Pick Up2023 第12回 十勝( 2023-12-25付)
◆足寄町 人材育成スキルMEMO
自己理解に焦点化 研修との相乗効果
足寄町は4年度、町民全体の人材育成に向けて「“人づくりの町”構想」を打ち出した。町教委は教育関係者に対し「足寄町版スキルMEMO」を作成。半期ごとに自身の現状や課題、仕事と私生活の目標等を記入するもので、本年度から町内全教職員が活用を始めた。
人事評価シートでは学校職員としての職務能力に焦点が当たる一方、スキルMEMOは“自分を知る”ことに重点を置いている。提出義務は設けず、自己理解の糧として活用を推奨。自身の強みや弱みに気付き、必要な研修を受けることで、研修履歴との相乗効果をねらう。
採用6年目の教員は「理想の教員像を文字化することで考えを整理でき、目標が明確になった」と話す。様式裏面には、理想の実現に向けて現在の自分に必要な資質・能力を連想したマインドマップが広がる。「仕事に向き合う中で、私生活の重要性にも気が付いた」と、ワーク・ライフ・バランスの在り方も考えるきっかけになったという。
教員理解に手応え
ある校長は「教員一人ひとりを理解し、目標に寄り添う関わり方ができる」「自他の認識のずれを解消する手だてにもつながる」と手応えを口にする。年3回の面談に加えて、教職員への日常的な声かけによる意識付けにも役立っている。
管理職も同様にスキルMEMOを記入。校長会・教頭会で共有し「横のつながりの中で改善のヒントを得たい」と向上心を持ち続ける。「町の構想が一つの柱となり、町教委に相談しやすい環境」と、学校と行政の連携深化の一助にもなっている。
自己理解を深め研修に向かう教職員の姿勢は、国が求める「新たな教師の学びの姿」に重なる。
東海林弘哉教育長は「教職員個々が存在意義を実感し、心理的安全性が確保された環境で挑戦してほしい」と語る。
「足寄で成長し、十勝で活躍」と掲げる人材育成の取組は、町で努力を重ねる教職員への応援にほかならない。
◆帯広市 生成AI活用模索
教員用指示事例 批判的思考育成へ
生成AIの発達に伴い教育現場での活用が広がりを見せる中、帯広市の教員は生成AIの効果的な授業活用を模索する。7月に国が発出したガイドラインに基づき「新たなアイデアの創出」「批判的に捉える力の育成」に焦点を当てた研究を進めている。
中でも、指示に従ってインターネット上の情報を集約するチャットGPTに関しては、教科・領域とAIの活用目的を関連付けた教員用の指示(プロンプト)事例をまとめた。
プロンプト作成のポイントは①役割設定②条件③出力形式④指示―の4点。国語や社会などの授業活用に加え、校務における文書作成への活用など、全国の先進事例を参考に試行した内容を含んでいる。
実際の授業では、事前にチャットGPTの仕組みや情報の整合性を説くことで、児童に情報モラルを醸成。AIが導き出した新たなアイデアをもとに交流し、批判的思考の育成を図っている。
( 2023-12-25付)