【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.43道徳科中学校編 北海道道徳教育研究会(松井毅会長)「道徳科の授業づくり 大切な2つのポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-20付)

◆多くの目で教材を読み取り、発問を磨く

◎道徳を目指した動機

 初めは、道徳の授業が苦手だった。用意された指導案をなぞるように、当たり前とも思えるようなことを発表させ、眠そうな生徒の顔を見て「これで良いのだろうか…」と自問自答する日々が続いていた。しかし、生徒の眼が輝き、生き生きと発言する道徳の授業を参観した時、このままではいけないと感じた。その後、諸先輩方から授業づくりの基礎・基本について、多くのことを学ぶことができたのが、今につながっている。

 そもそも、なぜ道徳が苦手だったのか。恐らく、その授業のねらいが明確ではなかったのである。目指すところが分からないまま授業を進め、その結果として授業が迷宮入りしていく。言うなれば『授業迷子』のような状態になってしまっていたのである。

 では、『授業迷子』にならないためには、どうすれば良いか。大きく分けて、二つある。それは、「ねらいを捉えること」と「多くの発問を準備すること」である。

ポイント1 ねらいのとらえ

 「主体的・対話的で深い学び」にするためには、まずねらいに迫る授業であることが絶対である。よく、道徳は答えがないと言われる。しかし、それでは教師が何をやっても、生徒が何を答えても正解というように勘違いしてしまわないだろうか。私は、道徳には「答えがたくさんある」のだと思う。つまり、教師の価値観を押し付ける、または一方的に価値を教えるのは正解とは言えない。教師は自分の価値観の押し付けにならないように、学習指導要領解説を熟読し、そこにある目標を基に授業のねらいをとらえることが大切である。もし、そのねらいに向かって、生徒から内面にある考えや意見を引き出すような授業になっていれば、その時は様々な答えがあって良いということになる。

 では、「深い学び」にするためには、ねらいをどうすれば良いのか。

 例えば、「遵法精神」で中学生を対象に授業したとき、「決まりは守らなければならない」がねらいになると、生徒は当たり前で終わってしまう。これは一見すると問題のないように見える。決まりを守らなければならないことは正しいことだからである。しかし、これでは浅い学びとなってしまうだろう。深い学びは、その先にある。生徒は、決まりは自分たちを縛る窮屈で、冷たいものと感じていることも多い。でも実際は、決まりは本来自分たちを守るために作られた、むしろあたたかいものである。そういった決まりの意義について考えること、「決まりって何だろう?」というところまでいけば、それが深い学びとなる。

 もちろんこれはあくまで一例で、どこにねらいを置くかは授業者が吟味する必要がある。その道標となるのが、学習指導要領解説なのである。

 次に、「主体的・対話的」というのはどういうことか。主体的とは、生徒が自分と向き合い、道徳が生き方を考える学習ということを意識し、自分の道徳性の成長を自ら実感する授業になっているかということ。対話的とは、自分の考えを発表するだけではなく、他者の意見を聞いて、自問と内省をして自分と対話することもそれに含まれる。このような場面が授業に設定されているかどうかである。では、その場面を授業に設定するには、どうすれば良いのか。それは、多くの発問を準備することである。

ポイント2 多くの発問を準備する

 授業づくりをするときに、どのような発問をすれば良いか悩むことが多い。様々な発問をしてみたいが、授業には限りがあるので、あまり多くの発問をすることは出来ない。しかし、多くの発問を準備しておく必要はある。すべてを問いかけなくとも、多くの発問を準備しておくことで、予期せぬ生徒の思いを受け止め、より考えを深めることにつながるのである。

 しかし、どのように発問を作ればよいのか。意識することは、2つある。1つは、「道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深める」ための発問であるかどうか。もう1つは、「多面的・多角的な考え方をする」ための発問であるかどうかである。

 平成31年度に教科化するにあたり、生徒をこの2つで評価することになる。つまり、この場面が授業の中になければ、評価することはできないのである。私はよく道徳推進教師の先生や、先輩の先生に発問を投げかけてみる。すると、予想通りの反応が返ってきたり、意外な反応が返ってきたりする。そのことを通して、自分の教材に対する理解が深まっていく。そして、その反応に対して追発問をしてみたりすることで、生徒との会話のキャッチボールをする練習にもなる。一問一答式の授業から脱却する練習である。やはり、一人で考え悩むよりも、より多くの人の目で教材を読み取ることで、発問は磨かれていくのだろう。教材の読み取りを深くすることは、深い授業をする上では、必要不可欠なのである。

〈深めるための代表的な発問〉

「〇〇は、何を考えているのか」「〇〇は今、どんな気持ちだろうか」

「〇〇はどんな思いで~しているのか」「〇〇の心の中はどうだろうか」

「本当の〇〇とは、何だろうか」「〇〇にはどんな意味があるのか」

「〇〇がそうしたのはなぜだろう」「なぜ、〇〇は~なのだろうか」

「自分が〇〇ならば、どう考えるか」「~のとき、自分だったらどうするか」

「〇〇がしたことをどう思うか」「〇〇は本当にそうしてよいのだろうか」

★生徒の発言を受けて…

⇒「それは、どういう意味?」「別な言葉で言うと?」

「〇〇くんは、どう思う?」「詳しく教えてくれるかな?」「でも、~ではないの?」 等

(札幌市道徳教育研究会 組織副部長 札幌市立北野中学校 教諭 須貝勇太)

※次回は、北海道社会科教育研究会「地理的分野編」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-02-20付)

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