道教委アクティブ・ラーニング調査研究プロジェクト 授業改善の在り方模索 旭川で推進地域連携協議会・調査報告会
(道・道教委 2016-02-23付)

AL推進地域連携協議会
旭川市立朝日小の研究報告やシンポジウムを行った

 【旭川発】道教委は十日、上川教育研修センターで課題解決型授業(アクティブ・ラーニング=AL)に関する調査研究プロジェクト二十七年度第二回推進地域連携協議会・調査報告会を開催した=写真=。同プロジェクト実践推進校の旭川市立朝日小学校(中山雅文校長)が研究報告。このほか、愛知教育大学の野田敦敬教授、道立教育研究所の鈴木淳企画・研修部長、同校調査研究担当の櫻井啓子教諭によるシンポジウムを行った。約百三十人が参加し、ALを取り入れた授業改善の在り方を考えた。

 同プロジェクトは、ALによる効果的な指導方法の確立に向けて調査研究を行う事業。旭川市を推進地域とし、朝日小を実践推進校としたほか、連携協力校として、大有小学校、青雲小学校、永山西小学校、近文小学校、新町小学校の五校を指定している。これまで、六校による研究チーム「ALPS」を中心に研究を進めてきた。

 具体的には、子どもたちの思考の活性化を図るための授業像を明確化したアクティブ化シート(十二日付3面既報)を作成。単元および一単位時間における指導の留意事項をまとめた二種類のシートをもとに研究授業を行い、効果的なものとなるよう検証してきた。

 冒頭、あいさつに立った中山校長は「子どもの学習意欲を高めながら、〝分かった〟〝できた〟と実感できる授業改善を目指すことが重要」と強調。「本日は、子どもたちにどのような力を授業で身に付けさせれば良いか、皆さんで考えてもらえれば」と呼びかけた。

 つぎに、櫻井教諭と新町小の菅野裕介教諭がこれまでの調査研究を報告した。ALを進める上で、学級経営の重要性を挙げ、支持的な学級風土をつくることで、授業でより強い課題意識を子どもにもたせられることを伝えた。

 また、ALに当たって、子どもの実態を把握し、学習のねらいに沿った場面となるよう、教師が意図的に仕組むよう推奨。加えて、子どもたちが自分の考えをインプット・アウトプットする双方向的な対話と、学習内容および学び方に対する振り返りの大切さを説いた。

 このほか、環境整備の重要性を指摘した。指導方法の工夫改善および研修を補助する加配教員の配置、実物投影機やタブレット端末などICT機器の充実が、ALの効果をより高めることを紹介した。

 菅野教諭は「シートは、これまでの指導過程の一部に取り入れるだけで、子どもたちの学びが協働的・主体的になるはず。皆さんの手で使いやすいよう改善してもらえれば」と述べた。

 このあとの質疑応答では、学習の振り返りや個人思考の場面における留意点、従来の問題解決学習とALの違いなどについて質問が上がった。

 櫻井教諭は「一学期中から、思考場面や振り返りの場面などにおいて、〝何分かかりそう?〟と問いかけ続けることで、時間の見通しがもてるよう訓練してきた」「個人思考を深めるために、学習で分かったことを毎時間ノートに書かせるなどして、目に見える形として残すことが大事。そうすることで学びが連続し、様々な場面で対話が深まる」と助言していた。

 また、「従来の課題解決学習では、子どもの問題解決のために教師が指導していくものだった。これからは、教師が子どもの思いを大切にした上で、何をすべきか見つめ直す授業づくりが求められる」と話した。

◆ALの進め方議論 野田教授らがシンポジウム

 調査研究報告後、朝日小の玉井一行教頭による進行のもと、愛知教育大の野田教授、道立教育研究所の鈴木部長、櫻井教諭の三者でシンポジウムを行った。テーマは「アクティブ・ラーニングをどのように進めていくのか」。①これからの授業づくりのイメージ②これからの教師に必要な資質能力や意識改革―の二点を柱に、途中、参加者からの質問なども交えて討論した。

 各シンポジストの発言要旨はつぎのとおり。

▼これからの授業づくりのイメージについて

▽野田教授=ALでは、「対話的な学びの過程」が重視される。今後、授業を進めていく上で、子どもも教師も相手の話に耳を傾ける学校文化の形成が求められている。そうすることで子どもたちの社会に役立つ資質能力の向上につながるため、対話的な学びの形成を工夫することが必要。

▽鈴木部長=管理職、中堅教員、教科担任と学級担任の三つのキャリアステージでそれぞれがALの授業改善を模索していくことが大切。管理職は、ALを位置付けた教育課程を学校経営に反映させる、中堅教員はカリキュラムマネジメントの視点で授業改善する、担任はこれまでの授業を見つめ直し継続すべきことと改善点を明らかにしてみては。

▽櫻井教諭=授業は子ども主体ということに教師は立ち返るべき。子どもが主体となれるよう、教師が子どもに寄り添いながら授業をつくることが大切。

▼主体的・協働的な学びのイメージとは

▽野田教授=主体的学びは、学習対象や課題が自分あるいは自分の生活に結び付くこと。それでいて、子どもたちが本気になれることが重要。協働的な学びは、学習する価値について、子どもたちが相互にメリットがあるのが大事な条件。お互いが成長する学習を展開してほしい。

 また、教師は単元の意義をしっかり理解した上で教材研究を進めるべき。教師の情熱が子どもたちや地域にも伝わる指導を意識してほしい。

▽鈴木部長=個と集団を行き来しながら、自分の学びを獲得することが主体的・協働的な学びの姿。そうして、獲得した学びを自分のものとして活用したくなることが、つぎのステップにつながり、学びが連続していく。

▽櫻井教諭=主体的な学びは、高い学習意欲もち、意欲が消えることなく、単元を通して学ぶ姿。協働的な学びは、一人ではなく友達と学ぶことで、子どもたちの思考が活性化するもの。子どもに強い課題意識をもたせるために、教師としての引き出しをたくさんもつよう努力することが大事。

▼これからの教師に必要な資質能力や意識改革について

▽野田教授=子ども理解が不十分だと効果的なカリキュラムマネジメントや学級経営、ALができない。子ども理解が教師に必要な資質能力だと思う。

▽鈴木部長=教頭やミドルリーダーにもってもらいたい資質が学習評価。子どもの学びが一時間の目標に具現化されている動きになっているか、個の変容が評価されているかが大切。学習評価をカリキュラムマネジメントと両輪で進めた上で、学校全体でとらえ、検証していくことが求められている。そして、目指す子ども像の実現のためには授業を構想する力が必要。意識改革については、教員研修、校内研修を切り口に進めてみては。その際は、本研究所を活用してほしい。

▽櫻井教諭=子どもを見取る力が重要。ALをより良くしていくために、教師間のネットワーク、つながりを構築して情報を集める必要がある。

▼これからの教師に必要な資質能力の高め方とは

▽野田教授=本学では、学生が学んだことが教育現場でどう活用されているか知る機会を設けている。また、単位を取得できる学校サポート活動を設け、学生に学習ボランティアを行わせている。その中で、大学で学んだことが子どもたちにどのように受け止められているのか、子どもと接する楽しさや対応を学ぶことで、教師のベースとなる力を養っている。また、自然体験多文化体験、就業体験などの様々な経験が教師になったときに生きてくると思う。

▽鈴木部長=発問や指示、板書、課題提示、その際の子どもたちの反応など、自分の授業を見つめる目を養うことが、主体的・協働的学びにつながる。学校全体がもっている良さを結集し、組織的に授業改善を図ることで、必要な資質能力の向上につながっていく。校内研修三ヵ年で持続的、組織的にワークショップを実施するなど、先生方が一体となって校内研修を活性化させていくことが必要。

▼校内でALを進める上で職員にも協働していく価値を説明する場合はどうすればよいか

▽野田教授=対話的な学びにおいて、協働する場面をつくることで、子どもや教師がお互いに成長につながり、子どもたちの社会に役立つ資質能力の向上につながることを示してみては。

▼ALにおける具体的な振り返りの形とは?

▽野田教授=授業の最後の五~十分に、きょう思ったことをワークシートに書くような振り返りは良くない。一単位時間あるいは単元の学びを子どもが振り返って、つぎの授業につなげたいと思うことで効果のある振り返りになる。そのため、子どもが振り返りたいと思える場面を構成することが重要となる。

▼総括

▽野田教授=これからは、「聞いて考えてつなげる授業」が求められる。聞くことは学び合うための汎用的な技能。低学年のうちからそういった授業を行うことが大切。

 聞くにしても話すにしても音声情報だが、そこを子どもたちが言語情報にしていくためには、教師の言語力、板書力が求められる。教師の真ん中にある黒板をうまく活用することがALで重要となる。低学年から取り組んで変えていくことが、日本の教育を変える原動力となるのでは。

(道・道教委 2016-02-23付)

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