教育改革へ教職員の意識変える 新谷校長(北斗市大野小)が渡島の取組紹介 道小研究大会(関係団体 2015-10-06付)
【帯広発】第五十八回道小学校長会教育研究十勝大会(九月十八日付2面既報)の第三分科会「評価・改善」では、「教職員の意識改革に向けた人事評価と校長の在り方」をテーマに研究発表が行われ、北斗市立大野小学校の新谷公康校長が渡島地区の取組を紹介した。
研究発表の概要はつぎのとおり。
【研究のねらい】
教育改革を進める学校づくりに向けては、人事評価をツールとした組織マネジメントの改善策を通した取組を推進していく必要がある。
そのためには、①人事評価を活用した校長の目指す姿②人事評価と校長の関与性③人事評価の活用と工夫④人事評価と校長の関与性における成果と課題―などを明確にすることが教職員の意識改革につながり、教育改革を進める学校づくりを推進できるものと考える。
本研究では、渡島管内各小学校における実践の調査をもとに、教職員の意識改革に向けた人事評価と校長が果たすべき役割と指導性について究明する。
【研究の概要】
◆調査研究~実態把握と課題の解明
▼調査の概要
▽実施時期 平成二十七年二月
▽調査対象 渡島管内すべての小学校四十八校
▽調査方法 四十八校のすべての小学校に調査用紙を配布し、一〇〇%回収後に集計を行った。調査方法は、質問紙による自由記述。
▼調査結果の概要
人事評価と校長との関与性について、つぎの三つの大きな視点で記述式によるアンケート調査を行った。各設問の趣旨は、「評価者としての校長の意識について、校長の高い評価意識が人事評価を支える」、「コミュニケーションとしての人事評価」について、コミュニケーションの改善が職能成長や意欲向上、学校の活性化を支える」、「目標管理と適正な評価について、評価結果を効果的に活用することで学校経営の推進を支える」である。
◇評価者としての校長の意識
▽評価者としての校長自らの評価意識について
「自らの評価意識が十分」―一六・七%、「どちらかと言えば十分」―七二・九%、「どちらかと言えば不十分」―一〇・四%。
▽評価意識を高める工夫や心がけ
「学校教育目標の達成」「学校改善につなげる」「学校の活性化」「導入の趣旨」などのキーワードを挙げている学校―二七・一%、「日常実践(授業観察、教育活動等)の観察記録」を挙げている学校―三一・三%となった。
▽課題
「校長自身の評価力を高める」―二五・〇%、「評価資料や記録化の時間等の確保の難しさ」―一八・六%が挙げられている。
また、「評価者としての意識がどちらかといえば不十分である」と応えた学校のほとんどが、評価情報の不十分さを課題として挙げている。
したがって、明確な経営ビジョンをもち、具現化する戦略を多数もっていること、校長としての資質・能力や評価能力と人間性を含めた信頼される評価者を目指すことが必要である。
◇コミュニケーションとしての人事評価について
▽面談実施回数について
一年間における面談の実施回数については、年三回の実施―四七・九%、年二回の実施―五二・一%で、二回と三回がほぼ半々であった。
▽面談による教職員個々の意識改革や職能成長の達成度について
「十分」―一〇・四%、「どちらかといえば十分」―六八・八%、「どちらかといえば不十分」―二〇・八%となった。
▽面接を行う上での工夫や心がけ
前設問で十分と答えた中では、「受容的に聴く」「穏やかな雰囲気づくり」「よさを褒める」「課題を重点を絞って伝える」などの工夫や心構え、また、どちらかといえば不十分と答えた中では、日常的な観察の上に立ったコミュニケーションを重視する傾向がみられた。
▽課題
「意識改革や意欲向上につながる指導助言」―二〇・八%、「時間の確保・ゆとりある面接の時間がとれない」―〇・八%、「評価者としての資質・能力の向上」―一二・五%、「客観性を帯びた評価資料の整理」―一二・五%であった。
・教職員一人ひとりの「よい点」を積極的に見いだし、それらを伸ばす肯定的評価が個々の教職員の意識改革や職能向上および成長につながる。
・日常的な観察から明らかになった成果と課題を面談時だけで伝えるのではなく、日常的に機会をとらえて、タイムリーに指導助言やアドバイスをした方がより効果的である。
◇目標管理と適正な評価について
▽適正な評価を行う上での工夫や心がけ
「プロセス重視の評価」―一・・六%、「客観性や公平公正性」―二三・四%、「日常観察」―二一・二%であった。
▽自己目標シートや評価者評価(シート)を生かす工夫や心がけ
「教職員一人ひとりが自己目標を意識して業務を進めるような関与性」―二一・二%、「学校の目標や課題と、自己目標との整合性」―八・五%であった。
▽評価結果を効果的に活用するための工夫や心がけ
「次年度の学校経営や学校課題として、人員配置に活用する」―一二・三%、「学級経営および分掌業務に分けた成果と課題を共有する」―二・・八%であった。
▽課題
評価結果を伝えるが、教職員おのおのの意識の違いや、次年度の分掌担当が変わることで課題が引き継がれないなどが挙げられている。
評価資料の収集、評価結果を導くために参考となる情報の蓄積がどれだけできるかによって、信頼性、客観性のある、適正な評価につながる。
◆経営研究
▽調査結果から、学校経営に人事評価を効果的に活用し、学校づくりを推進するためには、被評価者である教職員の納得がいく評価結果の作成を意識しなければならない。納得感のある評価結果になれば。「妥当な評価がなされた」という正当性や信頼性につながっていくことになる。したがって、納得感のある評価結果を導くまでの時間と労力を十分にかけることが肝要である。
▽調査結果から、評価結果を伝達する校長の「姿勢」が問われる。教職員の尊厳や自尊心を重んじ、本人の成長を心から願って伝えることが肝要である。被評価者の話を傾聴する心構えがあることを伝えて安心感をもたせるなど、信頼関係の構築が必須となる。
▽調査結果から、被評価者が評価に関与できる機会や、評価結果の再構成を図って改善・向上させていくための機会等が、どれだけ用意されているかが重要となる。
◆実践研究
「実践研究1 A小学校」教職員数三十人以上の規模
▼実践のねらい
教職員の努力や成果を評価して意欲を高め、資質・能力の向上を図り、その成果が児童生徒に還元されることを目的とした人事評価
▼実践内容
▽学校職員評価制度について、制度の目的や当初面談に至る流れについて事前に十分説明する。
▽自己目標シートの作成・記述について、具体的に実践内容が分かるように記述させる。
▽各分掌の課題や学校課題を全職員に周知させるために、課題一覧表を作成し、取組状況を年二回発表するように学校評価の計画に組み入れる。
▽面談の時間を有効に使うため、学力向上と各分掌の重点課題についてのみ説明させるように計画する。
▼校長の関与性
▽面談の時間を教職員一人ひとりとかかわり合える貴重な時間ととらえ、日常の教育実践における努力を認め、ねぎらいの言葉等を添えることを心がける。
▽市町の教育行政執行方針、学校評価、学校評議員会議などで明確になった教育課題を的確にとらえ、学校課題としてピックアップし、一覧表等を作成して全職員の共通課題とする(課題の共有化)。
▽課題に対する具体的な方策に対して、指導助言を行い、具体的な方向性を示す。
◆「実践研究2 B小学校」教職員数二十人程度の規模
▼実践のねらい
自己目標を立てることにより、一年間の見通しをもって取り組むことができ、個々の教職員の意欲向上を図る人事評価
▼実践内容
▽年度当初の職員会議で、学校職員評価制度について説明し、年間の評価計画を提示する。
▽面談(当初・中間・最終)
・五月―自己目標設定、シート作成への指導助言
・十月―目標達成への取組状況に対する指導助言
・三月―自己目標の反省と指導助言
▼校長の関与性
▽当初面談では、学校教育目標に沿った中身で、実効性のある内容であるかなどについて指導助言する。最終面談では、教職員の資質向上や次年度への意欲を高める観点で面談を実施する。
▽毎日のショートタイムの授業観察と、校内研修や研究会等の授業研究などの定期的な授業観察を行う。
▽分掌で担当している業務内容の確認を徹底する。
◆「実践研究3 C小学校」教職員数十人以下の規模
▼実践のねらい
学校教育目標の達成に向けて教職員の資質・能力および職能意欲の向上を図り、学校を活性化するための組織マネジメントの理念や手法を基盤とした人事評価
▼実践内容
▽P・D・C・Aマネジメントサイクルを活用して、業務推進を図る。
▽適時性(タイムリーさ)をより重視し、「いつ、どこで」にこだわらない対話や面談を適宜実施する。
▽教職員が、厳しい目で「査定されている」のではなく、温かなまなざしで「評価されている」と感じ、教職員個々の意欲向上につながる情報提供を適宜行う。
▼校長の関与性
▽教職員数が少ないというメリットを最大限に生かし、「校長と個々の教職員(一対一対応)」のコミュニケーションを中心に据える。
▽面談では、コーチングの手法を取入れ、教職員が描く到達点と具体的な取組について引き出す。
▽成果主義のみにとらわれ過ぎず、個人差や能力差を考慮した評価基(規)準を設定するとともに、評価項目にはない、みえにくく、表面上には表れにくい業務への貢献度などについても評価の対象と考える。
【まとめ】
▼成果
▽校長自らが率先して定期的な面談を行うことにより、教職員が自己目標の設定や達成状況を確認する姿勢がみられるようになってきた。
▽校長が円滑な職場環境づくりを図ることで、職員室内に教職員相互が前向きな評価をし合い、切磋琢磨し、高め合う同僚性が根付き、浸透してきた。
▽堅苦しい面談ではなく、悩みなどを傾聴することで、校長はメンタルヘルス面や学校運営上の課題等を確実に把握でき、教育活動の充実・改善が図られた。
▽目標や課題の焦点化により教職員の意識が高まり、実効性のある、具体的な取組が行われるようになった。
▼課題
▽学力・体力向上について、担任だけに大きな負担を強いることがないよう、校内の教職員全員で支援できるような協働体制を整備していく必要がある。
▽「学校課題の解決を目指す自己目標」という基本的スタンスの共有化を図るための効果的な方策が難しい。
▽面談や声かけなどの時間が不十分な現状から、日常的・建設的で円滑なコミュニケーションと、洞察力などを駆使した適時性のある早期発見・対処が肝要である。
(関係団体 2015-10-06付)
その他の記事( 関係団体)
あるべき適正な給与水準を 地公三者共闘会議が声明発表
道公務員共闘会議地公三者共闘会議(=地公三者共闘会議。全道庁労連、北教組、自治労道本部)は二日、「二〇一五北海道人事委員会勧告に関わる声明」を発表した。単身赴任手当の基礎額をことし四月に...(2015-10-08) 全て読む
しなやかな心もつ子の育成 全国小学校道徳教育研究大会等開催
【釧路発】第五十一回全国小学校道徳教育研究大会・第四十九回全日本中学校道徳教育研究大会・第五十回道道徳教育研究大会釧路大会が九月中旬の二日間、釧路市生涯学習センターなどを会場に開催された...(2015-10-08) 全て読む
地域とともにある公民館へ 第59回道公民館大会開く
道公民館協会(川上満会長)・公益社団法人全国公民館連合会(石川正夫会長)は一日から二日間、恵庭市島松公民館で第五十九回道公民館大会兼全国公民館連合会道ブロック大会を開催した=写真=。道内...(2015-10-07) 全て読む
教育にゆたかな創造を 道特別支援学級教育研究連盟全道大会
【岩見沢発】第六十三回道特別支援学級教育研究連盟全道大会空知大会・全日本特別支援教育研究連盟北海道地区研究集会、第四十二回道情緒障がい教育研究会空知大会、第二十六回空知特別支援教育研究大...(2015-10-07) 全て読む
道へき複教育研究連盟がプレ大会 未来に“生きる”力育成 渡島管内9会場で授業公開など
【函館発】道へき地・複式教育研究連盟(田中和敏委員長)は九月二十五日、第六十五回全道へき地複式教育研究大会渡島プレ大会を開催した=写真=。大会主題「主体的・創造的に学び、豊かな心でたくま...(2015-10-06) 全て読む
指定に向けた取組協議 第1回道文化財保護審議会 道教委
道文化財保護審議会(会長・臼杵勲札幌学院大学教授)の二十七年度第一回審議会が九月二十五日、道庁赤れんが庁舎で開かれた=写真=。道指定文化財の指定に向けた取組について協議を行った。 同...(2015-10-06) 全て読む
情セン・タブレットPC活用講座 ICT活用指導力高め 基本的な操作方法など学ぶ
道立教育研究所附属情報処理教育センターは九月初旬の二日間、同センターで「授業におけるタブレットPCの活用研修講座(高・特)」を開催した。高校と特別支援学校の教員十五人が参加。講義・演習を...(2015-10-06) 全て読む
石狩管内小中校長会がAブロック研 学校経営の方向性確認 小中連携・ミドルリーダー育成など
石狩管内小中学校長会(畠山昌平会長)は九月中旬、恵庭市民会館でAブロック研修会を実施した=写真=。千歳市、恵庭市、北広島市から計四十七人が参加。研究主題「新たな時代を切り拓く〝生きる力〟...(2015-10-02) 全て読む
27年度国研教育課程研究指定校―道内分 新たに6校、8分野で指定
文部科学省国立教育政策研究所は、二十七年度の教育課程研究指定校を決定した。道内では新たに六校、八分野で指定を受け、二年間の研究を進めていく。学習指導要領の指導状況、および、これまでの全国...(2015-10-02) 全て読む
27年度地方教育行政功労者文科大臣表彰渡邊氏など8人が栄誉6日に文科省講堂で式典挙行
文部科学省は九月二十九日、二十七年度地方教育行政功労者表彰(文部科学大臣表彰)の受章者を発表した。本道からは小清水町教委の渡邊等教育長など八人が栄誉に輝いた。表彰式は六日に東京都内の文部...(2015-10-02) 全て読む