寄稿 今、職場で必要なメンタルヘルス ストレスに気付き対処 新型コロナ対応で道文教大 石垣教授
(コロナウイルス関連 2020-05-15付)

職場に必要なメンタルヘルスチェックシート
今、必要な教職員のメンタルヘルス・チェックシート(クリックすると拡大表示されます)

 道文教大学人間科学部子ども発達学科の石垣則昭教授は、「今、職場で必要なメンタルヘルス」と題し、本紙に寄稿した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、学校の臨時休業が続く中、教職員が自身の抱えるストレスの状況を自己点検できるチェックシートを考案。メンタルヘルスを安定させるため、自分のメンタルヘルスに気付くこと、人とつながること、1日のルーチンを決め仕事を進めることを呼びかけている。

 新型コロナウイルスの影響で学校閉鎖となるなど子どもたちの元気な声を聞くことができません。家庭訪問、電話やメールなどで子どもたちの感染予防を呼びかけ、ご自身や家族の安全を図りながらの毎日に、理由もなくイライラが募りモチベーションが低下しているとの相談があります。

 現状は、教職員にとっても大きなストレスとなっています。今感じているストレスの状況と、個人や職場での対処、対応の方法の説明、現状を客観的に理解するためのストレスチェックシートを作成しましたので、ご覧いただければ幸いです。

 併せて、このような状況の中、全国でもいち早く道内の各学校に送付されました道教委と道医療大学との事業連携による、臨時休業にかかる児童生徒の「心とからだのチェックリスト」(道教委令和2年3月12日付事務連絡「臨時休業にかかる児童生徒の“心とからだのチェックリスト”について」)を職員の皆さんが共に周知いただき、有効にご活用いただくようお願いいたします。

 ストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。ストレスの要因として外部からの刺激などの環境的要因、病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして、人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因があります。つまり、日常の中で起こる様々な変化に伴う刺激がストレスとなりますが、その変化が身体や精神に思わぬ影響を与えてしまうことがあります。

 学校は言うまでなく社会的活動の場です。社会的活動とは、人との関係で成り立ち相互に影響を受けながら活動することであり、子どもたちや教師にとって、様々な意味で相互依存(互いに、支え合い、助け合う関係)の関係にあるといえます。

 また、その活動によって社会的促進(他者の存在によって、行動が促進される現象)がなされ、メンタルヘルスを安定させ高めることができます。さらに、自分と年齢が違う子どもたちと接することは、教師にとって心が活性する源であり、自身を高めてくれる存在といえます。

 しかし、子どもたちとの直接的な関係づくりができない状況に、次第に不安やストレスを感じてしまいます。また、子どもたちと活動(授業、会話を含める)ができないと、思考が多面的(様々な視点で考えること)になる機会が減少するため、思考が硬直化し意欲そのものが低下することもあります。さらに、運動不足は自律神経系の働きを抑えてしまい、体のホルモンバランスを大きく乱し、気持ちが不安定になると言われています。

 子どもたちが登校しないこの期間、仕事を進めようと思っても効率よく進まず、意味なくイライラするのは、こうした理由によります。

 それでは、自身のメンタルヘルスを安定させるために、どうしたらよいのでしょうか。

 まず必要なのは、自分自身をメタ認知(自分自身を客観的に認知すること)し、自分のメンタルヘルスの変化に気づくことです。そういえば最近、「ちょっとしたことで、イライラする」「気分が落ち込む」「やる気が起きない」「疲れやすい」「熟睡できない」「興味や集中力が続かない」「ぼうっとしてしまう」など、自分の変化をとらえることです。

 つぎに、人とつながることです。イライラするなど気持ちがふさぎこむと、下を向きがちになり、人との接触が少なくなります。人の感情は人との接触が少なくなるとネガティブな感情に陥りやすくなり、閉塞感を感じがちです。当然、マスクを着用し2㍍くらいの間隔を空け、それも正面に正対することなく人と接することが感染予防のために必要であると言われていますが、少人数でルールを守り短時間で、「今、思うこと」「今、自分が進めていること」などを交流する場を意図的に設けてはどうでしょうか。また、オンラインで交流することでも疲労感が軽減できると言われています。

 さらに、子どもたちが登校しないため、就眠時間が遅くなりがちで、生活のリズムが崩れてしまっている可能性があります。あらためて1日のルーチンをつくり、それによって仕事を進めるようにしてはどうでしょうか。

 ただし、ストレスを強く感じている場合は、どこまでやるのかを決めると、できない自分を責めメンタルを損なう可能性がありますので、職場で何をするのかくらいに止めるがよいと思いますので、自分の状況を客観的にみつめ判断してください。北海道の教職員の皆さんがメンタルヘルスを維持され、教育活動を進められるよう心より願っています。

(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)

※「今、必要な教職員のメンタルヘルス・チェックシート」(ワード形式)は、道通ネットの情報BOXからダウンロードできます。

(コロナウイルス関連 2020-05-15付)

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