【解説】分離教育中止へ初の勧告 国連
(解説 2022-09-13付)

 国連の障害者権利委員会は9日、障害者権利条約を批准する日本に対して8月に行った審査を踏まえた勧告を発表した。うち特別支援教育に関する事項については「障がいのある児童生徒は分離され、通常の教育を受けにくくなっている」とし、現状の特別支援教育の在り方を改善するよう強く要請した。

 障害者権利条約は、障害者の人権確保などを目的に、2006年に国連総会で採択され、08年5月に発効した。締約国には「障がいのある人が一般的な教育制度から排除されないインクルーシブ教育システムの確立」が求められている。日本は、14年に批准・発効した。

 ことし8月、委員会は日本の取組に対する初の審査を実施。委員からの質問では、障がいのある児童生徒の意見表明を支える仕組みや、一般の児童生徒と分離されずに教育を受ける仕組みなどに関する内容が集中したという。

 今回、障がいのある児童生徒が特別支援学校や特別支援学級に「分離」されることで、通常の教育を受けにくくなっていると懸念。具体的には①小・中・高校に障がいのある児童生徒を受け入れる準備が整っておらず、事実上の入学拒否が続いている②文部科学省がことし4月、特別支援学級に在籍する児童生徒が、通常の学級で学ぶ時間を週の半分以内にとどめるよう通知した③通常の教育を担う教員のスキルが不足し、インクルーシブ教育に否定的―など3点を指摘した。

 その上で「分離」される特別支援教育をやめることを日本政府に要請。障がいのある児童生徒全てが小・中・高校に入学できる手段の確保や、入学拒否を許さない政策の導入、文科省通知の撤回、教員研修の実施などの対応を求めたという。

 勧告に法的拘束力はないが、国際基準に沿う対応が求められることになる。

(解説 2022-09-13付)

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