青少年科学館を活用した理科プログラム―札幌市教委 展示物用い初のモデル授業 体験活動取り入れ、学び充実
(市町村 2018-08-29付)

 札幌市教委は二十四日、札幌市青少年科学館を活用した理科授業プログラムのモデル授業を同館で初めて行った。札幌市立平岸西小学校(山本秀夫校長)の四年生五十四人を対象に「ものの温度と体積」の授業を実施。同校二クラスの担任教諭が、同館の展示物などを用いて、児童の興味・関心を高めつつ、温度と体積の関係性を考えさせる授業を展開した。今後、成果や課題について検証し、本年度中にプログラムを策定する予定だ。

 市教委が策定した教育振興基本計画の教育アクションプラン(前期)では、施策に「科学的リテラシーを育む学びの充実」を位置付けている。青少年科学館の活用に向け、同館と学校教育の連携をさらに深め、子どもの発達段階に応じて体験的な学習などを充実させることとしている。

 市教委では、計画を受け同館の展示物と学習指導要領との関連性などについて調査・検討。二十九年十月には、理科を専攻する市内小・中学校の教職員などで構成する青少年科学館理科授業プログラム作成委員会を設置。小学校三年生から中学校三年生までを対象に、同館の展示物を活用し、観察など体験活動を取り入れた学習プログラムや授業展開例を作成した。

◆平岸西小4年「温度と体積」

 作成した授業展開例をもとに、この日、同館で初となる理科授業プログラムのモデル授業を実施。平岸西小の四年生五十四人を対象に、二クラスの担任教諭が「ものの温度と体積」の授業(八時間扱いの一時間目)を行った。本題材の目標は「常温と低温を行き来する活動を通して、ペットボトルの中の空気の体積が変化していることに気付き、温度変化と体積変化を関係付けた単元の課題をもつことができる」と設定した。

 実施した授業のうち、四年一組(川邊沙織教諭、児童数二八人)では、はじめに二階の雪・氷コーナーにある低温展示室を活用。川邊教諭は、展示室がマイナス十七度ほどになることを伝えた上で、班ごとに蓋が付いているペットボトルと、付いていないペットボトルを配布した。

 二本のペットボトルが「白くなる」「へこむ」などと児童に予想させたあと、ペットボトルの様子を観察。

 蓋が付いているペットボトルがへこんだことを確認させ、蓋がないペットボトルが変化しなかった理由を考えさせた。

 蓋のないペットボトルについて「空気が出入りするから(縮まない)」といった意見を取り上げることで、児童に「空気は温度が下がると縮む可能性がある」という考えをもたせた。

 続いて、三階の熱コーナーにある展示物「あなたの手形・昇る色水」を活用。「昇る色水」のコーナーで、色水が水とは違う特別な液体ということを説明。代表児童に、色水が入った展示物を握らせ、色水が上に上がっていく様子を観察させた。

 色水が上がっていった理由を考えさせ、児童の「温まった空気に押された」「温まった液体が増えた」などの意見を引き出した。

◆展示物と教科書結び付ける実験を

 このあと、実験室に移動。温度の高さによって空気や色水が変化したことを振り返ったあと、展示物を活用した実験と教科書の学びを結び付ける実験を行った。

 ゼリーの入ったチューブとフラスコをゴム栓でつなげ、フラスコを温めたらゼリーはどのように移動するか考えさせた。児童からは「フラスコの方にゼリーが移動する」といった意見が出た。

 実際にフラスコを手で温めさせ、ゼリーがフラスコから遠のいていく様子を観察させた。児童の予想とは異なった理由を問いかけると「(色水の実験と)同じ理由ではないか」「空気の体積が多くなったから」などの意見がでた。

 「移動したゼリーを戻すにはどうする?」と発問し「冷やす!」といった児童の意見を共有。フラスコを水に当て、温度を下げる実験も行い、ゼリーがフラスコの方向に移動したことを確認した。

 また、振り返りシートを配布。授業を通して分かったことを書かせた。

 シートに考えを記入させたあと、全体交流。児童の「フラスコを温めると、中の空気が多くなった」といった意見を取り上げるなど、空気の体積は温度によって変化することに気づかせた。

 授業を見学した教育課程担当課の鈴木圭一企画担当係長はプログラムの策定に向け「児童が着目する現象や実験方法の工夫について見えてきた。施設をより活用するための、教師の働きかけについても、実際に活動を行うことでより明確となった」と話していた。

 市教委では、今後、五回程度モデル授業を実施する。成果や課題を整理して、本年度中に理科授業プログラムの策定を目指す。

(市町村 2018-08-29付)

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