「アニマドーレ」農家訪問 札幌市立高校間連携プログラム 農業成功の秘訣に迫る
(札幌市 2022-09-21付)

 札幌市立高校生を対象に食と農業に関する教育プログラムを展開する市立学校間連携プログラム2022年度「アニマドーレ」農家訪問が8月下旬、オンラインで開かれた。市立高校の生徒19人が参加。道内で活躍する3人の農家がそれぞれが持つ農業の特色やこれまでの成功体験などを語った。

 今回、講師を務めたのは、駒谷牧場(様似町)の西川奈緒子さん、コモレビファーム(札幌市)の稲野辺努さん、えづらファーム(遠軽町)の江面暁人さんの3人。

 西川さんは、平成13年からの10年間に起きた、口蹄疫、牛海綿状脳症(BSE)、牛肉偽装等の各種問題の経験を経て実施している完全放牧の野生牛について説明。まだ生産量は少ないものの、今では、月に2頭ずつ、年間24頭のウシを出荷できるようになり、経営も安定してきていることを伝えた。

 また、農業で大切にしていることとして①畜産の原点(人間が食べられない草を食べて、乳や肉に変えてくれる)②アニマルウェルフェア(家畜福祉/牛らしく生きている間は健康的で幸せに)の精神③100年、1000年先も、胸を張って後世に引き継げる健康な農地を―の3点を挙げた。

 その上で、生徒たちに向け「目標を見つけたら突き進むだけ。自分が諦めなければ、負けや失敗にはならない。そして、笑う門には福来たるは本当だから、いつでも笑顔を忘れずに」とメッセージを贈った。

 東日本大震災を機に、都会からの移住を考え始めた稲野辺さんは「札幌には今でも農村地帯が多く存在していて、ここ10年くらいの間に札幌で新規就農した人が何人もいる」と説明。その上で稲野辺さんは、細かく砕いた木のチップを畑に入れる、それ以外には堆肥も肥料も一切使わないという農法を選び、これまで実践してきた。

 実践の結果、「何年もの間、満足に作物が育たず、農業で収入を得られる状態ではなかった」と振り返り、何年も挑戦し続けた結果、見事作物が育ち始め、プロのミニトマト農家としての道が開けたことを紹介。稲野辺さんは「100人いれば、100通りの作り方があるのが農業。正解も不正解もない」と強調した。

 江面さんは、新規就農者としては珍しい大規模の畑作農家からの事業継承で、平成24年に就農。「将来、子育てをどのような環境でするのが良いか。子どもとの時間を大切にできる仕事は」と考え、農業の仕事を選んだ。

 就農以降は、農産物のネット販売や、農作業の住み込みボランティア受け入れなどを開始。また、農家民泊(簡易宿泊所)の認可の取得や農作業を通じた企業研修の事業化、海外からの住み込みボランティア受け入れの開始、ジャガイモを使った加工品の商品化・収穫レストラン「TORETATTE」の開業などこれまで様々な取組に挑戦してきた。 

 今では、遠軽町白滝という人口500人ほどの地区に、人口以上の交流人口を生み出しており「農村・田舎は何もない。でも何もないことが都会の人にとっては大きな価値になる」「農業は、未開拓の部分が多いからこそ、発想や工夫次第でビジネスチャンスはいくらでも見いだせる」と語った。

(札幌市 2022-09-21付)

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