務教育段階で身に付けておくべき資質・能力の着実な育成」の3点である。

 それぞれ、幼小、小中、中高の連携について示した。

 特に中・高の接続については「キャリア・パスポートによる引き継ぎ」に取り組んでいただくようお願いする。

 3点目「学校運営の改善」について特にお願いしたいことは「ウィズコロナ・ポストコロナに対応した持続的な学校運営」「管理職のリーダーシップによる包括的・継続的な学校改善」「北海道アクション・プラン(第2期)を踏まえた働き方改革」「教職員の服務規律、法令順守の徹底」の4点である。

 各学校においては、特に「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドラインに基づく学校運営」に取り組んでいただくようお願いする。

 4点目「学校安全教育の充実」について特にお願いしたいことは「生活安全、交通安全、災害安全に関する教育の充実」「関係機関と連携を図った危機管理対応の充実」の2点である。

 各学校においては「防災・防犯はもとより、いじめ等に起因した保護者とのトラブル、給食の異物混入事故など、あらゆる危機対応場面で最悪の事態を想定し、プロアクティブの原則に基づいた適切な対応」に努めていただくようお願いする。

 5点目「学びを支える家庭・地域との連携」について特にお願いしたいことは「家庭教育支援の充実」「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の充実」「地域全体で子どもを育てる見守り体制の確立」の3点である。

 学校・家庭・地域・行政が連携・協働し「保護者が家庭教育の悩みを共有・相談できる機会の提供」「家庭教育支援を担う人材の育成と資質向上を図る機会の提供」「学校と地域が目標やビジョンを共有する機会の設定」「コミュニティ・スクール、地域学校協働活動の内容や成果等の理解を深める機会の設定」「地域学校協働本部の設置や地域学校協働活動推進員等の配置」に取り組んでいただくようお願いする。

 教育局としては、家庭教育支援者を対象とした研修や交流会の実施など、望ましい生活習慣の定着や家庭の教育力の向上に向けた取組を推進するとともに、地域と学校の連携推進協議会や放課後活動推進協議会、上川教育研修センターと連携した学校・家庭・地域の連携講座の開催などに努める。

▼その他 管内教育に必要な事項

 その他の管内教育に必要な事項については「ふるさと教育の充実」「国際理解教育・キャリア教育の充実」「健康教育の充実」「社会教育の振興」の4点を具体的方策として示す。

 教育局としては、それぞれの項目の事業・研修等の充実に努める。

▼むすびに

 人口減少・少子高齢化の進行や産業構造の変化、ICTやグローバル化の進展などによって人々の価値観や生活様式が大きく変わり、従来の知識や経験では解を見いだすことが難しい時代において、子どもを誰一人取り残さない多様な学びと安心な居場所を築くこと、そして、この逆境や制約を受け身ではなく変革の扉と捉え、子ども一人ひとりが新たな夢や目標を描き追い続けることが求められている。

 子ども一人ひとりが夢や目標を描けるよう学校・家庭・地域・行政が役割と責任を果たし、相互に連携・協働していくことで、より一層効果が上がるものと考える。

 教育局としては、本年度も市町村教委や学校と一体となって「安心・安全」「学力向上」を最重点テーマとして管内教育の充実・発展に取り組むので、4年度の管内教育の推進に向け理解と協力をお願いする。

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上川管内教育の推進に向けて
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