5個人、1校の功績称賛 29年度札幌市教育実践功績表彰(市町村 2018-01-30付)
長岡教育長(左)が受賞者に表彰状を授与した
札幌市教委は二十六日、札幌すみれホテルで二十九年度札幌市教育実践功績表彰を執り行った。学校教育の振興に貢献した五個人と一校に長岡豊彦教育長が表彰状を授与。受賞者は札幌市学校教育の今後の充実・発展に向け、決意を新たにした。
同表彰は市教委が十四年度から行っているもので、十九年度からは新たに学校表彰を加えている。
本年度の受賞者は札幌旭丘高校の石黒清裕校長、札幌市立円山小学校の野寺克美校長、北都中学校の富川浩校長、市立札幌開成中等教育学校の西村里史教諭、手稲東小学校の千葉直美栄養教諭の五人と、柏中学校(蛯名嘉津夫校長)となっている。
式の冒頭、長岡教育長があいさつ。社会情勢について、少子高齢化や人口減少といったこれまでに経験したことがない大きな課題に直面するなど、今後より一層困難な状況が想定されることにふれ「札幌の未来を担うさっぽろっ子の健やかな成長のために、知恵や工夫を凝らしながら、夢を追う心や夢を実現する力を育むという使命を果たすことが重要」と述べた。
また、教育上の課題にふれたほか、受賞者に対して「今後もこれまで培ってきた優れた技量や見識をさらに発揮し、引き続き札幌市学校教育の振興・発展のため、気概と誇りをもって活躍してほしい」と呼びかけた。
続いて、檜田英樹教職員担当部長が受賞者の功績を紹介。長岡教育長が一人ひとりに表彰状と記念の盾を手渡した。
お祝いのことばでは、札幌市議会文教委員会のよこやま峰子委員長が新学習指導要領や昨年八月の中央教育審議会の内容にふれ「今日の教育を取り巻く環境は大きな転換期を迎えている。札幌市議会でも文教委員会が中心となって時代の変化を感じ取り、市民の皆さんが安心して子どもたちを育むことができるよう教育環境の充実・発展に向けて全力で取り組んでいる」と述べた。
受賞者の取組について「わが国の未来を切り拓く子どもたちを育むとともに、将来の札幌市を形づくる礎となる。今後も札幌市の教育の発展、そして将来の札幌市のため、なお一層活躍いただくとともに、あとに続く者の道しるべとなり、教育に対する高い志を伝えてほしい」と呼びかけた。
受賞者代表あいさつでは札幌旭丘高の石黒校長が登壇。札幌市教委や先輩の指導・支援のほか、家族の支えなどに感謝の気持ちを述べるとともに「これからも自立した札幌人の育成を目指し、学校種・職種を超えてチームとして市民が誇れる市立学校・幼稚園をさらに発展させるべく、それぞれの立場で力を尽くしたい」と述べた。
◆受賞者・校の功績
二十九年度札幌市教育実践功績表彰の受賞者および受賞校の功績はつぎのとおり。=敬称略=
【個人表彰】
▼石黒清裕(札幌旭丘高校長)
教頭、副校長および校長として三校を歴任し、厚い人望と強いリーダーシップによって札幌市の高校教育を牽引してきた。札幌啓北商業高校定時制課程閉課程、札幌開成高校閉校に携わるなど、中心的な役割を担った。また、札幌開成高校では、SSH、SGHの指定を受け、専門学科「コズモサイエンス科」を含めた同校の発展に貢献し、二十六年度札幌市教育実践功績表彰の学校表彰受賞へと導くとともに、市立札幌開成中等教育学校への継承に寄与している。
長年にわたって指導者として高校野球の発展に尽力し、野球の指導を通して生徒の健全な心身の育成と、文武両道の教育実践に取り組み、その功績は広く認められている。
二十八年度、札幌市立高校・特別支援学校長会会長を務め、札幌市立高校教育改革方針の立案にかかわり、今後の札幌市立高校の進むべき道を示すことに貢献している。
▼野寺克美(札幌市立円山小校長)
社会科教育研究において、専門性の高い指導助言を行い、道社会科教育連盟や札幌市教育研究推進事業でも、児童の学びを基軸にした授業実践や指導、助言などを行っている。二十五・二十六年度の二年間は道社会科教育連盟の委員長を務め、研究の深化および組織の充実に尽力している。歴任校では、常に児童や保護者を大切に、温かな心を育む学校づくりを具現化するなど、安定した学校経営に力を発揮するとともに、校内研究では本質的な授業の要を具体的な視点で指導助言し、教職員の指導力向上を図っている。
地域とのかかわりにおいては、学校近隣の連合町内会や諸団体などとの交流や連携を密に行い、学校と地域とのつながりを重視し、地域に開かれた学校経営を行っている。前任校ではサタデースクールの推進に積極的に取り組み、地域との連携にも大きく貢献している。
▼富川浩(札幌市立北都中校長)
二十五年度、道徳教育総合支援事業「豊かな心を育む道徳教育」の執筆者のまとめ役として、豊富な実践経験に基づき、全執筆内容の校正に尽力し、札幌市の道徳教育の充実・発展に大きく寄与している。
また、二十六年度には、研究開発事業「性に関する指導」の授業づくりなどに携わり、翌年度には「性に関する指導の充実」にある「情報モラルの観点等を含めた性教育の手引の改訂」にかかわり、中心的な役割を担っている。
二十八年度には、同校を札幌市研究開発事業「学ぶ力」育成プログラムの実践研究推進校とし、教職員の意欲向上を図り、「学習内容」と「学習環境」の改善に努めている。また、「学ぶ力」の育成推進協議会での報告や、ホームページで研究成果や課題の掲載を行うなど、よりよい学校づくりを目指すとともに、常に生徒の心情をくんだ指導を心がけるなど、生徒に寄り添った学校経営に取り組み、安定した学校経営を行っている。
▼西村里史(市立札幌開成中等教育教諭)
札幌清田高校において、十七年度に設立されたグローバルコースの立ち上げと、同年から文部科学省の指定を受けたスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)事業で中心的な役割を果たした。同コースでは、国際理解や国際協力を柱とした全人教育プログラムを通じて、英語による実践的なコミュニケーション能力、論文作成能力およびプレゼンテーション能力の向上に資する教授法とカリキュラム開発に尽力した。併せて、授業外における英語力育成の環境づくりに貢献した。
市立札幌開成中等教育学校では、日本初の公立の国際バカロレア(IB)ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)認定校となるに当たって、IBコーディネーターとして国際バカロレア機構や文科省と連携を図りながら、その実現に向けたシステムや具体的な手法を構築するなど中心的な役割を果たしている。
また、教育センターの初任研講師として、同校の課題探究的な学習の実践を広く本市若手教員に広めている。
▼千葉直美(札幌市立手稲東小栄養教諭)
歴任校において、担任と連携し子どもたちに「食」の大切さと健康な身体づくりについて、興味・関心を引くように発達段階に応じて内容を工夫した授業を展開している。また、保護者向けのたよりを工夫し、給食試食会などを通して食について、ともに考える機会を設けるなど、家庭と学校が連携して子どもの食生活を支えるとともに、学校教職員として子どもの健やかな成長のため、積極的に子どもに声掛けし、食を含めた身体面だけでなく心の成長につながる温かい指導を実践している。
札幌市学校給食栄養士会の副会長として、食育および学校給食にかかる当該団体の中心的な役割を果たし、学校給食展などの情報発信を行い、食生活の改善について貢献している。
また、教育委員会主催の新採用栄養士研修の講師を務め、若手職員の育成に貢献するなど、栄養教諭および栄養士の資質の向上にも尽力している。
【学校表彰】
▼札幌市立柏中学校(蛯名嘉津夫校長)
昭和四十二年、教育委員会から「純潔教育」に関する研究の委託を受けてから今日まで、人格の完成を目指した人間尊重の教育を基盤とした「性に関する指導」を教育課程に位置付け、全教職員の共通理解のもと、組織的かつ計画的に推進している。近年は、「男女を知り、生き方を考える」をテーマとし、生徒の発達段階に応じて教科横断的に学ぶ課題探究的な学習を推進し、性に関する指導の一層の充実に取り組んでいる。
四十六年に発足した道性教育研究会の事務局を長く担っており、四十七年に同校で開催された第一回研究大会を皮切りに、全国大会を含む延べ十五回の研究大会を開催し、全国、北海道における性に関する指導の研究推進に大きく寄与している。
また、地域の企業の協力を得て外部講師を招き、三年生を対象とした「総合的な学習の時間における職業講演会」の開催や、中央区内中学校の連携(チョボラ中学生の会)によるリングプル回収活動をはじめとする数々のボランティア活動にも積極的に取り組んでおり、学校と地域が強い信頼関係で結ばれている。
同校の学校教育目標に掲げる「気品」「強じん」「連帯」をキーワードとして、知・徳・体の調和と充実、信頼の醸成を基本方針として、長年にわたり小・中学校間、家庭、地域との連携を大切にした教育活動を推進している。
この記事の他の写真
石黒清裕氏
野寺克美氏
富川浩氏
西村里史氏
千葉直美氏
(市町村 2018-01-30付)
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